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2001/03/19 読売新聞朝刊
[社説]中国全人代 やはり格差と腐敗が問題だ
 
 中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が、今年から二〇〇五年までの第十次五か年計画に関する朱鎔基首相の報告などを承認して閉幕した。
 中国は今世紀の半ばには国民一人当たりの国内総生産(GDP)で中進国の仲間入りをしたいと考えている。そのため今後十年間でGDPを倍増することが当面の目標だ。
 今度の五か年計画は、このGDP倍増構想を実現するための青写真で、年間7%程度の成長を目指している。
 一党独裁を続ける共産党にとって、経済を発展させ、国民の生活を豊かにすることは、支配の正当性について国民の支持を得るためには不可欠だ。
 だが、国民の不満が増大し、党への支持が揺らぎつつある。格差と腐敗が、その二大要因だ。過去二十数年間に及ぶ改革・開放政策の負の遺産でもある。
 朱鎔基報告が、農民の収入増大の必要性を強調し、西部大開発に取り組むとしているのも、都市と農村、沿海地区と内陸地区の格差がもはや無視できないものとなっていることを物語っている。
 とりわけこの数年、農民の収入の伸びは低く、格差が拡大している。世界貿易機関(WTO)への加盟が、農業に打撃を与えるのは必至で、農民の不満はさらに大きくなりかねない。
 腐敗問題も深刻化する一方だ。最高人民検察院や最高人民法院の活動報告に対する全人代の承認採決で、三分の一近い批判票が出たのは、腐敗のまん延と摘発の不十分さへの不満を示している。
 党と国家の存亡にかかわるとして、江沢民政権は腐敗一掃を目指し「正しい気風を重んずる」運動や、「広範な人民の利益を代表する」運動を展開している。最近では、「徳をもって国を治めよう」とも呼びかけている。だが、状況は一向に改善されない。
 権力を握る党や政府の幹部の自覚に頼るだけでは不十分だ。問題の核心は、権力者と権力機関をチェックできる制度の確立にある。
 一党支配は、言ってみれば、魚を狙うネコの監視をネコ自身にさせるようなものだ。腐敗をなくするためには、一党支配の核心に触れるような大胆な改革が必要だろう。
 中国国内でも、むろん体制内にとどまるとはいえ、政治的な改革を求める声が次第に高まっている。朱鎔基報告も、そうした意味での政治的改革に言及したが具体性と実効性に欠けている。
 安定重視も結構だが、政治的な改革の先送りは、かえって政治的、社会的安定を損なう結果になるだろう。
 
 
 
 
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