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 「Acceptance Criteria」に関する各造船所の意見は、次表のとおりとなった。
 
Acceptance Criteria(合否基準)←( )内は仮訳
 Following condition shall cause rejection(次の条件は不合格である)
1. Excessive sags and runs: lsolated and runs defined as 1 per each 10m maximum are permissible
(過度のsags及びruns: 最大10m毎に定義されるsags及びrunsの残量)
船社意向に合わせるべき。

NOT EXCESSIVEとあり。

Excessiveとはどの程度を言うのか?
100mの意味は?
100m毎などの定義はないに等しい。
2. Pin-holes: none allowes
(ピンホール:不許可)
実施不可能(試験場での塗装でも不可能)

規定なし、通常は計測しない。

Pin-holeの定義?目視?拡大鏡?ピンホールテスター?
High build paintはPin nole発生しやすく、又検査は熟練が必要。
3. Air bubbles or air bubble craters: none permissible
(気泡及び気泡口:不許可)
実施不可能(試験場での塗装でも不可能)

規定なし、一般的にあってはならない。

Air bubbles & air bubble cratersは、ストライプコート時、刷毛・ローラー塗装時発生しやすい。許容値はないのか?
4. Low DFT (dry film thickness) : none permissible
(乾燥塗装厚不足:不許可)

船社意向に合わせるべき(「一般に膜厚をxx%以上の個所で」と規定)

AVERAGE管理(故LOW DFTはある)

Low DFTは許容できないのは理解できる。判定する膜厚=最低膜厚か基準膜厚の90%か明記する必要あり。

5. Too high DFT: none permissible (see sags and runs for only exception)
(過乾燥塗装厚:不許可(例外的にsags及び runs参照))
船社意向に合わせるべき(厚膜の規定はCorner部等部位でどうしても厚くなる。部位での規定が必要。

規定なし、メーカ推奨による。

現場は過膜厚を規定されるのは非常に厳しい。一般に塗料メーカは1回塗りの規定膜厚の3倍前後を上限としているが、これを満足する技能を持つスプレーマンは希少であるのが現実。
6. Blistering: none acceptable(水疱形成:不許可) 規定なし、一般的にあってはならない。

塗装として常識範囲。
7. Lifting or peeling: none permissible
(Liftingもしくは剥離:不許可)
規定なし、一般的にあってはならない。

塗装として常識範囲。
8. Insufficient dehumidification, heating and/or ventilation: none permissible
(不十分な除湿、加熱及び(もしくは)換気:不許可)
規定なし、メーカ推奨による。
環境条件(湿度・温度・露点と鋼板温度、換気量)が明記されていない。規準を決めないと判断できない。
9. Unsafe or poorly erected staging: not acceptable
(安全でない、もしくは不完全に組み立てられた足場:不許可)
社内安全基準あり。

基準が明確でない。我々の経験では足場板を番線で固縛しているが、番船端部が目は勿論足に刺さるかもしれないとの理由で検査中クレームを受けたことがある。
10. Poor cleaning, presence of inclusions or invisible contamination in excess of the specification: none permissible
(仕様書を上回る粗末な掃除、介在物の存在、もしくは不可視の汚染)
CLEANINGは写真で基準あり、CONTAMI. は除去とあり。

一番判断が難しい。造船所をいじめるなら、白い手袋で拭いて「黒くなりましたネ!」で不合格にすることができる。検査基準をどう定めるかが難しい。
 
参考資料4
 
国内主要造船所のTSCF15年に対する全体的な意見
(A社)
1. 日本からMSC78の課題の提案をDE48に提出すべきである。Paint Specificationでなく、Performance Standardとして提出する。これは、MSC78の結論に基づくものであり、正論である。Plenaryで議論し、MSC78に従った方向で進めるべきである。
2. しかしながら、PlenaryでOCIMFのようなPaint Specificationの審議に入る場合、IMO ResolutionA. 798(19)のガイダンスを規則化するのが筋である。
3. どうしてもOCIMFから提出されるTSCF15を審議する場合:
 このTSCF15の規定通りに塗装することは不可能である。(このような安全、運航等に直接関係しない、かつ非常に専門的なことをIMOの場で審議するのは反対であるが、上記Stepを踏んでも土俵に上がれば、止む得ない対応として回答する。)
 実施不可能なもの、船社意向に合わせるべきもの、規定する必要のないものを明確に区別し、審議すべきである。このため、塗料メーカを含め、充分な準備が必要と思われる。
 
