2004/05/03 読売新聞朝刊
読売新聞社提言・皇位継承論議 合意形成へ、幅広い観点から
これからの日本にふさわしい象徴天皇制の姿を考える中で、皇位継承のあり方を論議するよう提言したが、その際には、長い歴史や伝統、文化のとらえ方、国民意識の動向などを踏まえ、幅広い観点から議論を進め、国民の合意を形成していくことが必要だ。
皇位継承については、憲法第二条で、「皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する」とし、これを受ける形で、皇室典範第一条で、「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と規定している。
現行憲法で日本国及び国民統合の象徴とされた天皇は、敬愛と親しみの対象として国民に受け入れられ、象徴天皇制は定着している。
その中にあって、読売新聞が、皇位継承問題で提言するのは、現行憲法が制定されてから半世紀余を経て、世紀も変わり、これからの時代にふさわしい象徴天皇制のあり方を探る必要があるとの考えによる。国会の憲法調査会や主要各党などで、この問題が論じられ、皇室典範を見直す動きが出ているという背景もある。
皇族では、四十年近く男子が誕生していない。国民の間では、皇男子誕生への静かな期待がある一方、敬宮愛子さまの誕生を契機に、皇太子世代に次ぐ皇位継承者として女性天皇を容認する雰囲気も生まれている。日本とは歴史、伝統が異なるとはいえ、欧州などの王室では、女性国王容認の流れが定着している。
もとより、象徴天皇制の背景には、日本の長い歴史と、伝統、文化があり、これを軽視するわけにはいかない。皇位継承に関する論議は、幅広い視野と深い識見の下に行われるべきであり、論議の場として、政府内に適切な機関を設置するよう提言するのはこのためだ。
わが国の歴史上、八人十代の女性天皇が存在するが、大方は男帝即位までの中継ぎとされ、また、女系(女帝の皇統)の天皇が就いた例はなかったとされている。女性天皇が認められなくなったのは、明治の旧皇室典範以後だ。
皇位継承規定について、政府見解、憲法学界の通説は、憲法は「世襲」だけを定め、具体的内容は皇室典範にゆだねているため、見直す場合は、皇室典範の改正で足りるとしている。一方、憲法の「世襲」の文言に「男系の男子」が含意されているとし、憲法改正が必要という主張も一部にある。
皇位継承のあり方とは別個の問題として、「皇室典範」という名称を見直すことが望ましい。一九四七年(昭和二十二年)に制定された現皇室典範は、憲法の下位法で、法律の一つだが、その名称は、憲法と同格だった旧皇室典範を引き継いだ。法律にふさわしい名称にすべきだとの立場から、憲法改正二〇〇四年試案では、二〇〇〇年試案第六条(現行憲法第二条)の「国会の議決した皇室典範」、同第七条の「皇室典範」をそれぞれ「法律」と改めた。
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