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1993/06/10 産経新聞夕刊
国連のムダ 機構改革求め米大使列挙
 
 【ニューヨーク十日=宮田一雄】国連の改革について米国のオルブライト大使はニューヨーク市内で講演を行い、「日本とドイツは安全保障理事会の常任理事国になるべきだ」と語り、米国が今月末までに安保理改革についての詳細な報告をまとめてガリ事務総長に提出する用意のあることを明らかにした。また、同大使は現在の国連事務局を「象のように巨大化した官僚機構」と批判し、ガリ事務総長が進めようとしている機構改革に米国が協力する意向も示した。
 オルブライト大使の講演は八日夜、「国連からの視点」と題しニューヨーク・ヒルトン・ホテルで行われた。この中で同大使は安保理について「新たな現実に適応し、新たな責任を果たさなければならない」と語り、改革の必要性を強調した。そして、「前政権は安保理の拡大に反対してきたが、クリントン政権は、それとは対照的に、日本、ドイツ両国は常任理事国のメンバーになるべきだと考えている」と述べた。
 また、「検討する際には安保理が獲得した有効性を損なうことのないよう注意しなければならない」としたうえで「ガリ事務総長から求められた安保理拡大に関する見解について、今月末に詳細な回答を準備できるだろう」と語った。
 国連は昨年十二月、総会で、ガリ事務総長に対し(1)安保理の構成に関し各国に見解の提出を求める(2)それをもとに事務総長報告書を次回総会(今年秋)に提出する−と要請する決議を採択した。米国の「詳細な回答」はこの決議に基づくガリ事務総長に対する見解報告になる。
 国連に対し多額の拠出金を負担している日本にとって米国の援護は常任理事国入りへの大きな前進になるが、ドイツとの関係もあって英、仏が常任理事国増員には消極的なことや、人口の多いインド、ブラジル、ナイジェリアなどの常任理事国入りを求める声が途上国間で強いことなど、問題点も多く残されている。
 オルブライト大使の講演はまた、国連の通常予算の二五%を負担する米国の視点から国連改革に言及し、米ソ両国はじめ各国が四十年間にわたって国連をわき役と考えて、無視してきたことが官僚的体制を作り上げてしまったと指摘した。そして、ガリ事務総長を「象のように巨大な官僚組織を刺激し行動を起こさせる調教師」と評し、「私はアメリカの率直さと責任感を提供することで国連の調教師を助けたい」と語った。
 そのうえで、次のような「国連のムダ」の例をあげている。まず通訳。国連で三時間の会議を行い、それに国連の六つの公式言語の通訳をつけると費用は約五千ドルになる。今年は、こうした会議が一万二千回以上ある可能性があるので、合計は年間六千万ドルになる。
 文書。年間何千万ページにも及ぶ文書が発行され、読まれないままのものも多い。読まれないのももっともな場合もあり、例えば八六年の人権年鑑が今年初めに発行されている。重要書類が解読困難なこともしばしばある。
 チェルノブイリ報告書。国連は九一年に二百五十万ドルをチェルノブイリ原発の事故の調査に費やし、そのために五人が採用された。しかし、報告書はいまだに出ておらず、いまや国連は「なぜ報告書は出されなかったか」を説明する報告書を書くためにもう二百五十万ドルが必要だ。
 
 
 
 
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