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12)57号墓
 48-76号人骨のみを含む。
(1)48-76号人骨
 ほぼ完形の人骨で、6ヶ月の新生児である。
*分離している頭蓋
・頭頂骨:わずかに小孔性骨増殖がみられる。
・蝶形骨:蝶形骨を構成する個々の骨が癒合しているものはない。
・後頭骨:後頭骨を構成する個々の骨が癒合しているものはない。
・側頭骨:鱗状部と岩様部は癒合していた。
*下顎骨:左右の下顎骨はまだ癒合しておらず、中切歯が萌出していた。
*上肢(表7)
・左右の肩甲骨、鎖骨、橈骨、尺骨、右上腕骨(破損)
・手骨:中手骨、指骨の一部
*下肢(表8)
・寛骨:左右の腸骨、坐骨、恥骨
・左右の大腿骨、脛骨、腓骨
・足骨:左右の踵骨、中足骨と指骨の一部
*肋骨:全て残存している。
*椎骨:椎体、癒合している椎弓(7個)、癒合していない椎弓(38個)
13)58号墓
 49-77号人骨を含む。
(1)49-77号人骨
 完形で残存しており、6ケ月の新生児と推定される。
*頭蓋:構成する骨の一部が残存。
*下顎骨:左右の下顎骨が癒合しておらず、萌出している乳歯はない。
*上肢(表7)
・左右の肩甲骨、鎖骨、上腕骨、橈骨、尺骨
・手骨:中手骨と指骨の一部
*下肢(表8)
・寛骨:左右の腸骨、坐骨、恥骨
・左右大腿骨、脛骨、腓骨
・足骨:中手骨、指骨
*肋骨:ほぼ全てが残存している。
*椎骨:椎体は癒合しておらず、権弓の中には癒合しているものがある。
 
