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2000/12/04 産経新聞朝刊
【主張】対中ODA削減 「大綱」軸に戦略的見直しを
 
 中国に対する政府開発援助(ODA)のあり方を検討している外務省の私的懇談会(会長・宮崎勇元経済企画庁長官)は、十三年度から対中ODAを削減する方向を打ち出した。まだ、報告書の原案段階とはいえ、「現在の援助額にこだわらず、わが国の厳しい財政事情を考えて個別具体的に案件を審査する」と、これまでタブー視されてきた対中ODAの削減に踏み込んだことは高く評価される。これを機会に、日本の対中外交戦略を踏まえ、徹底的に見直してもらいたい。
 まずなすべきことは、これまでわれわれが繰り返し主張してきたように、援助の基本原則であるODA大綱が順守されているかどうかの検討だ。大綱はODA実施に際し「資金の軍事面への使用の回避」「軍事支出や大量破壊兵器・ミサイルの開発・製造などへの十分な注意」「民主化の促進や基本的人権の保障」などを定めている。
 中国は十二年連続で国防費を前年比二ケタ増加させており、核兵器や長距離ミサイルまで保有する軍事大国だ。人権問題では反政府勢力への弾圧などで国際人権団体からも厳しく指弾されている。大綱の原則からすると対中巨額援助は疑問といわざるを得ない。
 ODAの具体的案件も問題が多い。資金の大半は、中国側からの強い要望により空港や高速道路などのインフラ整備に費やされた。いずれも軍事面への転用の可能性が高いものだ。
 世界中の六十億人のうち十二億人が一日一ドル以下の生活を強いられる貧困層だが、中国にはこの貧困層が二億人もいる。経済成長に伴い、大気汚染や水質汚濁など環境問題も深刻化している。ODAもハコもの偏重を見直し、貧困対策や環境問題、教育など、ソフト分野へ重点を転換すべきだ。
 中国国民は日本からの援助をほとんど知らされていない。これでは、国民レベルでの友好関係は築けない。日本の顔が見える援助が求められる。そのためには、日本の非政府組織(NGO)と中国の地方政府をからませた学校建設など、顔と顔を合わせる機会の多い計画をはかる工夫も必要だ。中国国内で、日本のODAの実態をテレビスポットで流すのも有効だろう。
 日本は世界一のODA供与国だが、財政事情の苦しさから与党三党は来年度のODA予算全体の大幅削減の方針を示している。聖域を設けず対中ODAの減額も正面から論じるべきだ。
 外務省は来年春、二十一世紀に向けた対中援助計画をまとめる。長期的視野に立ち、中国にとってもわが国の国益にとっても、最も効果のあるODAのあり方を示すべきである。
 
 
 
 
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