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6. マッサージの種類と方法:療養者の状態や目的に応じて、軽擦法、圧迫法、叩打法、振戦法などを単一で用いるか、複数の技法を組み合わせて行う。
 
 
1)Effleeurage Stroking: 軽擦(けいさつ)法
 ‘撫でる’、‘摩る’方法でマッサージする。
*もっとも基本となるマッサージである。
(1)方法:手指と手のひらを使って、肌に軽い圧力をかけながら同じ圧力を保ち、手のひらを皮膚に密着させて末梢から中枢方向へ行う。
(2)対象部位:背部、腰部、臀部、胸腹部、四肢、頭部。
(3)効用:末梢の循環の改善に効果あり、循環障害
四肢の冷え、浮腫の軽減、疼痛の緩和。
・手のぬくもりが伝わりやすく、ゆったりしたリズムが快適感をもたらし、リラックスする。
2)Petrissage Kneading: 揉捏(じゅうねつ)法
・主に筋肉を対象に行う‘揉む’
(1)方法:手指と手のひらで、筋肉を揉み解す。
・‘もむ’‘こねる’が中心となる。
・皮下の筋肉を、拇指とその他の指で軽く持ち上げたり、ゆるめたりする。
・手首と肩の力を抜いて大きくゆっくりと動かす
(2)対象部:肩上部、頚部、背腰部、四肢などの筋肉脊柱、頭部、アキレス腱。
(3)効用:筋肉の血行をよくし、筋肉の緊張の緩和に役立つ。肩こり、腰痛、下肢の疲れやだるさの軽減に効果。腰背部など全身のリラクセーション。
3)Tapotement Percussion: 叩打(こうだ)法
 肩叩きとして行う方法であり、手で軽くリズミカルに局所に刺激を与える方法。
(1)方法:手のさまざまな部位を使い、軽くリズムカルに叩き、局所に刺激を与える。
・手を軽く握り締めて叩く、手がたなを作る、合掌した手で叩くなどの方法。
・肩の力をぬき手首を支点に叩く。
・1秒間に5〜6回程度で叩き、1ヶ所に5分以上は行わないようにする。
(2)対象部位;肩上部、背部、腰部、四肢。
(3)効用:リズミカルな繰り返し刺激によって、心地よさや快適感が得られる。
・手軽なマッサージであるが、刺激が強いので状況を見極めることが必要である。
4)圧迫法:手の平や親指と他の4指頭を使い、局所を圧迫する方法。
(1)方法;手全体で局所を持続的、間欠的に‘押す’ことで、適度な圧迫刺激を加える。
*母指などの指頭を用いて「つぼ」を圧迫すれば「指圧」
・手掌圧迫法:徐々に力を加え、3〜7秒くらい同じ力で、持続的に圧迫する。
・施行部位をずらしながら連続し行う、同一部位に繰り返し間欠的に圧力を加える方法。
・相手の呼気時に圧力をかけ、吸気時に力をゆるめる。
(2)対象部位:手掌圧迫法は肩背部、背部、腰部、下肢。手根圧迫法は手根を用い背部、腰部、臀部。拇指圧迫法は拇指を用い使いにくい狭い部位に行う。
(3)効用:全般的に、鎮静・鎮痛効果が得られる。ツボを対象に応じた効果が期待できる。
5)振戦法:指や手首などを両手でつかみ筋肉を細かく‘ふるわせる’方法。
(1)対象部位:上肢や下肢、手掌、指。
(2)効用:硬くなった筋肉をほぐしたり、局所に対して心地よい刺激を与える。
 
7. 基本的なマッサージの実際:
1)全身マッサージ:末梢血管を拡張させることで毛細血管の透過性が亢進し、血流と組織の間の液体や固体の交換を促進させる。
*看護師の基本腋姿勢:マッサージ部位が常に自分の身体の正中になるように、身体を移動させながらマッサージする。
(1)顔面のマッサージ:四指を用いて行う
(2)座位でのマッサージ;頭部、顔、頚部、肩背部、上肢などの部位別マッサージ:安楽な椅子を用意する。肩にハンドタオルをかけ、両手を肩に軽くのせ首筋を軽く支える。
(3)仰臥位:頭部、顔、前頚部、胸部、腹部、上下肢と全身マッサージの基本的体位。
(4)腹臥位のマッサージ:後頭部、後頚部、肩背部、腰部、上下肢のマッサージ。
(5)側臥位:側頭部、側頚部、上肢、腎部、下肢のマッサージに適している。下側側の上肢は療養者の楽な位置におき、下肢は軽く曲げて安定させる。
 
