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〔40〕インディゴフェラ・オブロンジフォリア(コマツナギ属、マメ科)
学名:Indigofera oblongifolia Forssk.〔=I. lotoides Lam., I. paucifolia DeL., I. desmodioides Bak.〕/英語名:−/アラビア語名:
出土遣物番号〔9点〕:RT218, RT238, RT256, RT264, RT1730, RT2296, RT3056, RT6852, RT7503
解説:低木で、砂漠の水気があるワーディーやナイル・デルタで生育する。茎の材構造の特徴としては、生長輪はない。木部の導管は散孔(材)状で、1〜4の導管が放射方向に集団になっている。放射組織は1〜3列。出土遺物は加工された材の形状である。この植物は紅海沿岸やエルバ山域で生育しているので、遺物はこれらの地域のいずれかから当地にもたらされたものであろう。
 
〔41〕ジュンクス・リギドゥス(イグサ属、イグサ科)
学名:Juncus rigidus Desf.〔=J. arabicus(Asch. et Buch.)Adams., J. maritimus v. arabicus Asch. et Buch.ex Boiss.〕/英語名:Rush/アラビア語名:
出土遺物番号〔8点〕:RT250F, RT391, RT471B, RT566, RT664B, RT1460, RT1860, RT1888
解説:常緑で多年生のイグサで、塩沢や荒れ地で生育する。出土遺物の形状は加工された稈で、ナツメヤシ(Phoenix dactylifera)あるいはエジプト・シュロ(Hyphaene thebaica)でできたバスケットに詰められた遺物である。この植物はシナイ半島で生育しているので、遺物は地元に由来するであろう。
 
〔42〕ジュグランス・レギア(クルミ属、クルミ科)
学名:Juglans regia L./〔和名:カシグルミ〕/英語名:Wal-nut〔=Walnut tree〕/アラビア語名:
出土遺物番号〔1点〕:RT5308
解説:落葉性の栽培果樹で、南東ヨーロッパ原産であって、レバノンやシリアでも栽培される。茎の材構造の特徴としては、明瞭な生長輪がある。木部の導管は、散孔(材)状から半環孔(材)状に分布している。導管は、単独か、あるいは、1〜4の導管が放射方向に集合している。放射組織は1〜3列で、高さは35細胞まで。この出土遺物は加工された材の形状で、家具の一部であろう。この植物はエジプトでは生育していないので、他地域からもたらされたものである。
 
〔43〕ジュニペルス・フォエニセア(ネズミサシ属、ヒノキ科)
学名:Juniperus phoenicea L. /英語名:Phoenician-Juniper/アラビア語名:
出土遺物番号〔15点〕:RT119, RT1371, RT1539, RT1758, RT2076, RT2170, RT2998, RT3133, RT3406, RT4738, RT5222, RT5783, RT7146, RT7845, RT8047
解説:落葉性の低木、または、高木で、シナイ半島、レバノン、シリアで生育する。茎の材構造の特徴としては、明瞭な生長輪がある。木部は仮導管だけで、春材から秋材後期に次第に遷移している。放射組織は1列で、2列はほとんどない。出土遺物は加工された材の形状で、家具の一部であろう、また、未加工の材や枝部もある。この植物はエジプトで生育しているので、遺物は地元に由来する。
 
〔44〕リヌム・ウシタティッシムム(アマ属、アマ科)
学名:Linum usitatissimum L./〔和名:アマ〕/英語名:Flax〔=Common flax〕/アラビア語名:
出土遺物番号〔5点〕:RT400B, RT423B, RT574A, RT1612, RT2633
解説:エジプトでは古代から栽培されてきた、一年生の繊維作物。出土遺物の形状は、加工された繊維、織物、ロープ、または、未加工の繊維である。この植物はエジプトで生育しているので、遺物は地元に由来する。
 
〔45〕レプタデニア・ピロテクニカ(レプタデニア属、ガガイモ科)
学名:Leptadenia pyrotechnica(Forssk.)Decne./英語名:−/アラビア語名:markh
出土遺物番号〔3点〕:RT1797, RT4524, RT5985
解説:常緑の低木、または、高木で、シナイ半島の砂漠のワーディー、ナイル・デルタ、紅海沿岸、エルバ山域で生育する。茎の材構造の特徴としては、生長輪がない。放射組織は明瞭で、幅は20細胞までで、より大きな細胞の目立つ鞘がある。乳管はすぐ目につく。出土遺物は、加工された材の形状である。この植物はエジプトで生育しているので、遺物は地元に由来する(図版3-4〜6)。
 
〔46〕リシウム・シャウィイ(クコ属、ナス科)
学名:Lycium shawii(Forssk.)Decne.〔=L. persicum Miers., L. arabicum Schweinf. ex Boiss.〕/英語名:−/アラビア語名:
出土遺物番号〔1点〕:RT7707
解説:常緑の砂漠の低木で、シナイ半島の砂漠のワーディー、紅海沿岸、西方砂漠で生育する。茎の材構造の特徴としては、明瞭な生長輪がある。導管は散在し、小さくて幅が狭い導管と幅が広い導管が集合している。放射組織は明瞭で、1〜2列、高さは1〜16細胞まで。出土遺物の形状は加工された材である。この植物はエジプトで生育しているので、遺物は地元に由来する(図版3-7〜9)。
 
