地方自治体が開催する競輪事業の売り上げの一部を納める“上納金”をめぐり、春以降、各地で支払い拒否などが起きていた問題で、経済産業省は三日、競輪事業を統括する同省の外郭団体・日本自転車振興会に対し、自治体などが支払う交付金(上納金)の算定基準を見直し、来年度にも制度改正を行う方針を固めた。昭和三十年代に定められて以来、一開催(六日間)あたりの売り上げが六千万円以上だと上納金を義務付けられていたが、これを四倍前後の二億円強に引き上げる。
このほか、競技の民間委託や公営競技事務所長への民間人の登用など競争原理の導入▽ノミ行為への罰則強化−などを柱に今後、同省の産業構造審議会・競輪小委員会などで検討を重ねる。
算定基準の「売り上げ区分」は昭和三十年代に制定されて以来、物価変動にもかかわらず一度も引き上げられていなかった。平成三年に制度改正された地方競馬を参考に納付が必要な最低水準を引き上げる。
上納金制度をめぐっては、競輪事業の赤字を一般財源から補てんした埼玉県所沢市が今年二月、「赤字なのに税金で上納金を支払うのは、市民の理解が得られない」として約五千万円の支払いを拒否。振興会側が提訴も辞さない姿勢を見せ、対立が深まった。五月になって同市が支払いを決めたことで騒動は収まったものの、同じく売り上げ減に悩む千葉県松戸市が「所沢市を支援する会」を作り、全国の競輪開催自治体に呼びかけたところ、三十六の自治体が参加を表明するなど全国に“反乱”が広がっていた。
財政強化などを目的に競輪事業を行う地方自治体などは、統括団体の日本自転車振興会に売り上げの約3.7%を納める。自転車競技法で定められ、産業、体育振興などの公益事業に使われる。利益でなく売り上げにかかるため、景気低迷で赤字となった自治体などから制度改正を求める声が高まっていた。
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