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はじめに
 ハンセン病制圧という創始者の壮大な夢のため設立された財団法人笹川記念保健協力財団は、昨年(2004年5月4日)設立30周年を迎えました。それを記念して、講演会とささやかな感謝の会を同年10月22日に開催いたしました。
 
 記念講演会には、これまで財団の30年の活動にお力を貸してくださった方々――古くからの方も最近加わった方も――が大勢お集まりくださいました。当財団の湯浅洋常務理事が「世界のハンセン病対策と財団の貢献」について話し、日本財団理事長でWHOハンセン病制圧特別大使でもある笹川陽平氏は「私の考えるハンセン病制圧」という講演をされました。
 
 記念講演後、これらの講演をぜひ冊子に残してほしいとの声が多く寄せられ、冊子としてまとめることにいたしました。お二人の講演に加え、当日の日野原重明当財団会長のご挨拶、また、設立30周年を祝してWHO(世界保健機関)事務局長イ・ジョンウク(李鐘郁)博士から寄せられたメッセージ(会場では、ビデオメッセージとしてご紹介しました)も掲載しております。
 
 お読みいただくと、これまでの世界におけるハンセン病との闘いで私どもが何をめざしてきたかがおわかりいただけると思います。今後も、ハンセン病制圧に向けた活動はもとより、ハンセン病にかかわる偏見・差別をいかに払拭していくか、そして、回復者および家族の方々と共に生きる社会をいかに実現していくかを当財団の大きな課題として活動を進めてまいりたいと考えております。これからもご指導のほどお願い申し上げます。
 
財団法人 笹川記念保健協力財団
理事長 紀伊國献三
 
ごあいさつ
笹川記念保健協力財団会長
日野原重明
 
 みなさまよくいらっしゃいました。
 本日は、笹川記念保健協力財団の30周年の記念講演会にこのように多数の方々にご出席いただきましたことを、会長として心より感謝申し上げます。
 
 笹川記念保健協力財団は1974年(昭和49年)、地球上からハンセン病をなくしたいという願いを生涯持ちつづけておられました日本財団の笹川良一初代会長と、戦後間もなく日本ではじめてハンセン病の特効薬プロミンの合成に成功された東京大学の初代薬学部長石館守三博士との運命的な出会いがきっかけとなって設立された団体でございます。
 
 笹川良一先生は、ご自分では115歳まで生きたいといっておられましたが、1995年(平成7年)7月18日に96歳で亡くなられました。そして、そのちょうど1年後の同じ日に石館守三先生が95歳でお亡くなりになりましたが、今日ここにお二人がお見えになられたとすれば、それぞれ105歳と103歳になっておられます。
 当財団は設立以来、ハンセン病制圧を最大の目標として事業を展開してまいりました。この間、厚生労働省のご指導のもと、日本財団、WHOはじめ本日ご出席いただいております皆様方からの大きな励ましとご支援、ご協力をいただく中で、世界のハンセン病を取り巻く環境は大きく変わってまいりました。また、当財団はハンセン病対策のほかに、時代のニーズに呼応する形で、寄生虫症対策、日中医学奨学金制度、チェルノブイリ医療協力、ブルーリ潰瘍対策など、海外の保健福祉向上のための事業にも取り組んでまいりました。
 
 さて、当財団が誕生して30年がまたたく間に過ぎました。当財団が発足する1年前に、財団法人ライフ・プランニング・センターが笹川良一先生をはじめとするご後援のもとに誕生し、私が理事長となりました。その財団発足の記念講演会の当日、笹川良一先生、そして現日本財団理事長の笹川陽平先生、そして石館先生と現理事長の紀伊國献三先生とで歓談していたときに、海外の医療協力についての関心に話が及びました。石館先生は1960年に発足した日本キリスト教海外医療協力会ですでにネパールやインドネシアでの医療協力を展開しておられ、私もその世話役代表をやっておりましたが、笹川良一先生の率いられる日本財団でもそのような事業をやっておられたということもあり、笹川先生はライフ・プランニング・センターでそれらの事業を引き継いでやってもらえないかということを申されました。しかし、ライフ・プランニング・センターの設立の趣旨は、医療関係者および一般の人々を通して、日本の医療の革新のために貢献したいということでありましたから、海外への医療協力を対象にするには荷が勝ちすぎるということから、それでは私たちの長年のリーダー的存在で同志でもある石館先生が理事長として、もうひとつ海外医療協力を柱とした財団をつくってはどうかということになり、1年後の1974年に当財団が誕生したのであります。
 
 当財団では、先に申しましたようにさまざまの事業を展開してまいりましたが、何といっても財団発足当時からの使命はハンセン病の制圧ということでありましたから、多くの予算と人員をこの事業に投入してきました。
 本日フランスから来日された中嶋宏先生は長年WHOの事務局長として当財団をご支援くださいました。また、本日ご参加いただいた皆様はじめ、国内外の大勢の方々から多大なお力もお寄せいただきました。そして、紀伊國献三理事長、湯浅洋常務理事、山口和子常勤理事はじめ財団職員の働きも事業遂行には大きく寄与しております。
 
 日本財団の笹川陽平理事長は、笹川良一先生が始められたこの事業を完成するのがご自分の使命であるとお考えになられたことから、ご自身の時間と精力とを最大限度に投入して活動してこられました。その使命感とその実績から、WHOは笹川陽平氏をWHOハンセン病制圧特別大使として委嘱し、世界のハンセン病制圧のための活躍を期待されています。本日(2004年10月22日)、笹川陽平理事長は、読売新聞が11年前にスタートさせた「読売国際協力賞」を受賞されました。この席に笹川良一先生と石館守三先生がおられましたら、どんなにお喜びになられたことでしょう。
 
 当財団の事業の仕上げには、なお一段とアクセルをかけなければならないと思います。ご参会いただきました皆様には、本日はそのアクセルをかけるための発足の会というように理解していただきたいと思います。今日はそういう意味で、過去の30年間に勝り、最後のゴールに向かって一層の気迫が出せるように、将来に向かって気持ちをあわせてお互いに励ましあうためのものとしてとらえていただければ幸いと思います。
 ありがとうございました。







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