〔47〕マエルア・オブロンジフォリア(マエルア属、フウチョウソウ科)
学名:Maerua oblongifolia(Forssk.)A. Rich./英語名:−/アラビア語名:marw
出土遺物番号〔1点〕:RT389
解説:低木または小さな高木で、エルバ山域で生育する。茎の材構造の特徴としては、生長輪はぼんやりしている。導管は単独で、散在している。放射組織は1〜2列。乳管は目立ち、接線方向に列をつくっている。出土遺物は加工された材の形状で、小さな容器の内壁である。この植物はエジプトのエルバ山域で生育しているので、遺物は地元に由来する。
 
〔48〕モリンガ・ペレグリーナ(ワサビノキ属、ワサビノキ科)
学名:Moringa peregrina(Forssk.)Fiori.〔=M.aptera Gaertn., M.arabica(Lam.)Pers.〕/英語名:Moringa/アラビア語名:
出土遺物番号〔7点〕:RT989, RT1550, RT4387, RT4439, RT4571, RT5647, RT7697
解説:落葉性の高木で、イスラエル、ヨルダン、スーダン、そして、エジプトで生育する。茎の材構造の特徴として、生長輪はぼんやりしている。導管は単独で、散在し、時には、接線方向に2〜3の導管が集合している。放射組織は1〜2列で、高さは7細胞まで。出土遺物は、加工された材の形状である。この植物はエジプトの聖カタリーナで生育しているので、遺物は地元に由来する(図版4-1〜4)。
 
〔49〕ニトラリア・レトゥーサ(ニトラリア属、ニトラリア科)
学名:Nitaria retusa(Forssk.)Asch.〔=N. tridentata Desf.〕/英語名:Nitre-bush/アラビア語名:gharqad
出土遺物番号〔29点〕:RT49F, RT100, RT250, RT472C, RT841, RT1582, RT2359, RT2389, RT2783, RT2820, RT2825, RT2828, RT3006, RT3014, RT3089, RT3222, RT3287, RT4328, RT4447, RT4617, RT4935, RT5610, RT5710, RT5733, RT6435, RT7419, RT7501, RT7719, RT7822
解説:常緑で、耐塩性の低木で、イスラエル、ヨルダン、スーダン、そして、エジプトで生育する。茎の材構造の特徴としては、生長輪は明瞭ではない。導管は単独で散在しているか、あるいは、2〜3の導管が集合している。放射組織は1〜3列で、高さは25細胞まで。出土遺物は、加工された材、木炭、枝部の形状である。この植物はシナイ半島で生育しているので、遺物は地元に由来する。
 
〔50〕オレア・エウロパエア(オリーブ属、モクセイ科)
学名:Olea europaea L.〔=Olea sativa Hoffmgg., O. lancifolia Moench〕/〔和名:オリーブ〕/英語名:Olive/アラビア語名:
出土遺物番号〔5点〕:RT71E, RT4418, RT5195, RT5655, RT7016
解説:常緑で、油脂を採る高木で、イスラエル、ヨルダン、レバノン、エジプト、ヨーロッパで生育する。茎の材構造の特徴としては、ぼんやりしたないしは明瞭な生長輪がある。導管は単独で散在しているが、時には、2〜4(6)の導管が放射方向に集合していて、横断面では多角形か円形になっている。放射組織は1〜2列で、高さは12(20)細胞まで。出土遺物の形状は、加工された材、および、果実の核である。この植物はエジプトで生育しているので、遺物は地元に由来する。
 
〔51〕パニクム・トゥルギドゥム(キビ属、イネ科)
学名:Panicum turgidum Forssk./英語名:−/アラビア語名:
出土遺物番号〔2点〕:RT49A, RT71G
解説:多年生の砂漠の草本で、エジプトの砂漠のワーディーや平原で生育する。出土遺物は稈の砕片である。この植物はシナイ半島で生育しているので、遺物は地元に由来する。
 
