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2001/02/24 毎日新聞夕刊
冬の時代・・・公営ギャンブル、巻き返す秘策は──「お客さん来て」あの手この手
 
◇レジャー多様化、大不況・・・冬の時代
◇新舟券を続々発売へ/ナイターでアピール/新幹線キップを提供−−「お客さん来て」あの手この手
 九州・山口の公営ギャンブルが軒並み苦境に立たされている。レジャーの多様化やファンの高齢化などが追い打ちをかけ、取り巻く環境は厳しくなる一方だ。自治体にとって貴重な財源となるはずの事業が赤字を抱え、大分県の中津競馬のように廃止を決めたところも。不況に強いといわれたギャンブルも“平成大不況”には勝てない様子。運営者はあの手この手の集客策で巻き返しに懸命だが・・・。
 大分県の中津競馬は累積赤字が今年度で21億6600万円にのぼる見通し。組合管理者の鈴木一郎中津市長は「先の見通しがない」と6月末廃止に踏み切った。同じ地方競馬の佐賀は今年度、9億3900万円の赤字が見込まれ、3年連続の単年度赤字になりそうだ。荒尾(熊本県)の売り上げは3年前と比べ40%減(92億円)の見込みだ。ギャンブル不況は競輪、競艇、オートレースにも。久留米、別府競輪など各地のギャンブル場の売上高はバブルが崩壊した90年代初めから半ばをピークに軒並み減少している。
 飯塚オート(福岡県)は年間売上高が1995年度から減少傾向で、99年度はピーク時の91年度より170億円近く落ち込んで255億3000万円に。実質収支は98年度から赤字に転落、一般会計への繰り入れができていない。山陽オート(山口県)は昨年から選手の賞金を8.5%カットして経費削減に懸命だ。
 徳山競艇(山口県)は99年度収益が過去最低の2000万円を記録。一般会計への繰入金が開所以来初めてゼロになった。佐賀県武雄市の武雄競輪も今年度、繰入金がゼロになる見込みだ。また、福岡市の福岡競艇は「入場者の減少に加え、不況で競艇に使う金が減った」。今年度の市の一般会計への繰入金はここ十数年で過去最低に。
 長引く不況でファンの財布のひもが固くなったうえ、若年層を引き付ける魅力が薄いため、かつては自治体の“ドル箱”だったギャンブル事業がお荷物になりかねない事態。主催者側も打開策に頭を痛めている。
 集客対策に券の購入方法などに工夫をみせるのは大村競艇(長崎県)や下関競艇(山口県)。大村は今年4月から連勝単式と連勝複式が両方買える同時発売を開始。下関は来年度から大村と共に高配当が見込める1〜3着を当てる3連勝方式を発売する予定。
 また、小倉などの2競輪場と1競艇場を持つ北九州市は昨年から小倉競輪でナイターを開始するなどギャンブルのだいご味をアピール。新たな客層を獲得するため長崎県の佐世保競輪や佐賀県の武雄競輪は「レディース教室」を開催。福岡県の芦屋町外二カ町競艇施行組合が運営する宮崎県高城町の場外舟券売り場は昨夏から地元民放テレビで若者が予想を競い合う深夜番組を始めた。徳山競艇は遠方からの客ほど高額をかける傾向があることに目をつけ、新幹線で来た客に帰りの乗車券を無料提供する変わり種のサービスを実施している。
 「スタンド改修や冷暖房設備の充実を図りたいが、金がかかり過ぎる。いろんな工夫をし、耐え忍ぶしかない」と野見山正勝・飯塚市公営競技事業部長。冬の時代はまだ続きそうだ。
 
 
 
 
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