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4. チャチャ岳北東麓オンコツ周辺
O-A: エシネベツ川(地形図川名表記なし。コロドニイ川Kolodnyy)。7月23日現地調査。西ビロクキャンプ地から船で移動し、オンコツ付近の河川を探索。12:00、エシネベツ川河口から約500m地点の河川沿いでシマフクロウの足跡と羽毛を採取し、直後に河畔林内にシマフクロウの成鳥1羽が飛ぶのを確認、成鳥飛び出し地点のすぐ横の樹木横枝に雛を1羽確認した。成鳥はすぐに飛び去るが幼鳥はしばらく警戒した後約30m飛び斜面の地面に止まり警戒を続けた。観察を続けるうちにさらに遠方に逃げたため直接観察を中止し、痕跡調査に移行した。目撃地点周辺とその上流側200mほどに渡って河岸に羽毛や足跡、糞の痕跡多く、この周辺の樹木で営巣していた可能性が極めて高い。ただし、河畔に見られるのは最近の落下羽毛ばかりで、営巣地から少し移動してきた可能性が高い。観察による影響が大きかったため一度河川から撤退し、夕方同地点を再び訪れ鳴き声を待機した。18:30に上流からつがいの声が聞こえ、移動しながら鳴き交わしを継続した。エシネベツ川から離れて南東方向に移動している様子である。鳴き交わしのパターン、声の質、間隔は北海道と同一。19:45に鳴き交わしが終了。20時に調査終了。幼鳥は警戒したのか声を出さなかった。親鳥の鳴き声状況はかなり警戒している模様であった。目撃された幼鳥は飛ぶことがあまりうまくなかったため巣立ちからあまり時間がたっていないと考えられ、おそらく6月下旬以降の巣立ちと思われる。
 
エシネベツ川 シマフクロウ幼鳥
 
 北海道の知見で言えば、以下に述べるエシネベツ川の環境は劣悪な部類に入る。エシネベツ川はチャチャ岳北東麓に端を発する(地形図上)流路長約3.5km、川幅2-3mの流量の少ない非常に規模の小さな河川である。下流地帯では比高5-10mで台地を下刻し、氾濫原は幅10-20m程度と広くない。河口部200-300m区間は湿地状になっており、河口は砂地で水深が非常に浅い。魚影は見られたがあまり濃い印象を受けなかった。河畔林はケヤマハンノキを主体とし規模が小さい一方で、キハダ、ハリギリ、ハルニレ、オヒョウニレ、オオバヤナギ、ヤナギsp.、ダケカンバ、オオバボダイジュなど広葉樹の樹種が他の地域に比べて豊富な印象を受けた。大木は見られなかったがDBH50cm程度の樹木は散見された。オンネベツ地域では大木になるオオバヤナギも、この地域ではあまり大きくなっていなかった。台地上はトドマツとエゾマツの密生林と湿地になり歩行に困難であるが、針葉樹の大木の多くは樹高5-10mの地点で折れて立ち枯れているものが目立った。これはおそらく過去のチャチャ岳の噴火によるものと考えられるが、このような立ち枯れたトドマツの先端のいくつかに樹洞が形成されていた。この河川で繁殖したフクロウの巣は本調査では見つからなかったが、広葉樹の大木が見られなかったことから針葉樹の樹洞で繁殖した可能性が考えられる。なお、日本のシマフクロウが針葉樹を利用して繁殖した記録は今までない。いっぽう、針葉樹林帯を主に生息域にする大型フクロウ(例えばカラフトフクロウ)はしばしば針葉樹の立ち枯れ木の頂部を巣に利用することが知られている。
 
エシネベツ川 シマフクロウ足跡
 
 
エシネベツ川 シマフクロウ糞
 
 
エシネベツ川下流景観
 
 
エシネベツ川 シマフクロウ目撃地点
 
 
エシネベツ川 針葉樹立ち枯れ樹洞
 
 
エシネベツ沖からの景観







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