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III
第3章 旅客船マニュアルの解説
総論
Q-1
 高齢者、身体障害者等の公共交通機関の利用状況、外出目的、または利用時に困ることは何か。
A
○高齢者、身体障害者は外出時に公共交通機関を利用しているか。
利用している。 41.5%
時々利用している 18.9%
ほとんど利用しない 34.0%
無回答 4.8%
(平成3年運輸省調査)
 
○障害別にみた外出状況
視覚障害者 9.3%
聴覚言語障害 10.9%
肢体不自由 52.7%
内部障害 27.1%
(平成14年厚生労働省調査)
 
○高齢者、障害者の外出目的
買い物等日常生活 27.0%
友人と会う娯楽等 21.5%
通院 15.0%
旅行 14.7%
通勤・通学 7.1%
その他 14.7%
(平成11年交通エコロジー・モビリティ財団調査)
 
○高齢者の公共交通機関への要望
階段の上り下りがきつい 29.1%
バスのステップが高くて乗りにくい 10.2%
(平成8年度総務庁調査)
 
Q-2
 旅客船のバリアフリー化の現状はどうなっているか。
A
 国内旅客船総数1137隻のうち、バリアフリー化された旅客船は50隻である。
 
○ 車両等
1) 「移動円滑化基準された車両等」は、各車両等に関する移動円滑化基準への適合をもって算定。
 
(平成14年国土交通省調査)
 
Q-3
 「高齢者、身体障害者等」とは何ですか。「等」とは何ですか。
A
 知覚機能や運動機能といった身体の機能の面で日常生活または社会生活に制限を受ける者をいいます。具体的には、加齢により知覚機能や運動機能が低下した高齢者、視覚障害者や聴覚障害者などの身体障害者のほか、「等」として妊産婦、けが人が含まれる。
 
Q-4
 内部障害者は対象に含まれるのですか。
事例
 日常生活または社会生活に身体の機能上の制限を受ける者の公共交通機関を利用した移動については、その利便性及び安全性の向上の促進を図ることを目的としています。内部障害者についても、日常生活または社会生活に身体の機能上の制限を受ける場合は対象となります。
 
Q-5
 「移動円滑化」の内容はどんなことですか。
A
 高齢者、身体障害者等は公共交通機関を利用して移動する際に、障害のない者よりも大きな身体の負担を負うこととなる。このため、交通バリアフリー法はその負担を軽減することにより、移動をより容易且つ安全にすることを目指しており、これを「移動円滑化」と定義している。
 
Q-6
 旅客不定期航路事業者が含まれていない理由はどのようなことですか。
A
 海上運送事業者については、まずは公共交通後関としての公益性が特に高い、一般旅客定期航路事業を義務づけの対象にしています。
 なお、遊覧船、屋形船、レストランクルーズ船などで構成される旅客不定期航路事業については、一般旅客定期航路事業に比べ日常生活及び社会生活上の必要性という点では異なるものの、国土交通省としては、一般旅客定期航路事業のバリアフリー化の進展に合わせて、バリアフリー化を進めるよう指導することとしており、また、このための情報提供等も行うこととしている。
 
(1)ボーディングブリッジ/舷門
 
Q-7
 潮の干満により、勾配1/12以下の確保が困難な場合がある(岸壁〜船舶)乗降場所に関しては、1/12の推奨値を緩和できないか、またスロープの根拠を、教えて下さい。
A
 1/12(5度8%)以上のこう配が出る時は介助者又は職員の介助による対応とする。スロープの根拠は、ハートビル法(※)を参考としていますが、小型船の場合は今後検討を要するところです。
 なお、車両モデルデザインは、1/8(7度、12%)が妥当とし、ただし1/4(14度25%)以下におさえることとしている。
 
