フェリーについては、乗降設備は有効幅、車いす対応とも遅れている。出入口の有効幅は、便所を除いて全て確保されているが、経路における段差の解消や、身障者用便所、昇降機、案内設備等バリアフリー設備の設置は、「フェリーみしま」以外ほとんど対応がなされていない。旅客船については、乗降設備の9割で有効幅が確保されているが、車いす対応はほとんどなされていない。また小型船が多いことから、船内の通路の有効幅が確保されているのは半数以下にとどまっており、段差解消やバリアフリー設備の設置については、ほとんどが未対応である。
(1)乗降用設備
乗降用設備の有効幅については、旅客船では9割で80cm以上確保されているが、フェリーでは約3割にとどまっている。また、車いす使用者が持ち上げられることなく乗降できる構造を有するものは全体の約1割で、ほとんど対応がなされていない。
なお、離島旅客定期航路が就航している37港湾における乗降方法は下表のとおりである。対馬地区では浮き桟橋が中心であり、それ以外の地区では主にタラップを使用している。ボーディングブリッジを使用しているのは、博多港、厳原港、郷ノ浦港の3港である。
表4-1-7 各港における乗降方法
市町村 |
港湾名 |
ボーディングブリッジ |
タラップ |
ランプウェイ |
浮き桟橋 |
その他 |
九州郵船 |
博多港 |
○ |
|
|
○ |
|
郷ノ浦港 |
○ |
○ |
|
|
|
芦辺港 |
|
○ |
|
○ |
|
印通寺港 |
|
○ |
|
|
|
厳原港 |
○ |
○ |
|
|
|
比田勝港 |
|
○ |
|
|
|
呼子港 |
|
○ |
|
|
|
対馬市 |
仁位港 |
|
|
|
○ |
|
卯麦港 |
|
|
|
○ |
|
佐志賀港 |
|
|
|
○ |
|
嵯峨港 |
|
|
|
○ |
|
貝鮒港 |
|
|
|
|
○ |
貝口港 |
|
|
|
○ |
|
水崎港 |
|
|
|
○ |
|
加志々港 |
|
|
|
○ |
|
樽ヶ浜港 |
|
|
|
○ |
|
壱岐市 |
大島漁港(大島地区) |
|
○ |
○ |
|
|
大島漁港(長島地区) |
|
○ |
○ |
|
|
大島漁港(原島地区) |
|
○ |
○ |
|
|
郷ノ浦港(渡良地区) |
|
○ |
|
|
|
郷ノ浦港 |
|
○ |
○ |
|
|
北九州市 |
小倉港 |
|
|
|
○ |
|
馬島港 |
|
○ |
|
|
|
藍島港 |
|
○ |
|
|
|
宗像市 |
地島漁港 |
|
○ |
|
|
|
鐘崎漁港 |
|
○ |
|
|
|
大島村 |
神湊港 |
|
○ |
○ |
|
|
大島港 |
|
○ |
○ |
|
|
大島漁港 |
|
○ |
|
|
|
新宮町 |
相島港 |
|
|
|
○ |
|
新宮港 |
|
|
|
○ |
|
福岡市 |
博多 |
|
○ |
|
|
|
玄界島 |
|
○ |
|
|
|
姪浜 |
|
○ |
|
|
|
小呂島 |
|
○ |
|
|
|
志摩町 |
岐志 |
|
○ |
|
|
|
姫島 |
|
○ |
|
|
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合計数 |
3 |
24 |
6 |
13 |
1 |
|
(2)出入口
出入口の有効幅については、フェリーは全て80cm以上を確保しており、旅客船も約8割が確保している。しかし、スロープ等、車いす使用者が円滑に通過できるための設備を有するものは「こくら丸」(北九州市)の1隻のみである。
(3)車両区域
フェリーの車両区域の出入口は、いずれも80cm以上を確保しているが、車いす対応があるのは「フェリーみしま」のみ、高齢者、身障者等の車両乗降場所が設置されているのは「フェリーみしま」、「おおしま」(大島村)の2隻のみである。
(4)客席
バリアフリー客席を備えているのは全体の約2割、車いすスペースを備えているのは約3割にとどまっている。
船種別にみると、フェリーでは「フェリーちくし」(九州郵船)、「フェリーみしま」にバリアフリー客席及び車いすスペースが備えられている。旅客船では、バリアフリー客席については「こくら丸」のみ、車いすスペースについては「ニューおろしま」(福岡市)、「ひめしま」(志摩町)、「こくら丸」の3隻に設置されている。
(5)便所
便所は全てのフェリーに備えられているが、出入口の有効幅を80cm以上確保しているものは「フェリーちくし」と「フェリーみしま」のみである。また、出入口の段差の解消については「フェリーみしま」以外は対応がなされていない。
腰掛け式便座(手すり設置)、床置式小便器(手すり設置)は1,000トンを超えるフェリーにはいずれも設置されているが、フェリー全体では約半数にとどまっている。身障者用便所が設置されているのは、「フェリーみしま」のみである。
旅客船についてみると、9割に便所が備えられているが、出入口の有効幅の確保や段差の解消がなされているのは2〜3割にとどまっている。腰掛け式便座(手すり設置)は超高速船「ヴィーナス」、「ヴィーナス2」(九州郵船)に、床置式小便器(手すり設置)は「しおかぜ」(大島村)に設置されている。身障者用便所は旅客船では全く設置されていない。
(6)食堂
食堂は大型フェリーの2隻にあり、出入口は80cm以上を確保している。しかし、出入口の段差の解消や、車いすでの利用に適したテーブルの設置については、いずれも未対応である。
(7)遊歩甲板
遊歩甲板はフェリーでは6隻にあり、いずれも出入口は80cm以上を確保しているが、車いす対応が行われているのは「フェリーみしま」のみである。