(B社)
 TSCF15を強制化すると、ベターになるだろうが、技術的には必要性がない要求である。
 そもそもDSS部の塗装性能基準がMSC76で取り上げられた時は、「DSSはメンテナンスしにくい。よって、特別の対策が必要」との話ではなかったのか?
1)それならば、DSSの幅の規定も“メンテナンス性”を判断基準として制定されたので、“メンテナンスはしにくくない”。
 よって、前提を失っており議論の対象ではない。
2)よしんば、制定するとしても、当初の想定は、DSS部とは、TSTとHPTに上下挟まれシングルがダブルになった部分の区画であったので、そこに限定する。
 例えば幅1.1m以下に限定する。<現時点の拡大したDSSの定義ではTSTもHPTもDSS部に含まれて閉鎖されているので>
 相手の土俵に乗らずに、別の土俵を作って戦うべき。
 また、次のような考えと疑問点がある。
a. 二次下地処理での全面ブラスト施工
・ヨーロッパ、中国&韓国は対応可能(実施中)、日本のヤードは建造隻数を大幅に減じ尚且つ設備増強すれば対応は可能。
・健全部のプライマー(アノード効果)をわざわざ除去する意味が理解できないし、それにより塗装寿命が延びるという根拠がない。
b. 塩分濃度
・30mg/m2の基準は平たく言えば「塗装前には水洗」しなさいという基準である。この数字の「背景」をしっかりと調査しハッキリとする必要がある。
c. 「必要な事」は、やるべきであるが、今回の提案は・・・これまでの塗装技術や塗料等の進歩、改良を全面的に否定するものである。
d. 「TSCF-15」適用で15年間の塗装保証をどのように証明するのか・・・不可能であると考える。
e. 「総括」すると、例えば「ピンホール0」とか「全ての部位の塗膜厚」のmin. 規定であるとか・・・それを「どうやって、誰が確認」するのか等どう考えても、研究室で物を作ると言う発想で・・・では、最後の姿がどのようであれば「合格」なのかの姿が見えない。
* 科学的根拠に全てが欠ける。
 
(C社)
 本基準は施工時の基準であり、10年後・15年後の状態を決定付けるものでなく、就航後の塗装状態を評価できる基準なくして、施工基準を論議するのはいかがなものか?
 誰が基準を満足しているかどうか検査をし判断を下すのか不明だが、船主監督と造船所のみのやり取りでは水掛け論になりかねない。船級協会検査員が対応できるのか?
 
(D社)
・塗装仕様は船主ニーズに合わせ個々に造船所との間で決定されるべきものと考える。いたずらに高品質(船主ニーズもその傾向に向うのは理解するが)をルール化するのが船主ニーズとは思えない。高品質=高船価を船主が望むか?
・造船所によっては相当な設備投資が必要となる。本件を満足するには、(1)建屋、(2)機器(ブラスト機、砂回収装置、換気装置、除湿装置、加温装置、照明装置)、(3)搬送手段(移動台車またはクレーン)が最低必要。更に、敷地の制約がある当社はブラスト工場の増設は困難であり、組立工場をそれに変える等の処置で対応は可能だが、莫大な費用と生産量の低下の結果は企業の存続にも関わる問題になる。
 
(E社)
 TSCF15が強制化された場合、現場でのトラブルが多発すると思われる。
 現在も塗装については、見た状態での造船所と監督との見解の相違で、いろいろトラブルが生じており、さらにグレードアップの状態となると、クラスがはっきりとした行司役でも務めてもらわない限り、引渡し拒否にもつながり兼ねない状況が予想される。
 個々の施工の話よりも、TSCF15がどういうグレードか下地処理やエッジ処理など目で理解する(造船所も監督も)環境を整えることの方がもっと大変かと思われる。
 
(F社)
1. 基本的に本件は個船対応事項とすべきで、全船適用ルールとすべきでは無いと考える。SOLAS II-1 Part A-1 Regulation 3-2 の記述と同様に、IMO Resolution798(19)を参照するに留めることが最も現実的ではないかと思われる。
2. 日本の各造船所ではいろいろな工夫の末、海外も含めた船主や塗装メーカーも認める塗装プラクティスとしてきた。それを阻害するような過度な規定を一律に課するのは適当ではない。また、どうしてもガイドラインが必要と云う事であれば、大手塗料メーカの見解も聴取し、造船所が対応可能な内容(MIN. ガイドライン)にすべきである。このガイドライン以上の仕様については個船毎(船主/造船所)に対応とするのが適切ではないかと考える。
3. なお、1993年に造工(大手7社)で作成した塗装のガイドラインも一つの目安になるのではないかと考える。
 
(G社)
 下地処理、エッジ処理のグレードと、それをくまなく満たす事は困難である。
 また、「何らかの確率的な考えでも導入しなければ、監督と口論になって工程遅延が生じるかもしれない。」







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