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3. 機関計画保全検査のための措置
(2)点検・整備による保守管理
(5)記録の管理(機関計画保全検査に関する保守の記録)
 
 機関保全計画書に基づき管理される記録を明確にするため、管理記録名を列記し、その様式を添付する。
 
(4)機関保全計画の技術的妥当性を説明する書類
 本書類は、上記保全計画の技術的妥当性を説明する内容として、船舶安全管理規程の一部となる保全計画自体に盛り込む必要のない補足的資料を指します。内容として想定されるのは、例えば、次のようなものです。
 
 過去の解放時における主機、プロペラ、プロペラ軸、中間軸、発電機原動機、機関室内補機、熱交換器及び甲板機械等の各計測記録データを時系列的にグラフ化して衰耗推移曲線を作成するとともに、今後の衰耗状態を予測し、機関保全計画書に従って機器の解放の省略を行った場合でも健全性が維持できることを技術的に説明する。
 また、必要に応じメーカーの技術資料や確認文書を添付するとともに、保全計画に従って解放の省略を行った場合でも健全性が維持できることを技術的に説明する。
 なお、過去に継続的な計測記録がされていない一部の保全計画対象機器(例:ボイラー・排ガスエコノマイザー等)については、保全計画開始後から新たに計測記録等を開始し、以後継続的に衰耗状態等を管理することを前提条件に、過去の検査・整備実績等に基づいて技術的な妥当性を説明することができる。
 
(5)機関の保守管理等の記録
 船舶安全管理規程及び機関保全計画書に従い、適切に保守管理が行われていることを示す客観的な証拠として有効であり、保全計画の妥当性の確認、保全計画の見直しのためにも記録は必要です。使用目的を考慮し、適切なフォームで年月日、整備点検の実施者、記録者、整備点検責任者の確認の有無、不具合があった場合は、その内容が後日、確認できるようにしておくことも重要です。また、必要に応じて写真、図なども有効です。また、機器の解放の記録は主として造船所又はメーカーが作成する記録をベースに作成することになりますが、乗組員の負担を軽減するために運航中の点検については、記述方式は最低限とし、できるだけマークシート方式とすることが適切です。
 この記録は、機関計画保全検査の申請書類として提出することとされていますが、ISMの初期審査時と異なり必ずしも3ヶ月以上のシステムの運用実績は要求されていませんので、運用実績がない場合は、船舶安全管理規程及び機関保全計画書に含まれる様式のみを提出することとなります。
 
5. 承認手続き
 
(1)申請を受理した場合、関係者のヒアリング、機関の状態確認、船舶安全管理規程及び機関保全計画書の妥当性の検討等により、上記基準への適合性を評価のうえ、意見を添えて検査測度課長に伺い出ること。この場合の添付書類は、3.申請書類のうち、(3)、(4)及び(6)として差し支えない。
 なお、優良・適切な保守管理の実施に関する確認については、ISM証書又は任意ISM証書を受有していることを前提に、当該船舶安全管理システムの下で、計画保全検査が実施されることを確認することを標準とする。ただし、ISM証書又は任意ISM証書を受有していない場合にあっては、次項(2)のとおりとする。
(2)任意ISM証書を受有していない場合にあっては、船舶安全管理規程及び機関保全計画書に基づき機関の保守管理等を行うことが船舶安全管理規程に準じた社内規則に規定され、かつ、実施されている等、機関計画保全検査の対象となる機関の保守管理等が国際安全管理規則に適合する安全管理システムにより実施されていることを確認する(陸上の船舶管理部門の確認を含む。)。また、国際安全管理規則に定められた定期検査、中間検査、年次検査及び臨時検査に相当する時期に相当する内容の検査を実施し、国際安全管理規則への適合性の確認を行うこと。なお、この場合の検査の記録は、任意ISMコードの審査記録簿と同様の書類に記録して管理すること。
(3)承認して差し支えないと認められた場合には、機関保全計画書に先任船舶検査官又は船舶検査長名にて承認する旨を記載のうえ、船舶所有者に返却し、船舶検査手帳と共に保管させること。
(4)機関保全計画書を変更しようとするときは、機関保全計画書及びその技術的妥当性を説明する書類並びに必要に応じて3. に掲げるその他の書類を提出させ、改めて伺い出のうえ承認すること。ただし、点検等の時期の繰り上げ等の軽微な変更については、管海官庁限りで処理して差し支えない。なお、この場合にあっても検査測度課長に報告を行うこと。
 
(解説)
 
 本項目では、「3. 申請書類」と「4. 承認基準」に基づきながら、具体的にどのような手続きで承認が行われるかを示しています。上記の趣旨を補足説明すると、次のとおりです。
 
(1)機関計画保全検査については、まず申請先の管海官庁(地方運輸局の本・支局等)で審査が行われますが、新しい制度であるため、地域間で運用上の差異が生じないよう、当分の間は、管海官庁から国土交通省本省宛に伺い出がされ、全国統一的な運用が図られます。このため、本制度の申請に当たっては、十分な時間的余裕を持って臨むようお願いします。
 
(2)ISM証書又は任意ISM証書を受有している場合は、関係者のヒアリングや機関の状態確認も実施されますが、主に機関保全計画の技術的な妥当性を確認するための書類審査が中心となります。
 他方、同証書を受有していない場合は、まず、機関の保守管理等に関する社内の安全管理システムについて、ISM審査と同等の審査(書類審査、陸上の船舶管理部門と船舶での現場インタビュー等を含む。)を行うことから始まり、ISMコードに適合するシステムが維持されていることが確認された上で、機関保全計画に関する審査が行われることになります。また、このシステムの維持の確認についても、ISM証書又は任意ISM証書を受有している場合と同様に、定期的に審査されることになります。
 
