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1998/10/17 産経新聞朝刊
【斜断機】日本共産党の“変身”
 
 いささか旧聞に属することながら、九月二十四、二十五両日の日本共産党第三回中央委員会総会は、従来にない“含み”があって、各方面から注目を集めたものだ。一つには討論の一部を報道陣に公開して、同党につきまとう閉鎖的イメージを脱却しようとしたこと、それ以上に驚かされたのはなんといっても当日発表された当面の運動方針である。
 すなわち共産党参加の非自民「暫定政権」ができた暁には、これまでの「日米安保条約廃棄」を凍結し(ということは安保条約を認めた上で)、さらに天皇制まで容認するというのだ。
 少し解説するなら、もともと共産党の政権獲得戦略は、「民族民主統一戦線政権」を経て「共産党単独政権」に至るという“二段階革命論”だった。それが七〇年代前半の躍進時代には、その前段階としてソフトな「民主連合政権」構想を打ち出し、今回はそのまた前段階のさらにソフトな「暫定政権」を新たに標榜したということになる。
 その込み入った政権構想にはこれ以上立ち入らないが、ただ関心をそそられるのは「天皇制の容認」はどの政権段階までのことか、という一点である。要するに「当面の我が党の行動綱領には君主制の廃止はない」(不破委員長発言)とはいっても、いつの時点で「君主制を廃止し、反動的国家機構を根本的に変革」(党綱領)に劇的に転じるのか、あらかじめ明確にしておいてもらいたい。
 なにしろかつての躍進時代に「国民の信仰として、一種の天皇宗があったとしても、これは信仰の自由で、それを一々干渉する必要はない」と“鷹揚な”姿勢を示したものの、新左翼から痛烈にかみつかれてか、いつの間にかこの発言が消えてしまった“前科”があるからだ。
 共産党がその“変身”を国民に訴えたいのなら、まず最低限やらねばならないことがある。ほかでもない、天皇陛下がご臨席になってお言葉を述べられることに反発し、ボイコットし続けて久しい国会の開会式に出席することである。
(穿)
 
 
 
 
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