〔52〕フォエニクス・ダクティリフェーラ(ナツメヤシ属、ヤシ科)
学名:Phoenix dactylifera L./〔和名:ナツメヤシ〕/英語名:Date-palm/アラビア語名:
出土遺物番号〔201点〕:RT5, RT18, RT43, RT49C, RT56, RT71D, RT93, RT100, RT102, RT104, RT166, RT204, RT216, RT250B, RT251, RT254, RT280, RT311, RT326, RT355, RT361, RT381, RT386, RT387, RT388, RT390, RT393A, RT394A, RT395, RT396, RT397, RT398, RT399, RT400C, RT401, RT402, RT403, RT445A, RT458, RT460, RT461, RT462, RT463, RT464, RT465, RT466, RT471, RT472, RT473, RT474, RT494, RT514, RT520, RT525A, RT546, RT555, RT557, RT558, RT565, RT575, RT585, RT586, RT594, RT606, RT607, RT608A, RT623, RT664A, RT666C, RT689, RT713, RT718, RT769, RT826, RT828, RT829A, RT831, RT832, RT932, RT934, RT995, RT1019, RT1047, RT1049, RT1071, RT1072, RT1225, RT1229, RT1230, RT1231, RT1233, RT1234, RT1242, RT1284, RT1285, RT1286, RT1287, RT1343, RT1344, RT1345, RT1347, RT1348, RT1351, RT1353, RT1355, RT1384, RT1460, RT1466, RT1467, RT1468, RT1470A, RT1471, RT1474, RT1516A, RT1612A, RT1616, RT1620, RT1621, RT1663, RT1683, RT1782, RT1802, RT1806, RT1857, RT1860A, RT1930, RT1993, RT1986, RT2022, RT2121, RT2156, RT2208, RT2209, RT2255, RT2315, RT2374, RT2389, RT2392, RT2397, RT2418, RT2536, RT2540, RT2550, RT2562, RT2579, RT2581, RT2583, RT2584, RT2585, RT2586, RT2587, RT2588, RT2593, RT2595, RT2596, RT2600, RT2601, RT2602, RT2603, RT2604, RT2606, RT2607, RT2609, RT2613, RT2665, RT2681, RT2713, RT2715, RT2716, RT2717, RT2718, RT2721, RT2722, RT2726, RT2727, RT2728, RT2729, RT2730, RT2731, RT2732, RT2733, RT2734, RT2736, RT2737, RT2758, RT2800A, RT2802, RT2803, RT2804, RT2811, RT2846, RT2880, RT3228, RT3367, RT3468, RT4358, RT4523, RT4930, RT5104, RT6755, RT7745
解説:常緑の、羽状葉のヤシ樹で、砂漠のワーディー、ナイル流域、オアシスや砂漠の平原で生育する。出土遺物の形状は、葉の細長い片でできた、加工されたバスケット、マット、ロープ、そして、種子、樹幹や根の砕片である。この植物はシナイ半島で生育しているので、遺物は地元に由来する(図版4-5〜7)。
 
〔53〕フラグミテス・アウストラリス(ヨシ属、イネ科)
学名:Pharagmites australis(Cav.)Trin.ex Steud.〔=Arundo phragmites L.,A. australis Cav., P. communis Trin., P. vnlgaris(Lam.)Bonnnet〕/〔和名:ヨシ〕/英語名:Reed/アラビア語名:
出土遺物番号〔3点〕:RT71H, RT1189, RT2659
解説:常緑の、ヨシで、荒れ地や水気があるワーディーで生育する。出土遺物は、稈(中空で節のある茎)の砕片である。この植物はシナイ半島で生育しているので、遺物は地元に由来する。
 
〔54〕ピヌス・ハレペンシス(マツ属、マツ科)
学名:Pinus halepensis Miller. /〔和名:アレッポマツ〕/英語名:Aleppo-pine〔=Jerusalem pine〕/アラビア語名:
出土遣物番号〔2点〕:RT781, RT7716
解説:常緑の高木で、ヨーロッパ、レバノン、シリア、パレスチナ、ヨルダン、イスラエルの丘で生育し、現在はエジプトでも栽培されている。茎の材構造の特徴としては、明瞭な生長輪がある。木部は仮導管だけで、ふつう春材から秋材へ急激に遷移する。放射組織は1列で、まれに2列がある。出土遺物は加工された材の形状で、ポットの一部であろう。この植物は他地域からラーヤ遺跡にもたらされたようである。
 
〔55〕ピスタシア・キンジューク(カイノキ属、ウルシ科)
学名:Pistacia khinjuk Stocks/英語名:East Indian mastiche/アラビア語名:bawtam
出土遺物番号〔26点〕:RT27, RT185, RT195, RT300, RT443, RT677, RT889, RT1080, RT1278, RT1367, RT1378, RT3425, RT3427, RT4684, RT5301, RT5514, RT5605, RT6301, RT6350, RT6385, RT6627, RT6659, RT7126, RT7657, RT7766, RT7888
解説:落葉性の低木で、イラン・トゥラン地域で生育する。茎の材構造の特徴としては、明瞭な生長輪があり、春材が1列の環孔材である。放射組織は1〜3列で、1列の放射組織では高さ1〜8細胞、また、多列の放射組織では高さ4〜30細胞となっている。樹脂道が、たびたび、多列の放射組織にある。出土遺物の形状は加工された材、または、未加工の材である。この植物は紅海沿岸のワーディーやエルバ山域で生育しており、出土遺物はそれが地元に由来することを示している。
 
〔56〕プルヌス・アルメニアーカ(サクラ属、バラ科)
学名:Prunus armeniaca L.〔=Armenica vulgaris Lam.〕/〔和名:アンズ〕/英語名:Apricots/アラビア語名:mushumushmishmish
出土遺物番号〔1点〕:RT606C
解説:栽培される落葉性の果樹で、シリア、レバノン、ヨルダンで生育し、エジプトで栽培される。出土遺物は果実の核である。その頃、この植物はエジプトでは生育しておらず、遺物は他地域からもたらされたのであろう。







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