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 Ships shall be designed and constructed for a specified design life to be safe and environmentally friendly, when properly operated and maintained under the envisaged operating and environmental conditions, intact and foreseeable damage conditions throughout their life.
 
 また、この内容を補足するために、以下に定義を用意した。
.1 Safe and environmentally friendly means the ship will have adequate strength, integrity and stability to minimize the risk of loss of the ship or pollution to the marine environment due to structural failure, including collapse, flooding or loss of watertight integrity.
.2 Environmentally friendly also includes the ship being constructed of materials fore environmentally acceptable dismantling and recycling.
.3 Safety also includes the ship's structure being arranged to provide for safe access, inspection and proper maintenance.
.4 Envisaged operating and environmental conditions are defined by the operating area for the ship throughout its life and cover the conditions, including intermediate conditions, arising from cargo operations and ship transit in all foreseeable sea-going and port conditions.
.5 Specified design life is the nominal period that the ship is assumed to be exposed to operating and/or environmental conditions and/or the corrective environment and is used for selecting appropriate ship design parameters. However, the ship's actual service life may be longer or shorter depending on the actual operating conditions and maintenance of the ship throughout its life cycle.
(4)Tier IIについては、これも原則的にすべての船種に適用するものとする旨合意した。しかしながら、ギリシャは、ベルクキャリア及びタンカーについて早急にGBSを作成して実施したいという意向から、取り敢えずバルクキャリア及びタンカーに関するTier IIを作成することを提案した。この提案は必ずしもWGの合意ではなかったが、WG議長はギリシャの主張に同意して、その方向でTier IIの検討に入る采配を取った。
 このような状況下で、以下の事項について、Tier IIの性能要件案をWGは作成したが、内容を合意したものではなく、今後の議論のためのたたき台であるというのが、WG参加者の一般的な認識であった。
・Design life
 この項目はTier Iの議論の過程の中でTire IIに移すこととなった。ここに具体的な年数(25年あるいは30年)を規定することを強く主張するギリシャに対し、ドイツ、オランダ、デンマーク、アイルランド、日本等が本件はコマーシャル・マターでありここに規定することは不適切である旨主張した。しかし、何らかの(例えば最低限の)数字を規定することが必要とする国や団体もあり、最終的には数字を規定することとなった。ただし、具体的な数字は次回会合に各国からの提案をもとに決めることとされた。
・Environmental conditions
 この項目もTier Iの議論の過程の中でTire IIへ移すこととなった。想定海域をNorth Atlanticとするかが争点となったが、この点についてもDesign lifeと同様、次回会合に各国からの提案をもとに決めることとなった。
・Fatigue life
 疲労寿命は、design lifeよりも充分長いことという既定が仮に作成されたが、合意に至っていない。どのような荷重条件で疲労寿命を決まるかなど、次回に議論することとなった。
・Coating life
 バルクキャリアの二重船側部の塗装基準についてDEにて検討されることに配慮する向きもあったが、規定案が合意に至らず、案文全体を[ ]に入れて、MSC80にてさらに検討することとなった。
・Corrosion addition
 Net scantlingを定めて、これに加えられる腐食厚として考えることは大筋の合意である。その決め方については種々の意見があり、規定案が合意に至らず、案文全体を[ ]に入れて、MSC80にてさらに検討することとなった。
・Structural strength
 ギリシャからはよりスペシフィックにすべきとの主張がなされたが、IACSからはこの規定はもっと汎用性のある内容であるべきとの意見が出された。これに関連し、日本が高張力鋼に対してのみ強度上の問題点を強調する原文の削除を主張し、これら意見を多くの国が支持した。
 なお、Reserve strengthという考え(安全率)が別項建てで検討されていたが、この項目に含まれる概念であるとの意見が大勢を占めたことからここに吸収されることとなった。
・Residual strength
 損傷時の船体強度に関する規定を設けることに基本合意したが、内容については合意に至らず、MSC80にてさらに検討することとなった。
・Structural accessibility
 船体構造の主要部分に、検査や保守のためにaccessできるような手段を持つべきというPMA(検査用固定足場)の要件を盛り込むことをバハマ等が主張している。
・Construction quality procedures
 建造の品質管理規定を盛り込むことが基本合意されたが、内容はさらに検討する必要がある。
・Maintenance
 ここでは、我が国はメンテナンスの“実施”を暗に表現する文言(necessary maintenance)を採るよう強く主張したが、メンテナンスするのは当然のことでありあえてそのような表現を採る必要はないとの意見がほとんどであり、我が国の主張は容れられなかった。
・Design transparency
 設計段階での透明性を確保する必要があるとの観点から韓国から提案された考え方であるが、設計は各造船所の財産であり問題が大きいので対象とする設計図書類を極めて限定的なものとすべきであるとの懸念がCESAや多くの国から示され、我が国はこれを支持した。
・Survey
 検査とメンテナンスは不可分であり、サーベイ・プランのみならずメンテナンス・プランの考え方が含まれるべきとの主張をしたが、MSC80以降議論として全体を[ ]に入れて次回検討となった。
 
(5)Tier IIIに関しては、時間がなく、作成するには至らなかった。
(6)WGからのMSC79本会議への報告について、議長は報告書案を用意し、ギリシャはこれを本会議に報告することを求めた。一方、ドイツをはじめスウェーデン等の欧州勢は、そもそもバルクキャリアとタンカーに関するTier IIを作成すること自体WGで合意していないことを指摘し、議長が用意した報告書案は意味がないと主張し、本会議へはこの文書で報告することに強く反対した。これには多くの欧州勢が支持を表明した。よって、本会議の指示通り、WG議長は本会へ以上の事柄を口頭で報告した。
 