<マッサージを行う方向>
 
 
2)部分マッサージ:
ハンドマッサージ:臥床している療養者、椅子に座っている療養者の手のマッサージは比較的手軽にでき効果も高い。ハンドタオルの上に手をのせ、療養者の好みに合わせ手持ちのクリームやローションを手全体に塗り、療養者の手全体から上肢を擦る。片方2〜5分間程度。
(1)手の甲をゆっくり螺旋を描くようさすり、続いて指の甲を爪先に向かってさする。
(2)手掌を円を描くようにさすり、続いて指先に向かってさする。
(3)それぞれの指先を軽く抑えて引っ張る。
(4)上腕は手掌を使って軽擦法や揉捏法、拇指を使った圧迫法などでマッサージをする。
背部マッサージ:全身のマッサージの一環として行う方法と背部圧迫など指圧を目的とした方法などを用いて、心の緊張を解きほぐしたい時など有効である。全身清拭の時を利用する。
(1)清拭のあと、パウダーやローションなどの潤滑剤を手につけ背部全体を軽くさする。
(2)脊椎から肩にかけて十分にマッサージする。
(3)背部を下から上に向かって圧迫する。
(4)背部のなかほどから肩にかけて軽擦法を行い、つぎに両腕を軽くもむ。
(5)脊椎を下部から脊椎上部に向けて圧迫していく。
(6)両手を重ねて臀部を中くらいの力で圧迫しながら大きな円を描くように動かす。
(7)最後に背部全体に軽擦法を行う。
足部マッサージ
 臥床している患者の足部マッサージは比較的手軽にでき効果も高い。マッサージをする前に足浴をすると快適さを促進させ心地よくなる。
(1)足全体にローションやオイルを塗り、患者の足をしっかりともち、足首の周囲を擦る。
(2)足の裏の指の部分を円を描くようにさすり、続いて腱の隙間を爪先から足首に向かってさする
(3)足の指先を軽く引くマッサージする
(4)足の甲は手掌を使って軽擦法でマッサージ
(5)足の両側をさする
(6)足の裏を手根を使った軽擦法や揉握法、拇指を使った圧迫法などでマッサージする。土踏まず部位を指圧する
 
<足低部のマッサージの方向>
 
3. アレキサンダーテクニック:Alexander Technique
 19世紀の終わり、オーストラリア人のフレドリック・アレキサンダーが、不自然な(体の機能に逆らう形)姿勢が体に悪影響を及ぼすことから、人間の身体構造と日常生活の動作に着目し、体を労わる重要性について提言した。アレキサンダーテクニックは、頚部と腰部に集中している重要な諸神経叢の頸部と腰部の筋肉の緊張を解きリラックスさせる方法である。人間の体は睡眠時間以外の活動時間を除き、日常生活行動の物を持ち上げる、立つ、歩く、走る、座わるなど一瞬たりとも留まることなく動いている。この生のリズムが負荷を軽減させることを目的としている。人間のボディメカニズムは常に負荷がかかっている状態であるため身体機能へ関心を向けることと身体機能のバランスを取ることでリラックス効果を得ることである。また、体を労わることで新たな自己との出会いに繋がる。
1)必要物品:2〜3冊の本
2)方法:
(1)床の上に本を置く、仰臥位となり、本の上に頭を乗せ目を閉じて身体をゆったりとさせ、ゆっくり息を吸って吐く。これらを数回ゆっくり呼吸する。
(2)両方の手の平を広げ、軽く腹部に置いて横隔膜呼吸をする。
(3)両膝は軽く開いた状態で立て、身体の対面をできるだけ床に密着させる。1回深く息を吸い、吐くを繰り返し、気持ちを集中させながら、徐々に自然に任せる。
(4)目を閉じたまま、静かに大きく呼吸しながら‘リラックスして’という言葉を思い浮かべながら、吸気・呼気にあわせ約20分位同じ状態を保つ。
 
3)効果:腰痛
・筋肉・骨格の障害
・頭痛
・胃腸障害
・外傷後の後遺症
・ストレス心配
・うつ病
 
CLINICAL COMPLEMENTAIRY THERAPY







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