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6. 関連機器の保守整備の現状と不具合情報分析
 本章では、船体計画保全検査を実施するに当たり、入渠/上架時の点検項目のうち長期保全の際の重要事項となる船底弁等及びプロペラ軸を取り上げ、保守整備の現状を整理するとともに船舶検査データベースにおける不具合情報の分析を実施した。
 
 喫水線下に位置する船底弁、船外弁及びストーム弁(排水管に設けられている自動不還弁)等は入渠時に開放し内部清掃の上、腐食又は損傷の有無、弁とシートのあたり等を確認後、防錆塗料の塗布、弁とシートの刷り合せ等の整備を実施している。また、必要に応じて肉厚計測を実施している。
 
 弁の種類及びその用途を考慮して点検整備は行われるが、多く見られる不具合の傾向及び想定されるその原因、整備方法は次の表のとおり。
 
弁の用途又は種類 多く見られる不具合の傾向 想定される不具合の原因、整備内容
○海洋生物付着防止装置(MGPS)噴出用船底弁 ・弁、シート共に腐食が激しい。 不具合の原因
・塩素イオン調整不良による酸腐食(化学的要因)
整備内容
・修理及び整備不能の状態のものが多く、新替え。
・腐食に強いバタフライ弁に交換する場合もある。
○ボイラブロー弁 ・弁及び付属のディスタンスピース(特にフランジ溶接部)の腐食、侵食が激しい。 不具合の原因(ディスタンスピースのフランジ部溶接箇所)
・配管内のスケール、スラッジ形成に因る電池作用腐食
・管内の過大流速と熱応力に因る侵食
整備内容
・弁本体を取外し、弁とディスタンスピース両方を整備する事が多い。
○弁内部をラバーコーティングしている場合
○弁内部及び関連配管をラバーコーティングしている場合
・弁座が腐食している事が多い。 不具合の原因
・配管と弁との異種金属に因る電池作用腐食(化学的要因)
・弁の材料自体の欠陥(機械的要因)
○バタフライ弁 ・ゴムシート面の剥離亀裂を生じることがある
・操作ハンドルが堅く駆動ギヤーが損傷している場合がある。
整備内容
・弁本体は取外さず、弁付近の短管を取り外し、弁、シートの状態を確認。
・シートのみ不良の場合はシートのみ取替、弁が腐食している場合は完備にて取り替え。
○玉型弁、アングル弁(船底弁) ・カバーパッキンケース部が腐食している場合がある。
・スタッド取付けボルトが腐食している場合が多い。
不具合の原因(左記損傷)
・異種金属に因る電池作用腐食
・弁の鋳造、鍛造時の製作の欠陥
整備内容
・左記損傷の場合は、バルブ完備にて取替るか、パッキンケース部を真鍮にて製作し取付補修する場合がある。
BC弁 ・弁体にクラックが発生している場合あり。 不具合の原因
・締め過ぎによるクラック
○上記の他、船底、船外弁の損傷の原因として下記の事が考えられる。
<機械的要因>
・材料欠陥
・鋳造鍛造時の製作欠陥
・弁取付け不良による残留応力
・海水ポンプ運転の同時性などの見落としに因る過大電流の潰食(インレットアタック、キャビテーションエロージョン)
・配管設計ミスによる配管、弁口径の誤り
<化学的要因>
・配管と弁との異種金属に因る電池作用腐食(とくにライング管には注意を要す)
・外部からの迷走電流に因る電食
・海水流体の化学的性質が特異な(ビルジ、イナートガス冷却水、生活排水)ものを共通の船外弁で排水。
・管内のスケール、スラッジ形成に因る電池作用腐食
○その他
・船外弁の取付けの正逆の向きに注意が必要。
 
 1998年4月〜2003年3月までの5年間に船体設備データベースと機関不具合データベースに収録された不具合の内、船底弁ならびに船底弁以外の喫水線下の弁の不具合状況を調査した。なお、ここでは、定期的に実施される第2回以降定期検査と第1種中間検査で発見された不具合データ(参考資料6.2.1に示す不具合データで、総数118件、その内、船底弁112件、船底弁以外の喫水線下の弁6件)を分析対象とした。また、旅客船関係、非旅客船(漁船を除く)および漁船関係に区分して比較検討した。
 
6.2.1 不具合種類について
 各検査において、船底弁等の不具合種類についてその不具合頻度分布を調査した結果を図6.2.1に示す。図より明らかなように、船種ならびに検査別による不具合種類におよぼす影響はほとんど認められず、船底弁等の不具合種類の大半は、『衰耗、劣化』による不具合であり、その他に、『クラック』、『凹損、曲損』ならびに『構造不良』による不具合も若干含まれていた。
 
図6.2.1 船底弁等の不具合種類別頻度分布
 
(a)第2回以降定期検査
 
(b)第1種中間検査
 
6.2.2 不具合原因について
 各検査において、船底弁等の不具合原因についてその不具合頻度分布を調査した結果を図6.2.2に示す。図より明らかなように、船種ならびに検査別による不具合原因におよぼす影響は認められず、船底弁等の不具合原因の大半は、弁本体の腐食ならびに弁取り付けボルトおよびナットの腐食を原因とする『腐食衰耗』による不具合であった。
 
図6.2.2 船底弁等の不具合原因別頻度分布
 
(a)第2回以降定期検査
 
(b)第1種中間検査







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