6.3 プロペラ軸の保守整備の現状
プロペラ軸は、材料及び防食措置に応じて抜き出し時期が定められているが、船の種類による整備の現状は次の表のとおり。
船の種類 |
整備内容 |
整備工事の内容 |
旅客船(2軸の場合) (船尾管:海水潤滑) |
軸受け間隙計測(毎年) ・船尾管軸受、張出軸受の間隙を計測
スリーブ間がFRP巻きの場合
・毎年、剥離、浮きについて目視にて点検。剥離等あれば修理。
プロペラ軸抜出し
・5年間隔で抜出し精密検査実施。 ・間隙が5mm〜6mmになった時点で間隙調整のための整備 ・船尾管軸封装置の点検、整備 |
<間隙調整のための整備> ・スリーブの削正と軸受ゴム張り替え又は新替え(ゴム張り替えの場合は、工期が掛かるため、ケースとしては少ない)。
<工事の詳細(例)>
・プロペラ軸スリーブ部3箇所を最小限に削正。 ・軸受4箇所共新替(内径アンダーサイズ)。
※間隙の調整は竣工後10年前後が多い。
※プロペラ軸の抜出しは、年をずらし片舷ずつ実施。 |
旅客船以外(NK船級:一般商船) (船尾管;オイルバス式) |
軸受け間隙計測(入渠時) ・潤滑油の警報装置の点検 ・軸降下量の計測
プロペラ軸抜出し
・5年間隔で抜出し精密検査実施。 船尾管軸封装置の点検、整備
※10年軸あり。(ただし、船級協会による承認が必要。) |
<工事の詳細(例)> ・プロペラ軸抜出し時には、重要部分の磁気探傷検査、オイルシールの交換、クロムライナーは、傷、ピッチング等の不具合が有る場合は新替。不具合がなければクロムライナーを研磨。 |
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1998年4月〜2004年12月までの約6年8ヶ月の間に不具合データベースに収録された不具合の内、プロペラ軸の不具合状況を調査した。なお、ここでは、定期的に実施される第2回以降定期検査と第1種中間検査で発見された不具合データ(参考資料6.4.1に示す不具合データで、総数241件、その内、軸の種類別では、第1種軸179件、第2種軸17件、不明45件)を分析対象とした。また、ここでは、旅客船関係、非旅客船(漁船を除く)および漁船関係に区分して比較検討し、プロペラ軸の全不具合データによる分析と第1種軸・第2種軸別(不明な45件のデータについては対象外)による分析をそれぞれ実施した。
6.4.1 不具合種類について
各検査において、プロペラ軸の不具合種類について、その不具合頻度分布を調査した。全不具合データによる分析結果を図6.4.1に示す。図より明らかなように、『その他』を不具合種類とするデータが多く、データの信頼性に多少欠けるものの、船種ならびに検査別による不具合種類におよぼす影響はほとんど認められず、プロペラ軸の不具合種類は、『衰耗、劣化』が最も多く、次いで『クラック』の順であった。
図6.4.1 プロペラ軸の不具合種類別頻度分布
(a)第2回以降定期検査
(b)第1種中間検査
次に、第1種軸・第2種軸別による分析結果を図6.4.2および図6.4.3にそれぞれ示す。プロペラ軸の不具合データの大半が第1種軸のデータであり、図6.4.1と図6.4.2は同様の結果を示していた。また、第2種軸については、データ数が少なく明言することはできないが、防食が施されていない軸であるため、不具合種類は『衰耗、劣化』が多い結果となった。
図6.4.2 第1種プロペラ軸の不具合種類別頻度分布
(a)第2回以降定期検査
(b)第1種中間検査
図6.4.3 第2種プロペラ軸の不具合種類別頻度分布
(a)第2回以降定期検査
(b)第1種中間検査
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