1997/02/18 産経新聞朝刊
競輪 続く売上減少傾向 イメージアップ作戦効果なし 次は若い男性ターゲット
公営ギャンブルの中で、競輪の不振が目立っている。十七日までにまとまった昨年の売り上げをみると、中央競馬や競艇、オートレースが前年を上回り、地方競馬が回復傾向を示しているにもかかわらず、競輪は引き続き減少傾向を抜け出せていない。アトランタ五輪で銅メダルを獲得したり、女優のテレビCMでイメージアップ作戦で話題を呼んだりしたにもかかわらず、人気凋落(ちょうらく)に歯止めがかからなかった。真剣な人気ばん回策が迫られている。
五競技の主催団体などのまとめによると、平成八年の売上高は、中央競馬が三兆九千八百六十二億二千八百万円で史上最高を記録。競艇は一兆八千三百三十五億四千七百万円、オートレースは二千七百五億七千七百万円で、いずれも七年までの減少から増加に転じた。
これに対し、競輪は一兆五千七百五十七億四千七百万円、地方競馬は六千九百六十億一千八百万円で、七年に比べてそれぞれ約百億円、二十八億円減少した。
公営ギャンブルの経営は近年、バブル経済崩壊の影響で悪化。中央競馬だけはGIレースの増加もあって売り上げを伸ばしてきたが、ほかの競技は平成三年をピークに売上高、入場者数とも減少していた。今回のまとめでは、競艇、オートレースはやや回復、地方競馬も下げ止まりを示し、競輪だけが“一人負け”となってしまった。
この結果に、競輪競技を統括している日本自転車振興会(日自振)の小林博広報課長は「大変なこと」とショックを隠し切れない。
昨年はアトランタ五輪で、十文字貴信選手が自転車競技(千メートルタイムトライアル)の銅メダルを獲得。国民的ヒーローとなり、競輪人気を高めた。加えて、競輪のイメージアップ作戦を大々的に展開。女優の中村あずささんを起用したテレビCMで、若い女性にも競輪を広めようと躍起になった。年末には「ケイリン」が平成十二年(二〇〇〇年)のシドニー五輪の正式種目に決まる“追い風”もあった。それだけに、日自振は「相当なイメージアップ効果があった」と確信していた。
売り上げが減少した原因は、業界の形態の複雑さにあるとされている。業界全体を日自振が統括しているが、レースの開催権は地方自治体、競技運営は自転車競技会に分かれている。こうした複雑さから、レース開催の告知やPRの一本化が難しく、全体のイメージがよくなっても車券販売に結びつきにくいという。
このほか、施設改善の遅れ、場外車券売り場の少なさなどのマイナス要因も、もとをただせば業界の複雑さに由来している。日自振では「PRのターゲットを若い女性から若い男性に移すなど、具体的に売り上げを増やすための販売促進を展開していく」としている。
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