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アザラシ類の上陸が確認された場所およびラッコの目撃場所(国後島)
「ゼニ」はゼニガタアザラシを、「ゴマ」はゴマフアザラシを指し、その後ろの数字が上陸数を示す。
◎はラッコの目撃場所を示す。
□で囲まれたのは調査日。
 
アザラシ類の上陸が確認された場所およびラッコの目撃場所(択捉島南部)
「ゼニ」はゼニガタアザラシを、「ゴマ」はゴマフアザラシを指し、その後ろの数字が上陸数を示す。
◎はラッコの目撃場所を示す。
□で囲まれたのは調査日。
 
武村浩希
 
調査目的:
 北方四島は、周辺海域と比べて植物プランクトン量が多いと言われており、去年行われた択捉島調査において、その事実が確認された。今回の調査では択捉島周辺海域と同様に、豊富な海洋動物の生産を持つ国後島周辺海域の海洋生態系の構造を明らかにすることを目的とした。
 
観測方法及び観測地点:
 国後島周辺に39地点を設定し、各地点で表面から水深100m付近までクロロテック(アレック電子製)を用いて、水温・塩分・クロロフィル濃度を測定した。同時に、各地点で表層の海水を採取し、CF/Cガラスファイバーフィルターによって海水を濾過し、集めた植物プランクトンをジメチルホルムアミド法によってターナー蛍光光度計によりクロロフィル濃度を測定して、クロロテックの読み値を補正した。さらに、各地点で表層から水深80m付近までを光量子計を用いて光の垂直分布及び吸収係数を測定した。
 
調査結果:
太平洋沿岸:オホーツク海沿岸に比べ、クロロフィル濃度が比較的高かった。水温・クロロフィル濃度は沖合いと比べ変動が小さく、鉛直混合が盛んに行われていた。
太平洋沖合い:水深20m前後で水温が大きく減少していた。また、水温が大きく下がる深度でクロロフィル濃度が高くなった。塩分もこの躍層の深度で大きく変化し高くなった。
オホーツク海沿岸:太平洋沿岸と比べ、クロロフィル濃度・水温・塩分の鉛直混合がとても盛んに行われていて、表層から深層にかけて等温等塩分の鉛直分布になっていた。また、沖合いと比べてクロロフィル濃度は高かった。
オホーツク海沖合い:水温の鉛直分布は太平洋側のような水温躍層は形成されず、水深が深くなるにつれて徐々に低くなっていった。これは太平洋沖合いと比べて風が強いためであると考えられる。クロロフィル濃度は表層よりも10〜20mの深さで最大となり(約2.0μg/l)、深くなるにつれてまた低くなった。
国後水道:水温・塩分・クロロフィル濃度は表層から深層にかけてよく混合されていて、ほぼ均一の分布であった。また、海面水温は他の海域と比較するととても低く、6〜7℃前後であった。クロロフィル濃度も他と比べて低かった。
根室海峡:表層でクロロフィル濃度が高く水深12m付近で水温の減少に伴ってクロロフィル濃度も低くなった。水温は表層で10℃、深層でも6℃前後と高く、層や暖流の影響を強く受けていると考えられる。
 
まとめ:
 国後島周辺は他の周辺海域と比べ生物生産量が非常に高い。さらに、太平洋側とオホーツク海側ではクロロフィル濃度が異なり、オホーツク海側と比べ太平洋側のほうがクロロフィル濃度は高かった。またPRR600光量子計による照度測定より、国後島周辺の有光層深度は一部観測深度より深いところまで及んだが、おおよそ50m前後ととても浅かった。このことからも、植物プランクトン量が豊富であると考えられる。また、去年の択捉島調査では冷水塊が見られたが、今回の観測では見られなかった。
 
観測地点:
 
〈付属〉
PRR600観測結果
station 有光層深度 station 有光層深度
st.1 失敗 st.21 観測深度以深
st.2 38m st.22 65m
st.3 46m st.23 57m
st.4 観測深度以深 st.24 50.5m
st.5 29m st.25 62.6m
st.6 42m st.26 37m
st.7 観測深度以深 st.27 39.5m
st.8 観測深度以深 st.28 観測深度以深
st.9 44.4m st.29 44.4m
st.10 33.6m st.30 39m
st.11 失敗 st.31 38m
st.12 観測深度以深 st.32 45.7m
st.13 53.3m st.33 37.6m
st.14 64m st.34 観測深度以深
st.15 60.5m st.35 46m
st.16 36.8m st.36 38.2m
st.17 観測深度以深 st.37 50m
st.18 70.4m st.38 観測深度以深
st.19 68.2m st.39 43.5m
st.20 観測深度以深    







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