2004/09/27 産経新聞朝刊
【主張】常任理事国入り 内外のハードルの克服を
小泉純一郎首相が国連総会の一般演説で安全保障理事会改革の必要性と日本の安保理常任理事国入りの決意を示した。これまでに演説した各国代表も七割以上が国連改革に言及するなど、来年の国連創設六十周年に向け、国連改革論議は、かつてなく高まってきた。
そうした中で、日本が乗り越えなければならないいくつかのハードルも見えてきた。
首相が日本を代表して決意を表明した以上、今後は、それら内外のハードルを克服し、条件を整える作業に全力をあげることが肝要である。
第一のハードルは、米国のより積極的な支持を得ることだ。ブッシュ大統領は、日本の常任理事国入り支持の方針に変わりはないとしながら、国連改革には消極的姿勢を見せた。
その背後には、米国が抱く国連への不信感と、憲法で海外での武力行使ができない日本が常任理事国として他の加盟国に武力行使を促す立場になるのは偽善だとする米議会の存在がある。小泉首相は「現憲法のままでも常任理事国入りは可能だ」というが、米議会をいかに説得するかが課題だ。
憲法論議をより積極的に進めるとともに、軍事的貢献に限界はあるが、非核保有国の大国、日本が参加することの意味を説くのも一法だろう。
第二のハードルは中国、韓国など近隣国の消極姿勢だ。とりわけ拒否権をもつ常任理事国五カ国の一員、中国への対応は軽視できない。
中国外務省の孔泉報道官は先に、日本の常任理事国入りのためには「歴史問題ではっきりとした認識をもたなくてはならない」と述べた。
この発言自体は、国連改革を利用して中国が考える「正しい歴史認識」を日本に迫ろうとしているともとれる不当なものだが、今後は、近隣諸国に日本の参加が地域の安定、利益にもつながることを政治家、外交官らが総力をあげて説いていく必要がある。
アナン国連事務総長の諮問機関「ハイレベル委員会」(緒方貞子氏ら十六人で構成)が十二月に国連改革案の報告をまとめるが、拒否権がなく任期五年(再任可)の「準常任理事国」の創設案も検討されているという。日本としては、あくまで恒久的な常任理事国の拡大を主張すべきだろう。
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