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2004/08/23 産経新聞朝刊
【主張】国連改革 国内の問題解決が先決だ
 
 国連安全保障理事会改革と日本の安保理常任理事国入りの議論が高まってきた。外務省は今月初め、「国連強化対策本部」(本部長・川口順子外相)を設置し、近く担当の大使も任命する。
 これまで常任理事国入り問題には慎重だった小泉純一郎首相が九月下旬の国連総会に出席し、どのように訴えるかにも関心が集まっている。
 国連を二十一世紀の国際情勢に適応できる形に改革し、日本が国力、貢献度にふさわしい形で、常任理事国入りする。この目標は大事だ。
 しかし、それにはまず、国内で解決すべき重大問題がある。
 憲法九条の「国際紛争を解決する手段としての武力行使の放棄」と、集団的自衛権は「保持しているが行使できない」という憲法の政府解釈の制約をどう解決するかという問題だ。
 常任理事国はときに、加盟国に軍事行動を求めなければならない立場に立ち、集団的自衛権の行使を必要とすることもあるからだ。
 米政府は日本の常任理事国入りを支持しているが、米上院は一九九四年一月、「日独の常任理事国入りは国連の軍事行動に参加できるようになるまでは認めるべきではない」とする決議を全会一致で採択した。
 軍事行動の義務も果たさず、集団的自衛権も行使できず、権限だけ持つ常任理事国になるのは無責任で、偽善でもあるという考えからだった。
 パウエル米国務長官やアーミテージ同副長官が最近相次いで、日本の憲法九条や集団的自衛権の問題に言及したのも、こうした背景からだ。
 ドイツはその後、基本法の解釈で国外の軍事行動を可能にした。しかし日本は、憲法九条はもとより、首相の決断で変更できる集団的自衛権の解釈も今に至るまで変えていない。
 現状のままでも常任理事国入りは可能だし、非核保有国が加わることで安保理の正統性も高まる−という議論もある。しかし、米議会からの偽善、無責任の批判をどう説得できるか。
 日本に根強い国連が正義の殿堂であるかのような“国連幻想”をどう克服するかも重要な問題だ。
 来年は国連創設六十周年、再来年は日本の国連加盟五十周年に当たる。今こそ腰を据えた議論が必要である。
 
 
 
 
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