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2002/04/16 読売新聞朝刊
[社説]日中経済関係 相互補完推進へまず脱“援助”だ
 
 日本と中国が、両国政府次官級の「日中経済パートナーシップ協議」設置で合意した。
 中国・海南島で開かれた経済フォーラムでの演説で、小泉首相が強調した、「相互補完の強化による両国経済関係の前進」に向けた対話促進を目指すという。
 日中間の貿易額が中国にとって国別一位、日本にとっても米国に次ぐ規模になるなど、両国の経済関係は拡大を続けている。幅広い分野での相互理解、摩擦の解消、互いの利益につながる関係発展に役立つなら、結構なことだ。
 だが、そのためにまず必要なのは「援助国と被援助国」という現在の関係を、対等な関係に改めることではないか。
 中国は、世界経済が低迷する中で、7%を超える高度成長を続け、国内総生産(GDP)はもとより、輸出額でも、すでに先進七か国のイタリアに匹敵する規模をもつまでになっている。
 年間四百億ドル(約五兆二千億円)を上回る直接投資を日本を含む外国企業から導入し、高度成長を実現している国に、これまでのような援助は必要ない。
 中国向け政府開発援助(ODA)の大半を占める円借款について、政府は、昨年度確定額を前年度の四分の三、千六百十四億円に圧縮した。さらに削減を重ねて、円借款と無償援助はできるだけ早くとりやめ、環境対策などへの人的協力と災害時の緊急援助に限るべきだ。
 中国は日本から多額の援助を受ける一方、核軍拡に拍車をかけている。今年度国家予算に計上した国防費は、前年度当初比19.4%増と十四年連続の二けたの伸び、ここ数年では最高を記録した。
 防衛庁は昨年版の防衛白書で、中国の国防費が急増を続け、戦力近代化が「防衛に必要な範囲」を超えると警告した。米議会調査局も報告書で、中国が核兵器とミサイルの両分野で顕著な拡大を続けていると、重大な懸念を示している。
 政府は開発援助大綱で、相手国の軍事支出、大量破壊兵器やミサイルの開発・製造の動向に十分注意を払う、と定めている。その原則に反し、核軍拡を結果的に支える援助は、日本のみでなく、世界とアジアの平和と安定にマイナスだ。
 核軍拡に強く警告を発し、適切な対応が見られない場合は、援助の全面停止もためらうべきでない。
 中国はまた、開発途上国への政治的な影響力を高める戦略の一環として、アジア・アフリカ諸国へ少なくとも年間五億ドルの援助を実施しているといわれる。
 単に対中援助の見直しにとどまらず、日本の外交戦略の確立、その一環としての援助戦略構築を急がねばならない。
 
 
 
 
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