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コラム
場間場外発売制度の元になった特別発売
 
 場間場外発売は、今でこそあたりまえのように行われ、広域発売のなかでも欠くことのできない重要な発売方法の一つとなっているが、昭和60年までは、モーターボート競走法施行規則第8条によって、競走場外での舟券の発売が禁止されていたため、他の競艇場での発売ができなかった。
 元々競艇は、レースを直接観戦して楽しむ競技であると考えられ、多くのお客様に競艇場に来場してもらうことを前提に運営され、発展してきた競技であった。
 しかし一方では、遠隔地で開催されているビッグレースの舟券を買いたいという多くのお客様の要望に応え、場外発売が禁止されていても何とかして他場での発売ができないものかということで、考え出されたのが昭和57年4月に施行規則第8条を改正して生まれた「特別発売」の制度であった。
 当時、鳳凰賞(総理大臣杯)、全日本選手権、笹川賞、モーターボート記念の4競走が4大特別競走と呼ばれていたが、「特別発売」では、運輸大臣の承認を得て、これらの競走の準優勝戦3レースと優勝戦を他の競艇場において開催日に限って発売すること、いわゆる「併売」ができるようになった。
 
業界初の特別発売
(尼崎競艇場 昭和57年8月)
 
 しかしながら、競艇業界では今までにない発売方法であり、これを実行するためには、さまざまな問題を処理し、発売を行うための準備を整えなければならなかった。
 運輸省とは発売方法その他大臣承認に必要な内容を細部まで協議し、承認申請書類の様式を決め、自治省とは施行者間の契約のあり方について民法による委任契約とするか、地方自治法による委託契約とするか協議を重ね、さらには発売を予定している本場(4大特別競走の開催競艇場)と他場(特別発売を行う競艇場)の施行者との詳細な打ち合わせ等々当時の事務局職員は、これを実行するための準備に追われた。
 本場、他場間での発売票数、払戻金額、返還金額、競技情報等の連絡は、現在のようにオンライン化されていないため、開発されて間もない日本デックス社製のファクシミリを使ったが、一枚の帳票を送信するのに3分はかかった。
 本場では、受信した帳票の発売票数をもって、集計センターにおいて組番ごとに手入力によって集計した。
 
特別発売 投票所風景
(若松競艇場 昭和57年8月)
 
 当然、発売票数の未集計や誤集計が生じないよう、他場からの発売票数の送信と本場での集計は、慎重に行われたが、本場での集計に十分な時間的余裕が求められたことから、他場での発売締切時間は、本場発走時刻の1時間前に行われた。
 また、レースの実況放送は、一般電話回線を使用して音声だけが他場に送られた。
 こうして業界初の特別発売が、昭和57年8月、第28回モーターボート記念競走において本場・蒲郡(蒲郡市)、他場・尼崎(伊丹市)、若松(北九州市)によって行われ、売上金額は、尼崎60,957,000円、若松23,074,200円、合計84,031,200円であった。







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