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1992/01/23 毎日新聞夕刊
英国の「賭け会社」が上陸 胴元「なぜ民間はダメ」の疑問に警察は渋面
 
 「賭け(かけ)事ご法度」の日本に、本場英国からビジネスとしてギャンブルを扱う会社、ブックメーカーが“上陸”した。警察庁は「刑法のとばく罪に当たるのでは」と神経をとがらせるが、それと同じ時期、来春発足する日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)にトトカルチョを認めようという自民党の構想が表面化した。どちらも賭け事に変わりはない。競馬、競輪から宝くじまで、「一獲千金」のスリルと夢の土俵が広がる。そういえば、競馬場にギャルの姿がめっきり増えてきたっけ。
 「胴元が海外というのは新しい部分。実態と法解釈をよく調べないと・・・」。“日本上陸”を果たした英国の大手「マニング社」に、警察庁は頭を痛める。「賭けに関連する行為は国内であると考えられ、犯罪成立の可能性はある」(保安課)といい、警視庁も情報収集を始めた。しかし、日本では違法性があっても、本国では政府公認のビジネスだから話はややこしい。
 「日本とヨーロッパでは、ギャンブルに対する考え方が伝統的に違う」と板倉宏・日大教授(刑法)は話す。賭け事はそれぞれの国で独自に発展したが、ギャンブルをゲームとしてとらえる英国などに対し、日本は庶民から勤労意欲を奪うものという“お上の意向”や、胴元がやくざという例が多かったことで、伝統的に取り締まりが厳しかった。
 しかし、「全面禁止」というわけではない。公営ギャンブルの競馬や競輪は法律を作って認めている。軍馬育成のために始まった競馬は戦後、国のどん底の財政事情を救う目的で一九四八(昭和二十三)年に新競馬法が制定され、継続された。中央競馬では売り上げの一二・五%が国庫に入り、この四分の一は社会福祉、残りは畜産振興に使われる。
 民間はダメでも、国や地方自治体が胴元だと「公共福祉」を旗印に、ギャンブルが許されるわけだ。JRA(日本中央競馬会)の馬券なら合法だが、仮にマニング社が天皇賞で賭けをすると「ノミ行為の可能性がある」(警察庁)。
 一方、「プロサッカートトカルチョ立法」の動きは、公営ギャンブルの対象をサッカーにまで広げようというもの。Jリーグや監督官庁の文部省は「サッカー場の不足など、やるべきことはまだある。これを機会にサッカーがメジャーになり、人気が高まれば」と立法化に期待。ギャンブルのマイナスイメージを極力排し、「ファンに応援してもらえるような“スポーツくじ”を目指したい」という。
 だが、板倉教授は「日本が豊かになった今、お上が財政事情でギャンブルをやる理由はなくなりつつある。公営ギャンブルの対象が増えることには抵抗があるのでは」と指摘。競馬を管轄する農水省も「特定のスポーツのために金がいる、という理由だけでは立法は難しいだろう」(競馬監督課)とみる。
 タレントへのファン投票のノリで馬券を買う若い女性に見られるように、日本でもギャンブルに対する認識が変わり始めた。それだけに今回の二つのケースは、「国が胴元ならよし、民間はダメ」という状況に一石を投じるかもしれない。
◇「曙優勝」なら大穴30倍
 マニング社は日本に代理店「グローバル・ジャパン」(東京都渋谷区)を開設して、今月から会員募集を始めた。
 会員はグ社に入会金と年会費を支払って賭けの情報提供を受け、投票用紙を代理店に出す。賭け金はマ社の銀行口座に直接払い込み、当たった場合も直接受け取るシステムだ。
 「第一弾」は大相撲初場所。六日から十一日まで受け付けた。「優勝力士当て」は一口千円で、オッズは別表の通り。小錦に一口賭けて当たれば二・九倍の二千九百円になる。二十二日現在、優勝争いをしているのは三十倍の曙と二十倍の貴花田。
 賭けた人はさぞかし応援に力が入っているに違いない!?
(この記事には表「マニング社が発表した大相撲初場所の優勝力士予想のオッズ」があります)
 
 
 
 
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