(3)審査の結果、承認される場合は、機関保全計画書に承認の旨が記載され、申請者に返却されます。なお、船舶安全管理規程は、ISMコード上、会社が随時見直しをすることになっているため、承認の旨の記載・返却は行われません。
 
(4)機関保全計画書を変更しようとするときは、変更の内容にもよりますが、基本的には承認時と同様の手続きが必要となります。ただし、点検時期の繰り上げ等の軽微な変更については、本省伺いの必要はなく管海官庁限りで処理できるため、短期間での承認が可能です。
 
6. 計画保全検査の実施方法
 
(1)定期的検査時、本船において機関の保守管理等が船舶安全管理規程及び機関保全計画書に基づき行われ、かつ、記録が正しく記載・保存され、機関の現状が良好であることを記録の確認、整備点検現場の確認、船長、保守管理責任者及び実施者に対するインタビュー等により確認する。なお、当該確認を国際安全管理規則に定められた定期検査、中間検査及び臨時検査に相当する時期又はISM証書若しくは任意ISM証書の更新審査(初期審査を含む。)又は中間審査の時期に行った場合は、その旨を「ISM船内審査記録簿」又は「審査記録簿(船舶安全管理認定書)」に記載し、その直後の定期的検査における当該確認は省略して差し支えない。
 また、上記の整備点検現場の確認については、定期的検査時において計画保全対象でない設備に関する臨検を行う際などに、計画保全対象機器の整備点検の工程に支障を与えない範囲で実施する。
 上記の各種確認の結果、機関の保守管理等又は機関の現状に問題があると判断した場合は、必要に応じ機関の解放検査を実施すること。
 
(2)計画保全検査対象機器であっても、臨時検査事由に該当する主要部品の交換等が行われる場合は、臨時検査として取り扱うこと。
 
(解説)
 
 本項では、機関計画保全検査制度の承認取得後に、具体的にどのように検査が行われるかを示しています。上記の趣旨を補足説明すると、次のとおりです。
 
(1)「1. 制度の概念」の項にもあったように、計画保全検査を実施中の船舶であっても、定期的検査時には機関に関し、解放検査以外、つまり、効力試験及び海上運転等は通常の船舶と同様に船舶検査官が立ち会い、従来どおりの機関の検査が実施されます。
 
(2)定期的検査の時期には、記録の確認、整備点検現場の確認、船長、船内における保守管理の責任者及び実施者に対するインタビュー等により、機関が適切に保守管理されていることが確認されます。機関の解放が行われず効力試験等の検査のみが実施される場合は、この確認が機関の検査として執行されることとなります。
 定期的検査時における具体的な確認の方法や範囲については、受検予定地の管海官庁と事前に打ち合わせを行って下さい。特に、整備点検現場の確認は、当該検査時に保全計画に基づき点検整備が行われている場合に、その工程に支障が生じない範囲で実施することになっています。
 なお、これらの確認は、ISM又は任意ISMの船舶安全管理認定書にかかる定期的な審査時に行うことも可能であり、この場合は、直後の安全法上の定期的検査での確認は省略されます。
 
(3)機関のうち、解放を省略している機器であっても、上記の各種確認の結果、機関の保守管理等や機関の現状に大きな問題があると判断されたときは、当該機器について解放検査を指示される場合や、次項7. に基づき計画保全検査の承認が取り消されることもあるため、十分な注意が必要です。
 
(4)解放検査が省略できる計画保全検査対象機器であっても、定期的検査以外の時期に臨時検査事由に該当する主要部品の交換等(例:プロペラ軸)が行われる場合は、従来どおり、臨時検査を申請し、受検する必要があります。
 なお、定期的検査受検中に当該交換等が行われる場合には、船舶検査による臨検(立会)があります。
 
7. 承認の取り消し
 
 次に掲げる場合は、計画保全検査を中止し、検査測度課長に報告すること。
(1)承認した機関保全計画書に従わなかった場合、その他優良・適切な機関の保守管理等体制が維持されていない場合
(2)保全計画対象機器の衰耗状態等が予測と大きく異なった場合等、保全計画の策定時における基準適合性の推定根拠を見直す必要が生じた場合
(3)機関に重大な損傷が発生した場合(不可抗力による場合を除く。)
(4)船舶所有者又は船舶管理会社が変更になった場合
 
(解説)
 
 本項では、機関計画保全検査の承認が取り消される場合の条件を示しています。
 特に、保全計画対象機器の衰耗状態を計測・記録する過程で、当初の予測と大きく異なることが発見された場合などは、承認取り消しに至らないよう早めに管海官庁と相談して下さい。
 
8. その他の保全方法
 
 機関計画保全検査とは異なる保全・保守管理方法を行う機関について、機関計画保全検査に準じた検査を受けることについて希望のある場合は、必要な資料の提出を求め、内容を検討し、意見を添えて、検査測度課長に伺い出ること。
 
(解説)
 
 上述の機関計画保全検査の各種条件には合致しないものの、別途の代替措置等を講じることにより機関の解放を一部省略しても適切な保守管理等が維持できると認められる場合には、本項に基づく承認を受けることが可能です。
 申請に当たっては、十分な技術的根拠が必要となるので、時間的余裕を持って管海官庁にご相談下さい。







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