(5)福岡市内における陸上交通
■天神駅・博多駅発着路線の折返し点として、路線バスは高頻度で運行
博多〜壱岐〜対馬航路が発着する博多港の博多ふ頭や、韓国・釜山との国際航路が発着する中央ふ頭には、各地と天神駅や博多駅を結ぶバス路線が1日200往復近く乗り入れている。
バス事業者では、天神駅や博多駅などを折返し点にすると地価が高いことや、ラッシュ時間帯にほとんど空の状態で折返すより、港方面への通勤需要もあることから、それらの利用客を運ぶ方がよいという理由から、天神駅や博多駅までを一次輸送、そこから港までを二次輸送と捉え、路線を編成している。また、博多ふ頭にはベイサイドプレイス、中央ふ頭には博多国際センターやマリンメッセがあり、休日やイベント開催時の需要がバス以外の交通手段に利用者が流れないようにするねらいもある。
一次輸送と二次輸送のダイヤはつながっているが、利用者に対してわかりやすいように、例えば博多駅までは行き先表示に「博多駅」と大きく示しその下に小さく中央ふ頭行きと表示しており、博多駅を過ぎると「博多ふ頭国際ターミナル」に表示を変えるなど、表示の切り替えを行っている。
博多ふ頭のバス利用人員は、1日約1,000人に上っている。
なお、能古島への航路が発着する能古島渡船場についても、すぐ近くにバスの車庫があることから、約290往復/日と多くなっている。
表6-4-1 博多港に乗り入れるバス路線
港湾名 |
停留所名 |
両者の距離 |
路線名 |
運行区間 |
運行便数 |
航路とのダイヤ接続 |
博多港 |
中央ふ頭 |
約30m |
昭代線など6路線乗入れ |
天神または博多駅経由で各地へ |
189往復/日 |
あり |
博多港 |
中央ふ頭 |
約15m |
屋形原線など4路線乗入れ |
同上 |
176往復/日 |
あり |
姪浜港 |
能古渡船場 |
約100m |
シーサイド線など6路線 |
天神または博多駅または姪浜駅経由で各地へ |
297往復/日 |
あり |
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資料)「海上旅客輸送のバリアフリー化に関するアンケート調査(バス事業者用)」より
表6-4-2 博多ふ頭・中央ふ頭のバス利用人員
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天神系統 |
博多駅系統 |
合計 |
博多ふ頭 |
約680人/日 |
約280人/日 |
約960人/日 |
中央ふ頭 |
約370人/日 |
約320人/日 |
約690人/日 |
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資料)西鉄バス自動車事業部資料より
注)人員は、バスカード利用者の比率から引き伸ばした推計値である。
■ワンステップバスの導入が進むが、ノンステップバスは費用・効果両面から課題あり
博多港に乗り入れる西鉄バス全体では、総車両数2,621台中、ワンステップバスが624台、リフト付きバスが44台、ノンステップバスが3台である。
ワンステップバスは、超低床スロープつき車両で、車内に車いす止めの専用スペースも確保している。これらの車両が運行する路線には、バス時刻表やホームページ、車両の行先表示案内の見やすい場所に車いすマークを掲出している。
ワンステップバス等の導入は、交通バリアフリー法に従い、計画的に進められており、2001年以降、毎年年間100台前後のペースで導入されている。
ただし、バリアフリー車両の導入はワンステップバスが基本であり、ノンステップバスはほとんど導入されていない。その最大の理由は費用の問題であり、車両価格には、中型で約260万円、大型では約400万円の開きがある。台数を多く入れ替えるとかなりの額になることから、事業者単独でのノンステップバスの導入は非常に難しく、公的な補助金を活用することになるが、国・地方自治体の協調補助であり、協議や調整に時間を要する上、全額補助ではないことから、普及には時間がかかる状況である。公営事業者の積極的な導入により、ノンステップバスの価格が下がることが期待されている。
また、事業者では、ノンステップバスは、乗車時の負担軽減に効果的だが、車内での傾斜や段差が構造上、ワンステップバスよりも大きく、特に高齢者や身障者の車内移動は場合によっては危険度が増す恐れがあり、ノンステップバスが移動制約者にとって本当に安全・快適なバスなのかどうかを、すでに導入した車両をもとに検証したいとしている。
(6)博多港の旅客船ターミナルおよび乗下船(ジェットフォイル)
■バリアフリー法対応でないが、浮き桟橋の傾斜等は大きく改善
ジェットフォイルが発着する博多港の第1ターミナルは、わが国のウォーターフロント再開発のはしりとして1992年に建造された。建物の段差解消などは概ね対応が成されているが、ドアの開閉が手動の開き戸であるなど、バリアフリー基準には適合していない部分がある。
乗下船は、浮き桟橋からとなるが、従来は浮き桟橋を複数連結していたのに対し、今年度から一体的なものに代えて供用開始したため、スペースが広くなり、揺れも少なくなったほか、タラップを長くできるため、急な段差や急傾斜が解消された。調整にあたっては、各事業者や港湾管理者による協議の場を設けられた。
また、「ヴィーナス2」では、車いすを持ち上げることなく乗下船できるように対応している。
第1ターミナルの乗船券販売所
第1ターミナルから浮き桟橋へ
浮き桟橋
「ヴィーナス2」の乗下船口
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