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(2)評価に使用する模擬レーダー波とその検証
 実際の評価実験に先立ち、レーダー波の模擬について検証を行った。
 今回の評価実験では、汎用のベクトルシグナルジェネレータを使用してレーダー波を模擬するが、次の点について検証する。
 
(1)以下の各種レーダー波が出力できるか。
・単純パルス波形
・パルス圧縮レーダー波形(チャープ波形)
・FM-CW波形(掃引波)
(2)(1)の3種波形の混合波が出力できるか。
 
 このうち、(1)については一般的な信号発生器でも出力することが可能だが、特に(2)の合成波形の出力については検証が必要である。そこで、実際に波形を出力させて、確認を行った。
 まず、各種レーダー波形を、それぞれ単独に発生させた状況を図5-10に示す。単純パルス波形、チャープ波形、FM-CW波形とも、問題なく出力されることが確認された。
 3種波形の混合を試みた結果を図5-11に示す。入力波形は、次の3種とした。
 
(1)単純パルス波形:1μsパルス幅
(2)パルス圧縮レーダー波形:20μs、10MHzチャープ波形
(3)FM-CW波形:1msec、2MHz掃引波
 
 同図より、3種の波形が合成して出力されていることが確認できた。なお、これらの波形の発生制御はコンピュータから行い、振幅、パルス幅、変調幅、タイミング、位相等は任意に設定可能である。
 以上により、遅延合成回路に入力する模擬レーダー波を任意に出力可能であることが確認された。
 
図5-10 各種レーダー波形の出力確認
(a)単純パルス波形の出力
 
(b)チャープ波形の出力
 
(c)FM-CW波形の出力
 
図5-11 各種レーダー波形の混合
 
 遅延合成処理によって理論通りに応答波形が出力されるか、先に示した理論計算に基づくシミュレーション結果と実測結果を対比して検証を行った。ここでは、理想的な信号が入力された場合について検討し、理論の妥当性を検証する。理想的な信号とは、具体的には以下の条件を満たすものである。
 
(1)レーダーの分解能=新マイクロ波標識の単位遅延時間 (0.1μs)
(2)レーダーの周波数=新マイクロ波標識の処理の中心周波数 (離調なし)
(3)単一の信号入力 (複数信号の合成・重畳なし)
 
 単純パルスレーダー波形を入力した場合の、新マイクロ波標識の出力を図5-12に示す。なお、煩雑さを避けるため、同図にはI/Q信号のうちI信号のみを示し、以降の図面も同様である。図の左側(A)(B)(C)は理論計算結果であり、図3-11と同一のものである。一方、図の右側の(a)(b)(c)が、計算結果に対応する実測結果である。(A)(a)は新マイクロ波標識への入力波形(=レーダー送信波)であり、実験結果の(a)においてはベクトルシグナルジェネレータでレーダー波が正しく模擬されていることを示している。(B)(b)は、新マイクロ波標識からの出力波形(=レーダーでの受信波)であり、入力が単純パルス波形であるため、応答符号が出力できていることがこの段階ですでに確認できる。(C)(c)は、レーダーで復調(検波)された後の表示波形であり、符号「K」が表示されることが確認できた。
 パルス圧縮レーダー波形を入力した場合が図5-13であり、左側(A)(B)(C)の理論計算結果は、図3-12と同一である。同図の通り、パルス圧縮レーダーに対しても正しく符号が表示可能であることが確認された。
 同様に、FM-CWレーダー波形を入力した場合が図5-14であり、理論計算結果は、図3-13と同一である。同図より、FM-CWレーダーに対しても正しく符号が表示される結果を得た。
 以上の結果より、計算結果と実測結果は極めて良く一致することがわかり、遅延合成方式に関する理論の妥当性が検証された。また、実際に応答符号を出力できることを実証した。
 
図5-12 単純パルスレーダーに対する応答波形
(A)入力波形(計算結果)
 
(a)入力波形(実測結果)
 
(B)出力波形(計算結果)
 
(b)出力波形(実測結果)
 
(C)復調波形(計算結果)
 
(c)模擬復調波形







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