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1997/09/27 産経新聞朝刊
【プリズム】「日の丸」「君が代」は国旗、国歌ではない また広島で“問題教育”
 
 日の丸を敵視し、君が代の歌詞にクレームをつけた元教育長名の文書が明るみに出た広島県内では、福山市の学校を中心に、「日の丸は国旗ではない」「君が代も国歌ではない」とする人権学習指導案など、学習指導要領逸脱とみられる事例も次々と読者から寄せられている。二十九日には、同県議会で石橋良三議員(自民)がこの問題を取り上げ、追及する。(教科書問題取材班)
 問題の人権学習指導案は、福山市立A中学の一年生を対象にしたもの。
 指導の「ねらい」として「日の丸・君が代が、現在学校の入学式、卒業式に強制されている現実を知らせる。日の丸・君が代の歴史を簡単に学習する中で、日の丸は国旗ではないし、君が代も国歌ではないことを知らせ、日の丸・君が代の強制に対してどう思うか、考えを交流しあう」としている。
 さらに、日の丸・君が代の歴史を教える際には「侵略のしるしになったり、天皇制の強化につながってきたことに触れる」とし、生徒に日の丸・君が代への反感を持たせるような内容となっている。
 また、同市立B中学で今年二月、三年生対象の人権学習指導案として学年会に提出された文書には、「反天皇制学習」という表現があった。この表現は同会に出席した教師の一部が「公教育にふさわしくない」と反対したことで指導案からは消されたが、この教師によれば「平成四年度から同じ内容の教育が行われていた」という。
 こうした指導案について、福山市の池口義人教育長は「こうした問題は教育的課題として解決していきたい。実際の授業内容については現在、精査中だ。もし、学習指導要領の範囲を逸脱した教育内容があるとすれば、適正な指導をしていく」と話している。
 
 福山市で開かれた九月定例市議会では、池ノ内幸徳議員(誠友会)、徳山威雄議員(新政クラブ)、新谷勇議員(同)が相次いでこの問題を取り上げた。
 徳山議員が「日の丸・君が代について偏った事実だけを伝えるのは、偏向教育ではないか。教育委員会がそれを認めているのでは困る」とただしたところ、池口教育長は「そういう事実があるとすれば、是正しなければならない」と答弁したという。
 
【広島県の国旗・国歌問題】
 同県教育委員会が平成四年二月、当時の菅川健二・県教育長名で、入学・卒業式の国旗(日の丸)掲揚、国歌(君が代)斉唱にブレーキをかけるような文書を同県高等学校教職員組合に提示していた問題。
 文書は「菅川確認書」「二・二八文書」と呼ばれ、君が代が国民の十分なコンセンサスを得られていないこと、日の丸が天皇制の補強や侵略、植民地支配に援用されたことなどが教育内容として補完されなければ君が代斉唱や日の丸掲揚はできない−という趣旨。
 同文書は小中学校の教育現場にも浸透しており、同県の国旗掲揚・国歌斉唱率の低さの一因となっている。
◆読者から告発相次ぐ
 生徒や保護者からも、指導要領を逸脱した授業の実態を告発する声が相次いでいる。
 福山市に住む花田昇崇(のりたか)さん(一七)=高校二年生=は「自分が卒業した中学校でも国旗の掲揚はしなかった。国歌も、音楽教科書の最後を飾っている曲という認識しかなかった。日本の戦争は侵略で悪だったという教育を小学生のころから受けており、自分の友人もみんな、それを信じ込まされてきた」とこれまでの教育に疑問を投げかけ、「国旗掲揚、国歌斉唱は、海外の国々では常識だということを、最近自分で本を読んで知った。そうした国際的な常識が、テレビなどマスコミではほとんど伝えられていない。友人に自分の考えを話しても、このことについて考えている人は少ない」と話す。
 同市の会社役員(四九)は、「息子が通っている中学で昨年十二月に配られた学年通信には、『天皇制は国民主権になじまない。天皇誕生日を機会にこの問題を考えよう』という趣旨のことが書かれていた。教師が個人的な政治信条を持つのは自由だが、それを公教育の場で押しつけるのはおかしい」と指摘し、商社マンとして海外で十年以上暮らした経験から、「海外では国旗掲揚は当然という感覚。国旗・国歌に“アレルギー反応”を示す教員たちは、感覚がずれているとしか思えない」と話した。
 
 
 
 
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