14)59号墓
 5つの個体を含む(1-68号人骨、1-69A号人骨、1-69B号人骨、1-70号人骨、1-71号人骨)。
(1)1-68号人骨
 ほぼ完形で残存しており、60歳以上の成人女性である。
*頭蓋(表2):完形で残存し、長い茎状突起が特徴的である。
*下顎骨:破損している。
*甲状腺軟骨は骨化している。
*上肢(表4)
・肩甲骨:左右両側の骨関節炎が肩峰関節面にみられる。新しい関節面が肩峰の下面にみられるが、これは上腕骨頭の衝突によるものではないかと推測される(図18)。
・鎖骨:左右両方の胸骨端と肩峰端にピッティングがみられ、特に左胸骨端に著しくみられる。
・上腕骨:大結節と小結節と同様に、上腕骨頭にもピッティングと骨増殖が左右にみられる(図19)。
・左右の橈骨と尺骨
・手骨:手根骨(7個)と全ての中手骨、指骨の一部が残存。
*下肢(表5、6)
・左右の寛骨は以下の特徴を示す。
1. 恥骨結合が骨変形をおこしている。
2. 左右両側の耳状面は骨関節炎によるピッティングがみられる。
3. 両側の恥骨上枝と恥骨下肢の交わる部分に大きく、深い溝がみられる。これは、複数回に及ぶ妊娠の痕ではないかと考えられる。
4. 両側に深い前耳状面溝 preauricular sulcus がみられる。
・大腿骨:左右残存。左外側顆に骨関節炎によるピッティング、表面の粗さ、骨形成がみられる(図20)。
・右脛骨:外側穎に骨関節炎によるピッティング、表面の粗さ、骨形成がみられる。
・膝蓋骨:左右残存。関節面では関節炎と骨変形を示す(図21)。
*胸骨:胸骨柄と胸骨体が癒合している。
*肋骨:全部残存しているものの、部分的に破損している。
*椎骨
・頸椎:完全に残存している。
1. 環椎には椎骨動脈管が両側にみられる(図22)。
2. 第7頸椎にわずかな骨増殖がみられる。
・胸椎:完全に残存している。
1. 2つの胸椎の椎体に裂溝がある(図23)。
2. ほとんど全ての胸椎で著しい骨増殖がみられる
3. 第10、11、12胸椎の椎体の側面と横突起にある肋骨窩で骨関節面がみられる。
4. 胸椎の下部は骨増殖がみられ、特に椎体の上縁には棚状の突起がある。
・腰椎:全て残存している。第5腰椎の可動関節における下部関節面に著しい骨関節炎がみられる。
・仙骨
1. 尾椎が仙骨と癒合している。
2. 上関節突起に著しい骨関節炎がみられる(図24)。
3. 仙骨底では骨変形とピッティングがみられる(カラー図版4の図25)。
(2)1-69A号人骨
 45歳の成人男性で、完形で残存していない。
*完形の頭蓋(表2):上顎の歯はわずかなエナメル減形成がみられる。
*下顎骨(表3):下顎骨の歯もわずかにエナメル減形成がみられる(図26)。
*完形の舌骨と骨化した甲状腺軟骨
*上肢(表4)
・左右の肩甲骨、鎖骨、上腕骨
・手骨:手根骨1個、中手骨6個、指骨17個
*下肢(表5、6)
・左右の寛骨、大腿骨、脛骨、腓骨
・足骨:左右の距骨、踵骨、指骨2個
*胸骨:胸骨柄、胸骨体と剣状突起が癒合している。
*肋骨:全て残存している。
*椎骨
・頸椎:全て残存している。
・胸椎:全て残存している。
1. 第1胸椎の棘突起の正中線での癒合が不完全であり、また棘突起の上部に新しい関節面が出来ている(図27)。
2. 下部胸椎の下面に椎間板ヘルニアによって形成されたと考えられる前後方向の溝がみられる。この溝は後縁まで伸びており、切り込みを作っている。(図28)
・腰椎:第3腰椎体の上面前部に著しい骨増殖がみられる。
・仙骨:二分脊椎を示している。
(3)1-69B号人骨
 23〜25歳の若い成人女性で、完形で残存していない。
*頭蓋:装飾された布帯が巻かれていた。
*下顎骨(表3):ほとんどの歯が揃っていた。
*上肢(表4)
・左右の肩甲骨、鎖骨(胸骨端はまだ癒合を終えていない)、上腕骨(左破損)、橈骨、尺骨
・手骨:手根骨9個、中手骨7個、指骨14個
*下肢(表5、6)
・寛骨:左のみ残存。腸骨稜と坐骨結節の骨端癒合は完全に終わっていない。深い前耳状面溝 preauricular sulcus がみられる。
・足骨:右踵骨、右距骨、左右の立方骨
*肋骨:全て残存しているが、破損しているものがある。
*椎骨
・頸椎:5個だけ残存している。
・胸椎:全て残存している。
・腰椎:全て残存している。
・骨端輪はまだ完全に癒合していない。
*仙骨:二分脊椎がみられる。また、第一仙骨の癒合は部分的なものである。
(4)1-70号人骨
 40歳の成人男性で、完形で残存していない。
*頭蓋(表2)と下顎骨(表3)
*上肢(表4)
・左右の肩甲骨、鎖骨、上腕骨
・左右の橈骨、尺骨。橈骨は表面の粗い橈骨粗面がみられる。
*下肢(表5、6)
・左寛骨、左右の大腿骨、脛骨(右は破損)、腓骨
・足骨:足根骨6個、中足骨5個、指骨6個
*胸骨:胸骨柄と胸骨体は癒合していない。
*肋骨:ほぼ全て残存しているが、ほとんどが破損している。
*椎骨
・頸椎:4個のみ残存している。
・胸椎:全て残存しているが、一部にわずかな骨増殖がみられる。
・腰椎:第5腰椎のみ残存しており、椎体の上縁に骨増殖がみられる。
*仙骨:第一尾椎が仙骨に癒合しているため、仙骨は6個の骨で構成されている。
(5)1-71号人骨
 40歳の成人男性で、完形で残存していない。
*部分的に骨化している甲状腺軟骨
*上肢(表4)
・左肩甲骨、左右の鎖骨、上腕骨、橈骨、尺骨
・手骨:手根骨1個、中手骨8個、指骨3個
*下肢(表5、6)
・左右の寛骨、左大腿骨
・足骨:左右の距骨、踵骨、左舟状骨、右内側楔状骨、中足骨10個、指骨5個
*肋骨:右6本、左10本残存しているが、ほぼ破損している。
*椎骨
・頸椎:6個残存しており、第7頸椎は可動関節の関節面後方で骨関節炎がみられる。
・胸椎
1. 第一胸椎で可動関節の関節面後方で骨関節炎がみられる。
2. 2つの胸椎の椎体に前後方向の溝がみられる。この溝は後縁まで伸びており、切り込みを作っている(図29)。
・腰椎:全て残存しており、わずかな骨増殖がみられる。
(6)混合している骨
A. 成人骨
*頭蓋:個々の構成する骨が分離している。
*舌骨が2個ある。
*甲状腺軟骨と輪状軟骨は骨化している。
*上肢(表4)
・左右1個ずつの橈骨と尺骨
・混在している手骨
*下肢
・右寛骨、右大腿骨
・混在している足骨
*腰肋がある。
*3つの胸椎と仙骨
B. 未成人骨
*頭蓋:完形の頭蓋一つと別に、頭頂骨、上顎骨が残存している。
*下顎骨:癒合していない半片の下顎骨が6つ。
*上肢(表7):肩甲骨(右4個、左1個)、鎖骨(右1個、左2個)、上腕骨(右2個、左3個)、橈骨(右5個、左7個)、尺骨(右3個、左3個)。
*下肢(表8)
・寛骨:腸骨(右2個、左3個)、左坐骨1個
・大腿骨(右4個、左5個)、脛骨(右4個、左4個)、6つの破損した腓骨。
・多数の手骨と足骨の混合した骨群
*多くの肋骨
 
15)60号墓
 46-74号人骨を含んでいる。
(1)46-74号人骨
 受胎後6〜8ヶ月の胎児である。
*頭蓋
*上肢(表7):左右の肩甲骨、鎖骨、左上腕骨、尺骨
*下肢(表8)
・寛骨:左腸骨、左坐骨
・左右の大腿骨、脛骨、腓骨
*肋骨:ほとんどが残存している。
*椎骨:椎体と椎弓が分離して残存している。
 
16)61号墓
 この墓は2つの個体を含む(47-75A号人骨、47-75B号人骨)。
(1)47-75A号人骨
 生後6ヶ月の新生児で、残存している骨は非常に少ない。
(2)47-75B号人骨
 新生児で、残存している骨は非常に少ない。
 
17)8-2003号墓
 8-2003号人骨が含まれている。
(1)8-2003号人骨
 生後12ヶ月の新生児で、完形で残存していない。
*頭蓋:側頭骨は未発達な乳様突起と不完全な鼓室輪がある。
*上肢:左右の肩甲骨、鎖骨、上腕骨、橈骨、尺骨
*下肢:左右の腸骨、坐骨
*椎骨:椎体は分離しているが、椎弓は癒合している。
 
 なお、この調査には武田摩耶子氏が助手として協力されたことを明記し、感謝の意を表する。







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