2001/01/25 読売新聞朝刊
日本の国連分担金引き下げ 進まぬ常任理入り 負担と地位に落差(解説)
日本の国連分担金が二〇〇一年から引き下げられるが、安保理常任理事国入りへの道は険しく、日本の不満は解消されないままだ。
(政治部・会田一臣)
来日中の国連のアナン事務総長は二十三日、森首相との会談で、「国連に対する日本の貢献を感謝している」と述べた。財政難にあえぐ国連にとって、米国に次ぐ巨額の分担金を引き受けている日本の協力が不可欠だからだ。
国連は昨年末、国連予算(二〇〇一年分は約十億五千万ドル)に占める加盟国の分担率について、三年に一度の見直しを行った。その結果、日本の分担率は二十三年ぶりに引き下げられ、二〇〇一年分の分担率は、前年分より約1ポイント低い19.629%(約二億六百万ドル)となった。
政府はこれまで一貫して国連中心外交を唱え、分担金拠出にも前向きに応じてきたが、国連改革の一つの柱である財政効率化が不十分なことに強く反発し、二〇〇一年から三年間の分担率について、日本として初めて引き下げを要求した結果だ。
政府は昨年末の交渉で、「分担率の算定方式を変更し、日本の分担率を17%に引き下げることを要求する。最低でも20%以下にする」(外務省関係者)との姿勢で交渉に臨んだ。
国連での交渉が難航していた先月十一日には、外務省の川島裕事務次官が記者会見で、「日本の負担率が今以上に上昇することは受け入れられない」と強調した。
政府が引き下げにこだわったのは、厳しい財政状況の中での巨額負担への国民の理解を得る必要があるほか、国連安全保障理事会の常任理事国入りが一向に進まないことも背景にある。さらに、分担金を滞納する国も多く、累積滞納額が八億千六百万ドルにも達する実情への不満も大きい。
日本の分担率の見直しを求める声は、自民党などからも上がっていた。昨年八月末の自民党外交関係合同会議では、外務省幹部を前に、「米国も引き下げを求めているのだから、『日本も15%以上は出せない』と強く主張すべきだ」と強硬な意見が飛び出したほどだった。
分担率見直しを行った国連第五委員会(行政・予算)で焦点となったのは、算定方式をめぐる議論だった。どの時期の国民総生産(GNP)をもとに算出するかによって各加盟国の分担率は大きく変動するからだ。経済成長している途上国は過去六年のGNPの平均をベースにすべきだと主張するのに対し、先進諸国は三年間の平均を主張し、なかなか折り合わなかった。
交渉期限ぎりぎりで、日本の分担率引き下げも決まったが、外務省の交渉担当者は「分担率引き下げが実現し、公平な分担に一歩近づけたが、まだまだ不十分だ」と語る。
25%から22%に引き下げられた米国との差は約4.4%から約2.4%に縮まったほか、英、仏、露、中の常任理事国四か国の合計(約14.8%)を依然大幅に上回っている実情は変わっていないからだ。
横田洋三・東大教授(国際法)は、「国連での意思決定は、安保理常任理事国の意向が大きく影響するが、米国を除く四か国の常任理事国はそれに見合った分担金を払っていない。その一方で、常任理事国でない日本が約二割も負担をしているのはおかしい」と指摘している。
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