(5)本会議
 MSC79本会議は、WG議長の口頭報告を受けた。MSCはこの報告をNoteした。また、WG議長に対し、WGにおける議論の経緯をMSC80(2005年5月開催予定)への文書として提出するよう指示した。さらにMSCは、次回会議MSC80においてもWGを設置して新船構造に関するGBSの作成作業を継続することに合意した。
 日本はこのWGの報告を受けて以下の意見を表明し、Germany, Norway, Netherlands, Sweden, Denmark, Franceの支持を得た。
1 It is necessary to agree the concept pf GBS before going into the detail of any tier.
2 The goal shall be carefully established taking into account risk based criteria.
3 GBS, through its tier I to tier III, should not be prescriptive. There should be flexibility to develop and/or choose the way for achieving the goal.
4 It is important to establish method/procedure to verify and approve the way for achieving the goal. the process of verification/approval shall be transparent.
 
2.1.6 今後の課題
 MSC80へ新船構造GBS案を提出すべく、その案文を検討している。Tier I及びTier IIの案は、各国に広く周知して意見を求める観点から、2月4日締め切りの13週前文書として提出した。その内容及び検討に経緯については、第3章に記述する。
 さらに、Tier III Verificationについても提案する必要があろう。また、保守基準案、運航基準案も提案するか、早急に検討する必要がある。
 ギリシャやバハマの主張に従って行くと、「兎も角も頑丈な船を作れ。」ということとなり、船体のスキャントリングの要求値が増大する恐れがある。我が国は、従来から培ってきた造船工学に立脚した適切なスキャントリングの設定と、船体の保全性確保には船舶就航後の保守とオペレーションが適切に行われることが重要な要素であるという主張を引き続き継続していく予定である。
 そのために、どの程度の保守を設定するか、オペレーションの基準を設定すべきか、造船側と運航側の意見の調整も必要であろう。これらの要素は、船舶の運航に制限を与えたり、保守作業の義務付けとなる可能性があるからである。
 
 
2.2.1 はじめに
 現在、ISOではLimit State Assessment of Ship Structuresのためのdocumentつくりを急いでいる。本件は、IO/TC8/SC8のSecretaryであるProf. Byeong Choel ChoiからのISOに対する2003年1月15日付けのproposalに端を発する。
 具体的なdocument作りの作業は、Dr. Paul FriezおよびProf. Joem-Kee Paikによって精力的に進められた。Documentは、
−ISO/CD18072-1, Ship and Marine Technology・Ship Structures−
Part1: General requirements for their limit state assessment
−ISO/CD18072-2, Ship and Marine Technology・Ship Structures−
Part2: Requirements for their ultimate strength limit state assessment
・ISO/CD18072・3, Ship and Marine Technology・Ship Structures−
Part3: Requirements for their fatigue limit state assessment
・ISO/CD18072・4, Ship and Marine Technology-Ship Structures−
Part4: Requirements for their accidental limit state assessment
の4部構成となっている。2004年4月、Prof. PaikによってPart 1の第1稿が提案され、hearingが終了し、2004年9月14日に投票が行われた0現在、投票に際して寄せられたコメントをdraftに盛り込む作業がProf. Paikによって行われている。
 
2.2.2 日本の対応
 日本では、財団法人日本船舶標準協会が責任団体となり、国内の意見を取りまとめている。協会では、船体部会船体構造専分科会を設置し、draftに対する意見聴取を行っている。2004年7月29日時点での各委員および造工構造WG委員の賛否をとりまとめ、また、委員からのコメントを取りまとめた。
 重要なコメントは、
(1)本draftには、考え方だけが示されており、考え方自身は基本的に正しいと考えられる。
 従って、ただ反対を唱えるだけでは、主張は弱い。一方、本規格が実効を持つのは、具体的な基準・数値が明示された後である。そのため、Part2・Part4の審議を並行して行い、具体的な基準・数値として合理的なものが決まった後、Part 1-Part4をまとめて1つのdocumentとして採択するべきである。
 
(2)Ship-shaped offshore structures such as FPSOsが対象に含まれているが、設計思想が船体とは基本的に異なっていので、本documentに含めるべきでない。
 既に1回目の投票(15/09・2004)は済んでいるが、11月19日(金)に上記専門分科会の第1回の会合が開催される予定である。Prof. Paikより、11月23日頃までにコメントを貰えれば、draft修正(11月30日がISOへの提出期限)に盛り込みたいとのメールが届いている。
 
2.2.3 世界の対応
 2004年9月14日に、提案されているdraft承認に関する投票が実施された。投票結果は、10ケ国承認、2ケ国不承認、1国保留、5ケ国未投票であった。
 また、承認国/不承認国各2ケ国から、コメントが出されている。最も重大なコメントは、offshoreの言葉を削除するよう求めたUKとUSA(不承認国)のコメントである。これを受けて、Prof. Paikは修正draftでは、offshore関係を削除することを表明している。
 なお、本規格を審議する8/WGに、ノルウェーは参加していない。
 
2.2.4 まとめ
 以上、ISOにおけるRequirements for limit state assessmentに関する最近の動きについて説明した。本規格が決まると、ISOの名前で規格が一人歩きする恐れがある。一方、船体の安全性の観点からは、合理的なlimit state assessmentは必要である。従って、闇雲に反対するのではなく、Part2以降の規格審議に積極的に参加し、合理的な1imit state assessmentの策定に努めるべきであると考える。
 なお、IACSのCommon Structural RuleあるいはIMOでのGoal-based New Ship construction Standardsなど、同種の規格あるいは基準の策定作業も平行して行われており、これらの3つの規格あるいは基準の合理的な策定および整合性について、十分に留意する必要がある。







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