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(3)基本特性
 前節の数式化を用いた、遅延合成方式による新マイクロ波標識の基本特性に関する計算シミュレーション例を示す。ここでは、理想的な条件における各レーダー方式に対する応答について示した。「理想的な条件」とは、具体的には以下の条件を言う。
 
1)レーダーの送信周波数と新マイクロ波標識の処理の中心周波数が一致している。(以下:「同調」という)
2)レーダーの距離分解能と新マイクロ波標識の処理単位遅延時間が一致している。
3)新マイクロ波標識のシステム内で、信号の飽和が発生していない。
 
 はじめに、パルスレーダーに対する応答の計算結果を図3-11に示す。レーダー送信波としては、0.1μsの単純パルスを想定し、生成符号は3μs長線、1μs短点、3μs長線で構成されるモールス符号「K」とした。同図(c)より、レーダー表示上、符号「K」に相当する長線、短点、長線の信号が生成できていることがわかる。なお、煩雑さを避けるため、グラフにはI/Q信号のうち、I信号成分のみを示す事とし、本報告書で扱う以降の図面も同様である。
 次に、パルス圧縮レーダーに対する応答の計算結果を図3-12に示す。レーダー送信波は、パルス幅10μs、掃引周波数幅10MHz(圧縮後のパルス幅0.1μs)のFMチャープ波を想定している。生成符号は「K」である。同図より、新マイクロ波標識からの送信波(b)は圧縮前のチャープ波形を遅延合成処理したものであるため符号は明らかではないが、レーダー表示上(レーダーによる圧縮処理後)の波形(c)は、長線、短点、長線の符号「K」となっている。
 最後に、FM-CWレーダーに対する応答の計算結果を図3-13に示す。レーダー送信波は、周波数掃引時間1ms、掃引周波数幅10MHz(処理後の距離分解能は0.1μsのパルスレーダーに相当)を想定している。同図より、レーダーで処理された後のレーダー表示波形(c)は符号「K」を生成している。
 以上のように、遅延合成方式のマイクロ波標識は、理想的な条件下ではあらゆるレーダー方式に対して所望の識別符号を表示させ得ることがシミュレーション上から明らかになった。
 
図3-11  単純パルスレーダーに対する応答波形
(a)  レーダーの送信波(新マイクロ波標識での受信波)
 
(b) 新マイクロ波標識の応答送信波(レーダーでの受信波)
 
(c)レーダーでの符号の表示
 
図3-12  パルス圧縮レーダーに対する応答波形
(a)  レーダーの送信波(新マイクロ波標識での受信波)
 
(b) 新マイクロ波標識の応答送信波(レーダーでの受信波)
 
(c)レーダーでの符号の表示
 
図3-13  FM-CWレーダーに対する応答波形
(a)  レーダーの送信波(新マイクロ波標識での受信波)
 
(b) 新マイクロ波標識の応答送信波(レーダーでの受信波)
 
(c)レーダーでの符号の表示







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