スロープの基本的な考え方(車両モデルデザイン)
 公共交通機関で使用されるスロープの勾配、傾斜の程度は、比率(例えば12分の1、傾斜角度5度・百分率8%)で表すのが一般的である。スロープは車いす使用者の負担感などを考慮して例えばアメリカのADAでは勾配を12分の1以下におさえるよう規定している。ただし交通機関車両の乗降に使用するスロープでは、さらにきつい勾配にならざるをえない場合もある。比較的緩やかな3度の勾配においても、車いす使用者が自走により持続的に上ることは、かなり身体的負担を伴う。このため、短時間で車両等に乗降する場合に限定すると例えば以下の数値が一つの目安になると思われる。
1)勾配が1:12(約5度、8%)の場合は、ある程度上肢の筋力がある車いす使用者であれば自立が可能であり、介助者の負担も比較的少ないと思われる。
2)勾配が1:8(約7度、12%)になると、熟練した筋力のある車いす使用者でも負担が大きく、介助者の手を借りないと自立して乗降ができない場合がある。後方への転倒のおそれとともに自立の限界の目安と考えられる。従って交通機関の車両に装備されるスロープ勾配は、この程度の数値が妥当であろう。
 さらに実際の車両に装備されるスロープでは、1:4(約14度、25%)程度の急勾配になる場合もあると思われる。この勾配では介助者無しの乗降は不可能もしくは非常に困難であり、介助者の負担や危険性も大きくなる。JISに規定される登坂性能10度を超える勾配であり、電動車いすの場合でもかなりの危険を伴うことを認識しておく必要がある。
 
※ハートビル法=高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律
車両モデルデザイン=障害者・高齢者等のための公共交通機関の車両等に関するモデルデザイン
 
ADA(Americans With Disabilities Act)=ADAは障害をもつアメリカ人に関する法律(1990年制定)公共交通機関の整備に限った法律ではなく、障害者の雇用、公共サービス、公共施設、通信、人権の各分野において差別があってはならない。すべての人に平等にサービスが与えられた法律。
 
Q-8
 陸側の設備(ボーディングブリッジ)がない場所についてはスロープ等の使用になるが潮位の差によって勾配が変化し1/12以下の勾配が取れない場所も有る(潮位の差が3.0M)この場合リフト式乗降設備も考えられるがリフト式では他の利用者との混雑が予想され身障者専用の乗降口を設けなくてはならない。上記により陸側設備の無い港では乗用車により船内乗降口まで案内する事も良いのでは。
A
 乗用車使用と段差解消設備とは内容が違うと思いますが、身障者が乗用可能な自動車で送迎することは問題ないと思います。しかしながら、勾配については、極力抑え介助者の補助により移動ができる範囲にとどめて下さい。
 なお、バリアフリーは車いす使用者だけでなく、高齢者、車いす使用者以外の障害者も対象としていますので、ハード面(段差解消装置等)をソフト面(人的支援)での対応ですべて代替とすることはできません。
 
Q-9
 小型旅客船で舷内より客席に至る通路にストームレールを設けましたが船主側より通路幅が狭くなるので、取りやめさせられました。暴露部の通路については片側、(舷側)で良いのではないかと考えます。
A
 暴露部の通路の内側(甲板室側)にストームレールを設けたものと理解します。
 一般的に旅客船では、船体動揺時の旅客の安全な歩行のためにストームレールを設けているものと思われますが、バリアフリーの観点からいえば両側に設置することが望ましい。
 
Q-10
 「滑りにくい・・・」との表現が紛らわしい。数値的な表現は考えられないか。
A
 数値的によることなくノンスリップで安全で滑りにくい仕上げで良いと思われる。
 マニュアルは自由度を高めるため、機能要件化した規定を多く用いています。床面仕上げについても結果的に滑りにくい効果が得られれば基準は満たしたものと解釈します。
 
Q-11
 段差及び勾配の視覚的な表示はしなくて良いか?
A
 段差が生じる場合には、踏面の端部とその周囲の部分との色の明度差が大きいこと等により、段を容易に識別できるものであること。タラップと舷門の間の摺動部に構造上やむを得ずフラップを設置したときはフラップの端部とそれ以外の部分との色の明度の差が大きいこと等により摺動部を容易に識別できるものとする。







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