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【海難事例 1】
無資格者が操船するプレジャーボートが関連した事例
―プレジャーボートE号プレジャーボートV号衝突事件―
 
 8月18日、E号(5.64メートル)は、最大搭載人員を超える同乗者を乗せて遊走中、左舷船首のV号を追い越す態勢で接近したが、追い越し時の船間距離を十分にとらないまま接近し、また、V号(2.07メートル)は、無資格者が単独で操縦して遊走中、船間距離が近いことは分かっていたものの、避航措置をとらずに続航し衝突した。
 衝突の結果、E号は左舷船首外板に擦過傷を生じるとともに、推進器翼を折損、また、V号は船首から船尾にかけての右舷側外板を破損、V号の無資格者が負傷した。
(原因)
● E号船長がV号を無理に追い越すことができると思い、動静監視を十分に行わなかった。
● V号の無資格の操縦者が避航措置をとらなかったこと。
● V号の所有者が、有資格者に操縦させなかったこと。
 
 
【海難事例 2】
水路調査を十分に行わなかったことが原因とされた事例
―プレジャーボートS丸かき養殖筏衝突事件―
 
 8月14日、S丸(4.3トン)は、花火大会を見学して帰航中、レーダーで右舷前方に私設灯浮標の映像を探知し、同灯浮標の灯光を視認したが、かき養殖筏区域の一端を示す灯浮標の存在を知らなかったので、これを小型船の灯火と誤認し、同区域を避けることなく進行中、筏係止用ワイヤーロープに衝突した。
 衝突の結果、推進器軸、同翼及びブラケットを曲損し、乗員6名が負傷した。
(原因)
●かき養殖筏の設置状況についての調査が不十分だったこと。
 
 
―過去の海難審判庁レポートから―
根がかりした錨を揚げるときは慎重に!!
海難の概要
 プレジャーボートH丸(無甲板FRP製、3名乗船)は、平成11年5月○○湾まで航走、釣り目的で機関停止し、水深10メートルのところに重さ3キログラムの錨を錨索30メートル延出して右舷側中央部前寄りの舷縁上のリングに係止して錨泊した。
 釣り後、帰航することとしたが、錨が根がかりして揚がらなかったことから、機関の前進力を利用することとし、そのままの状態でスロットルレバーを急速に一杯に回し、全速力前進にかけて急発進したところ、根がかりした錨が海底から外れず、緊張した錨索によって横引きされる状態となり右舷側に大傾斜し、復原力を喪失して転覆した。
 転覆により船外機が濡損、3名とも海中に投げ出され、船底につかまっていたところを付近航行中の船舶に救助された。
 
根がかりした錨の揚錨方法
 機関の前進力を利用して錨を揚げようとする場合、錨が外れないと緊張した錨索により横引きされて、転覆する危険がある。
 適切な揚錨方法としては、船上の錨索の係止位置を船尾に付け替えるなどしたうえ、船首方向を変えながら機関回転数を除々に上げて錨索を引くなど、船体が横引き状態とならないようにすることが必要である。
 
 
台風中心まで、1,000km以上離れていてもうねり、いそ波、風に注意
遠距離の台風による海難事例
 平成12年9月1日台風14号が発生し、10日には発達しながら南大東島の南東海上において、大型で非常に強い勢力となり、12日沖縄本島を直撃、16日朝鮮半島南岸に至り、サハリンで消滅した。10日〜15日(本邦への距離900km以上)にかけ、東京湾から鹿児島港、五島列島、対馬にかけ21隻の船舶の海難事故が発生し、プレジャーボート海難は転覆2件、衝突1件であった。
 
海難の原因(プレジャーボート転覆)
 航行中うねりいそ波認めた時、無理をせず引き返す判断が必要であったが、台風は1,250km〜1,400kmの遠方にあったことから、最新の気象・海象情報を入手せず、まさか転覆することはないと航行を続けたことにより発生した。
 
台風が遠方にある時も細心の注意を!
 台風中心が1,000km離れていて風が弱い時でも、うねりいそ波を見くびることのないように、また、集中的な雨による視界不良にも十分な注意が必要である。
 特に台風が大型で強い勢力の場合、中心が遠方であっても最新の気象・海象情報を入手して、決して無理をしないことが肝要である。瀬戸内海の場合、うねりの影響は少ないものの、1,000km以上遠方の台風による強風により岡山県の港内で2件の貨物船衝突が発生しており、台風が遠方にあっても油断は禁物である。
 







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