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2004/12/01 毎日新聞夕刊
国連改革案:安保理拡大、日本の常任理入り後押し−−2案併記、曲折も
◇各国の利害入り組む
 【ニューヨーク高橋弘司】アナン国連事務総長が国連改革に関する提言を託した「ハイレベル委員会」(有識者諮問委員会、16人)が30日、安全保障理事会を24カ国に拡大する改革案を明らかにしたことで、安保理改革論議が今後、一層熱を帯びる見通しとなった。報告書は名指しこそしないものの、日本の常任理事国入りを事実上、推薦する内容になっており、日本にとっては一定の前進だ。だが、拡大手法についてはハイレベル委メンバーの有識者の間でも意見が対立、2案併記となったとされ、実現までには難問山積といえそうだ。
 報告書は安保理改革の原則について「財政的、軍事的、外交的に国連に貢献している国々が関与すべきだ」と指摘、特に国連分担金支払いでの貢献や国連平和維持活動(PKO)などへの要員派遣を挙げている。これは国連加盟国中、米国に次いで第2位の約19.5%にあたる分担金を担う日本にとって、常任理事国入りへの大きな“後押し”だ。
 報告書に明記された「常任理事国6カ国拡大案」と「準常任理事国8カ国新設案」のうち、日本は「選挙によらず、現行の5常任理事国と同等の恒常的立場を求める」(日本外交筋)との方針に基づき、「常任理事国拡大案を支持する」(原口幸市・国連大使)方針だ。その意味では、報告書が「いかなる改革案の下でも、拒否権拡大はすべきでない」とした点は日本の希望にそぐわない。
 だが、安保理拡大実現に不可欠な国連憲章改正には「国連総会構成国の3分の2の多数で採択された上で、5常任理事国を含む加盟国の3分の2が批准する」必要がある。
 日本はドイツ、インド、ブラジルという常任理事国有力候補国とともに、来年前半にも憲章改正に向けた共同決議案を総会に提出する見通しで、より多くの加盟国の支持獲得に向けて、拒否権をあきらめるか、発展途上国を中心に批判が強い「拒否権」にこだわるかの選択を迫られる。
 ハイレベル委のアナン委員長(元タイ首相)は1年がかりで計6回議論した経緯に触れ、「改革方法について意見が分かれた」と述べている。
 常任理事国よりも権限の弱い準常任理事国の新設案については、「ブラジル、インドなどの出身委員から強い反対意見が出て、両案併記にせざるを得なかった」(国連外交筋)とされる。個人の立場で議論に参加した委員だが、実際には利害関係国の強い圧力があったようだ。
 国連改革などのテーマを扱うため、来年9月の国連総会に併せて開かれる首脳会議に向け、関係各国の外交駆け引きは今後、しれつを極めるとみられる。ハイレベル委内での意見対立は、その「予兆」といえそうだ。
◇日本政府、「増設」明記を歓迎−−外交攻勢さらに強化
 安保理常任理事国の拡大を盛り込んだ「ハイレベル委員会」の報告書について、日本政府は「日本の常任理事国入りに向けて大きなステップとなる」(外務省幹部)として歓迎している。ただ、6カ国の新常任理事国枠をどの国に割り当てるかという各論に入れば、各国の思惑がぶつかり合うのは必至なだけに、日本は今後、日本への支持拡大に向けて外交攻勢を強める方針だ。
 町村信孝外相は1日午前、報告書について「常任理事国、非常任理事国を拡大する案になっており、歓迎したい」と記者団に語った。新常任理事国に拒否権が付与されない点については「国連改革全体を成立させることがまず基本だ」と述べるにとどめた。
 細田博之官房長官も1日午前の記者会見で「旧敵国条項」の削除が報告書に明記されたことを挙げて「非常に望ましい」と語った。二つの改革案が併記されたことについては「一長一短あるので、ここで言うことは差し控えたい」と評価を避けた。
 報告書は常任理事国を6カ国増やす案と、準常任理事国を8カ国新設する案の両論併記になっているが、今年夏ごろまでは準常任理事国の新設案が有力だった。
 これに危機感を覚えた日本は、ハイレベル委員会の委員15人全員と、委員を送り出している各国政府に対して、常任理事国を増やす案にすべきだと巻き返しを開始。「各国の駐在大使を総動員した」という力の入れようで、外務省幹部によると、日本の働きかけが功を奏して両論併記になったという。
 ただ、今後の道のりは平たんではない。日本は新常任理事国候補として有力なドイツ、インド、ブラジルの3カ国と連携していく方針だが、日本には北朝鮮が、ドイツにはイタリア、インドにはパキスタン、ブラジルにはメキシコがそれぞれ反対している。さらに現常任理事国の中国が日本の常任理入りへの態度を明確にしていない。
【高塚保】
 
 
 
 
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