旅客船では遊歩甲板は3隻にあるが、出入口の有効幅の確保及び車いす使用者への対応は全くなされていない。
(8)通路
船内の各施設間の移動経路となる通路の有効幅は、フェリーについては、約7割で確保されているが、車いす対応、昇降機の設置が行われているのは、「フェリーみしま」のみである。
旅客船では、通路の有効幅の確保、車いす対応、昇降機の設置のいずれも全く対応がなされていない。
(9)経路全般
船内の移動経路における手すりの設置、床の滑りにくい仕上げ、車いすでの開閉・通過に対応した戸の設置が行われているのは、フェリーでは「フェリーみしま」のみである。
旅客船では、手すりの設置は3隻、床の滑りにくい仕上げは4隻で対応があるが、車いすでの開閉・通過に対応した戸は全く設置されていない。
(10)案内設備
視覚障害者用の点状ブロックの敷設、通路・階段手すり端部の点字貼付、船内設備の案内板等の案内設備、点字案内設備等の各種案内設備は、フェリーでは「フェリーみしま」にのみ備えられている。
旅客船では、船内設備の案内板等の案内設備は7割に備えられているが、それ以外の案内設備は全て未対応である。
(11)その他の取り組み
船舶、乗降設備等のハード面においてバリアフリー化への対応として取り組んでいることとして、乗降設備の改善による段差の解消や、車いす使用者への対応、待合所のバリアフリー化などがあげられている。
表4-1-8 ハード面のバリアフリー化に対する取り組み
事業者 |
具体的な取り組み内容 |
九州郵船(株) |
ヴィーナス、ヴィーナス2の博多港でのタラップについてはスロープ板を設け、段差を無くしている。 |
壱岐市 |
待合所等の建替時はバリアフリー化を実施している。 |
北九州市 |
法律改正によるバリアフリー化(車いす乗船)は、こくら丸のみ。 |
大島村 |
・旅客船の着岸壁から浮桟橋の離着岸へ(大島港)
・ターミナル新築バリアフリー化へ |
新宮町 |
本土側待合所を交通バリアフリー法対応として、2004年4月より供用開始。また2005年度に船舶を一部バリアフリーに改造する計画である。 |
福岡市 |
船舶・待合所等新設・修繕の際、バリアフリー法に適合させる。 |
志摩町 |
乗降用のスロープに傾斜のゴムを取り付け車いすでも乗降できるようにした。 |
|
(5)バリアフリー化に関するソフト面での対応
(1)ソフト面での対応状況
バリアフリー化に関するソフト面での対応として取り組んでいることとして7事業者から回答があり、乗組員や陸上係員による乗下船時の介助は7事業者すべてで行われている。それ以外では、各ターミナルへの車いすの配備(九州郵船)や、高齢者・車いす利用者の優先乗船の実施、ランプウェイからの乗船(大島村)などが行われている。
表4-1-9 ソフト面におけるバリアフリー化への対応
事業者 |
具体的な取り組み内容 |
九州郵船(株) |
乗組員及び陸上係員による介助、優先乗船、各ターミナルへの車椅子の配備については対応しています。 |
壱岐市 |
乗務員による乗下船時の介助を行っている。 |
北九州市 |
乗組員の介助(2人以上)により、車いす乗船者に対し、常時対応している。 |
大島村 |
現在船はバリアフリー対応できていないのでフェリー乗船は高齢者、車いすは優先及び介助にてランプウェイより乗船。旅客船には介助及び車いすは船員3〜4名にて乗船。 |
新宮町 |
現在、船舶がバリアフリー未対応なため、乗組員は介助を実施している。 |
福岡市 |
乗組員、陸上係員による介助。 |
志摩町 |
乗船時に乗組員による介助。 |
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(2)従業員(乗組員・陸上係員)に対するバリアフリー化に関する教育・指導
従業員(乗組員・陸上係員)に対してバリアフリー化に関する教育・指導を行っているのは2事業者のみで、それ以外の7事業者では特に取り組まれていない。
2事業者における取り組みの内容としては、「ビデオを用いた研修」(福岡市)、「研修介助に関する教育(乗組員のみ)」(新宮町)となっている。なお、福岡市ではバリアフリー化の教育・指導は、定期的な従業員教育の一部として行われている。
(3)高齢者・身障者等への運賃割引制度
第1種身体障害者については、9事業者とも「本人・介添人とも5割引」としている。福岡市では、さらに「市内居住者本人は10割引」としている。第2種身体障害者については、7事業者が「本人のみ5割引」としている。
その他の身障者割引制度としては、福岡市が療育手帳保持者の運賃割引を設けている。
高齢者に対しては、「70歳以上は100%市町村負担」(大島村)、「療育手帳保持者は割引」(福岡市)、「70歳以上の志摩町住民及び65歳以上の姫島地区住民は無料」(志摩町)など3市町村で運賃割引が行われている。
図4-1-7 高齢者・身障者等への運賃割引制度(n=9)
障害の種類 |
具体的な内容 |
事業者 |
身体障害者(1種) |
本人・介添人とも5割引 |
9事業者 |
市内居住者本人は10割引 |
福岡市 |
身体障害者(2種) |
本人のみ5割引 |
7事業者 |
身障者割引 |
療育手帳保持者は割引 |
福岡市 |
高齢者割引 |
70歳以上は100%市町村負担 |
大島村 |
療育手帳保持者は割引 |
福岡市 |
70歳以上の志摩町住民及び65歳以上の姫島地区住民は無料 |
志摩町 |
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