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1993/09/15 産経新聞朝刊
【国連の選択】(6)安保理改革 少数国の「特権」に疑問
 
 ニューヨークの国連本部では二十一日から、第四十八回通常総会が開かれる。その最大の焦点は安全保障理事会の改革問題である。
 昨年十二月の総会決議はガリ事務総長に対し「安保理の構成」に関する各国の意見を集約し、今総会に報告するよう求めている。「安保理の構成」とは平たくいえば、理事国を何カ国にするかということだ。
 国連が発足した一九四五年当時の国連加盟国は五十一カ国。安保理の理事国は第二次大戦の戦勝国の米、英、仏、ソ連(ロシア)、中国の五常任理事国と二年任期で交代する非常任理事国六カ国の計十一カ国だった。
 その後、加盟国は増加を続け、現在は発足当時の三・六倍の百八十四カ国。安保理の方は六六年に非常任理事国を十カ国に増やして、常任、非常任あわせて十五カ国となったものの、四五年当時は加盟国の二〇%だった安保理の理事国が、いまは九%にも満たない。
 加盟国数に占める理事国数の比率が低くなっているのに、「拒否権」という特別権限を持つ常任理事国の地位は変わらないため、その特権は相対的に大きくなった。「これでは世界の意見は正しく反映されない」と途上国が声を上げたのが安保理改革のそもそもの出発点だった。
▼理事国拡大の流れ
 総会に報告される主要加盟国の意見はほぼ出そろっている。
 日本は「安保理においてなし得る限りの責任を果たす用意がある」と常任理事国入りに意欲を示し、ドイツも名乗りを上げた。
 米国は安保理拡大と日独両国の常任理事国入りには賛成したが、安保理の効率を損なわないよう全体の数は二十カ国以内に抑えるべきだとしている。
 米国以外の常任理事国では、フランスが拡大に前向きの見解を示し、イギリス、ロシア、中国は消極的な意見だった。しかし、憎まれ役になってまで安保理改革の流れに逆らうほどの強い姿勢は見られない。
 途上国は発言力の確保につながる理事国の拡大には賛成である。とくに各地域の地域大国は「あわよくば」という思惑もあり、常任理事国の大幅拡大を求めている。ナイジェリアは三十一カ国、インドは「常任十−十一カ国、非常任十二−十四カ国」といった具合である。
 日本の常任理事国入りに関しては明確な不支持はない。「日本がプールの縁にしがみついて入りたくないというなら別だが、流れはもうできている」(国連外交筋)との見方もある。むしろ、問題は安保理改革全体の枠組みが作れるかどうかで、それができずに日本だけが常任理事国になるというシナリオは国連のどこを探してもない。
▼来年に結論目指す
 南米の地域大国であるブラジルは「安保理改革はパンドラの箱だという意見があるが、われわれはそれには同調しない」としている。ギリシャ神話のパンドラの箱と同じで、安保理改革の議論はフタを開けたら最後、収拾がつかなくなるといった見方は以前からある。ブラジルがそれをけん制するのは議論が紛糾して結局は何も決まらないといった結果を恐れるからだ。
 しかし、インドが常任理事国を望めば同じアジアのパキスタンやインドネシアは黙っていないだろうし、ブラジルが常任理事国入りに動くのをアルゼンチンやチリが静観するとも思えない。さらに、アフリカではナイジェリアなのかエジプトなのかといった調子で、途上国が常任理事国にこだわれば、なかなか議論はまとまらない。
 今年はある程度、パンドラの箱を開けたようになるのを見越して来年春の特別総会か秋の通常総会で結論を出し、創立五十周年の九五年に間に合わせようというのが、国連で考えられている最も早い安保理改革のシナリオだ。
 だが、いまは各国が日本に好意的だとしても、こうした議論の過程で黙って常任理事国が転がり込むのを待つ姿勢をとるなら、日本の「意志」に対する疑念が生じかねない。
 冷戦が終わり、世界の課題は東西の対立の管理から途上国と先進国との南北対立の解消に移行している。そうした変化の中で日本は本当に常任理事国になりたいのかどうか。なりたいのなら、それはどうしてなのか。加盟国はその明確な意思表示を待っている。
(ニューヨーク 宮田一雄)=おわり
 
 
 
 
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