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2002/02/08 産経新聞夕刊
【イブニングマガジン】名門復活にかける熱海 熱海カジノ構想
 
◆カジノ船核に「日本のラスベガス」 宿泊客3倍増見込み“浮上”目指す
 熱海にカジノをつくり、日本のラスベガスを目指そう−。地元ではこんな構想が話題を呼んでいる。
 昨年九月、熱海の異業種の若手約十人が集まって、発足した「熱海カジノ誘致会議」。「何とか熱海を変えたいといろいろ考え、ひとつの案としてカジノの研究をはじめたんです」と同会会長である熱海聚楽ホテルの専務、森田金清さん(三三)は話す。
 海外にあるカジノの仕組みや法律、税収効果などを勉強する一方で、市議会に「カジノ法制化に関する意見書の採択を求める請願」を行い、十二月の本会議で合法化を求めた意見書が採択された。
 同会議が打ち出したのはその名も「熱海フローティングカジノプラン」。熱海駅から海岸まで橋を渡し、サンビーチ東側にカジノ船を停泊させる、というものだ。
 カジノを船の中につくるという発想は、管理のしやすさだけでなく、大地震が起きた場合、避難所にも救援物資の輸送にも活用できるから。また、熱海だけでなく伊東、下田などにも巡回でき、伊豆半島全体が潤うことも期待できるからだという。
 「まずカジノありきではなく、目指しているのはラスベガスのようなホテルあり、カジノあり、テーマパークありの総合的なエンターテインメント性のある街」と森田会長は力説する。
 「昭和三十年代に熱海は団体旅館を造り、やがて日本中に広がった。その時代が終わり、今度はカジノを全国に先駆けてつくり、新しい潮流をつくり出したいんですよ。全国の温泉地を見ても、大分県の湯布院など、一部を除いてはどこもひどい状態。温泉地復興の先駆けになれれば」
 石原慎太郎都知事は東京の臨海副都心、お台場を日本で最初のカジノ地域にする構想を発表。宮崎県議会でも昨年三月、カジノ合法化の請願を採択し、注目を集めた。いまやカジノは景気浮揚の切り札とされている感もある。
 「今の景気や失業率を考えれば、法律が変わるのもそう遠いことではないのでは。もしカジノ構想が実現すれば三百万人台にまで落ち込んだ熱海市内の宿泊者数も、一千万人まで伸ばすことができるかもしれない」と森田さんは期待を寄せる。
 カジノは賭博(とばく)だけに市民の中には反対する人たちもいそうだが、「不思議なことにPTAなども含めて、今のところ反対意見はないですね。やはり、九割以上の人が観光業に何らかの形で携わっているので、カジノぐらい大きなことを考えないと、と思っているのでは」と市民の声を代弁する。
 今後も同会議では、県や国へ働き掛けていくと同時に、熱海ならではのプランを練っていくという。さて、温泉地から一大娯楽都市へ、そして「世界の熱海」となる日は近いのだろうか。
 
 
 
 
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