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2004/09/29 読売新聞朝刊
高崎競馬、今年度限り レース、12月最後 小寺知事表明=群馬
 
◆「収支改善の道、困難」
 経営難が続いていた高崎競馬について、小寺知事は二十八日、今年度限りでの廃止を正式に表明し、同競馬は約八十年の歴史の幕を閉じることになった。レースとしては、今年十二月三十一日の「高崎大賞典」開催日が最後となる予定だ。今後、県の経営姿勢を批判して存続を訴え続けてきた調教師や騎手ら関係者の補償や、広大な敷地を持つ競馬場の跡地利用などに焦点が移る。
 小寺知事は二十八日の県議会一般質問で、「社会経済が変化し、厳しい経営環境の中で関係者が収支改善に取り組んできたが、累積赤字が年間の発売額を超える非常に厳しい状態になっている」と述べた。その上で「累積赤字の拡大は県民の負担増に結びつき、競馬の継続は結局、県民の税金投入ということになる」と廃止の理由を説明した。
 運営主体の県競馬組合(管理者・小寺知事)が、宇都宮競馬との連携やファンサービスの拡充、場外発売の強化など発売額の増加策を実施してきたことを主張。「人件費や開催日数の削減など可能な限り合理化を行ってきたが、もはや主催者の経営努力も限界。構造的な問題がある」とした。
 同競馬場では二十八日、組合職員らが集められ、新木敬司事務局長が廃止について説明した。職員らの一部は解雇される方向だ。
 県農業局によると、廃止に伴う累積債務約51億円の処理については、競馬組合規約に基づき、県が78%、市が22%を分担する。
 県はこれまで、公営競馬を抱える道県と連携し、国に振興策を求めてきた。今年六月以降、農水省に中央競馬の国庫納付金3000億円の一部を地方支援に回すよう求めてきたが、受け入れられなかった。
 有識者らの検討懇談会は二〇〇三年四月にまとめた報告書で、「二年間経営改善のため最大限の努力を行っても、収支均衡の見通しが立たない場合、速やかに廃止を決断する必要がある」と提言。競馬組合を構成する高崎市も早期廃止を求め、県競馬組合議会も廃止で合意していた。
◆高崎市長「歓迎」
 高崎市の松浦幸雄市長は二十八日の市議会で、「高崎競馬廃止の決断を歓迎したい。しかし、競馬関係者への生活支援、累積赤字の処理、跡地利用の問題など課題も山積している。県と緊密な連携を図り、市の要望もご理解いただきながら、県競馬組合の構成団体としての責任を全うしたい」などと述べた。
◆「経営責任 どうする」 傍聴席の関係者ら
 県議会の傍聴席には、調教師と家族ら約四十人が、午前十時からの一般質問の答弁を見守った。
 知事が「廃止せざるを得ない」と表明した直後は、「なんで廃止なのか」「経営責任はどうするのか」などの声が上がった。
 調教師の高橋俊之さん(48)は「納得のいく説明がなかった。なぜ直接会って話せないのか」と言葉を荒らげた。
 小寺知事は議会終了後に記者会見し、「競馬ファンとして廃止は断腸の思いだった」と語り、県の経営責任については、「時代のすう勢で、いかんともしがたい。廃止を決めるのも責任だ」と述べた。
 加藤光治・農業担当理事は、調教師ら関係者に対し、「(廃止には)行政的な責任があり、できるだけの支援をする」として、一定期間の経済的な援助と、再就職のあっせんなどに努力していく姿勢を示した。
〈メモ〉
 中央競馬と地方競馬 日本中央競馬会(JRA)が主催する中央競馬に対し、地方競馬は県や市町村が運営。他の公営競技にはない二重構造で、いずれも競馬法の規制を受ける。地方競馬主催者は今年四月現在で十八あり、競馬場は二十四か所。所属の別なく競走馬や騎手が対戦する交流レースも盛んに行われている。
【高崎競馬の経緯】
1923年 高崎競馬場を設置
  24  勝馬投票を伴う初の競馬開催
  61  県、高崎など4市で一部事務組合を設立
  76  境町トレーニングセンター完成
  85  中央競馬の場外発売開始
  90  年間発売額ピークの245億円
  92  単年度収支が赤字転落、以後12年連続赤字に
 2001  競馬場リニューアル
  03  高崎競馬検討懇談会、「2年で収支均衡の見通しなければ、速やかに廃止を」と提言
 
 
 
 
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