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終末期ケアのあり方
2003年1月22日(木)
財団法人 日本訪問看護振興財団
看護技術専門員 阿部まゆみ
 
終末期のケアのあり方
〜看護における補助的療法〜
 
日本訪問看護振興財団
阿部まゆみ
 
ホスピス/緩和ケア
 
■ホスピスケア:
 患者と家族の人生最後の時に際し苦しみからの解放と尊厳をもとにケアを提供するケアの在り方と働く人々のあり方「Caring mind」を指し、場所を特定するのではなく尊厳ある自然な生を全うさせようとするケアの哲学であり、方法である。
■緩和ケア:
 治癒を目指した治療が有効でなくなった患者に対する積極的な全人的ケアである。痛みやその他の症状コントロール、精神的、社会的、スピリチュアルな問題が最も重要な課題となる。緩和ケアの目的は、患者とその家族にとってできる限り可能な患者のQOLを実現することである。(1990年 WHO)
 
痛みがQOLに与える影響
 
身休的 Physical
・機能的能力の低下
・強さ、持久力の低下
・吐気、食欲の低下
・不十分、中断する睡眠
・身体への意識の集中
 
社会的 Social
・社会的な関係性の低下
・性機能、情動の減少
・外見の変化
 
心理的 sychologica
・レジャーや楽しみの低下
・不安や恐怖の増大
・うつや苦悩
・集中することの困難さ
・コントロールの喪失
 
スピリチュアル Spiritual
・苦悩の増大
・存在する意味の変化
・神へや信仰心の再評価
 
 
症状マネジメントの留意点
 
1. 病状の進行と症状の評価
2. その評価に基づく症状をマネジメントする方法の選択
3. 患者の日常生活への影響を最小限にする配慮
4. 患者がこれまで行ってきた方法で患者がマネジメントできる方法で家族も参加できる方法を探る
5. 薬物療法のみを重視しない:体位の安楽・リラクセーション・マッサージなど。一方的なかかわりではなく患者の潜在能力や可能性を尊重する
6. 日々の症状マネジメントを見直し、細やかで、できるだけシンプルに、継続的にケアを提供する
7. 患者が体験している評価を重要視する
8. 症状の悪化を予防し、改善または維持することに努める
 
 
 
コンプレメンタリーセラピー
 
コンプレメンタリーセラピー(補助的療法)とは:
・補助的療法の基礎となる原理は、西洋学的な二元論ではなく‘心と体は一体化している’→人間をホリスティック(身体面・精神面・社会面・スピリチュアル)に捉え、理解し、より包括的にアプローチする方法である。
・病を持つ人々を理解する‘癒し=ヒーリング’は、治療としての受身的なセラピーだけではなく、療養者自身が取り組むことにより免疫機能とQOLの向上に深く関与し、その人のなかで次第に調和がとれていくプロセスに関わっている。癒しは自らの人生をマネジメントしている実践的感覚をもつ事により心の充実感が得られることを目的としている。
・日本では、支持療法(サポーティブケア)と呼ばれ、医学的代替療法(Alternative medicine)とは逸している。
 
コンプレメンタリーセラピーの種類
 
■コンプレメンタリーセラピーのアプローチは種々様々で120以上の方法があり、各専門家による介入方法もある。
■看護セラピー
1. 呼吸法
2. リラクセーション
3. マッサージ(リフレクソロジー)
4. 意図的タッチ:ケアとして用いるタッチ
5. セラピューティックタッチ:治療を目的としたタッチ
6. アレキサンダーテクニックス
7. 音楽療法/絵画療法
8. アロマセラピー
9. ハーブ療法
10. イメージ療法/瞑想療法 など
 
コンプレメンタリーセラピーの効果
 
1. 病みなど心身の苦痛な症状を和らげる。
2. イマジネーションの広がりによりスピリチュアル・感情・精神力を高める。
3. 家族との絆を強めQOLの向上に繋がる。(‘今’目の前にいる人にとってのQOLは何か)
4. 多元的的に自由な選択とセルフケア能力を向上させることでセルフマネジメントしている感覚を得る
5. 自然治癒力を癒しの原点に免疫力を高める。
6. バランス感覚が保て癒しの効果を得る。
7. セラピーを組合わせることで医療費の抑制効果に繋がる。
 
コンプレメンタリーセラピーの促進因子/抑制因子
 
抑制因子
・痛みや不快な症状が続き自分のことが充分にできない
・自己決定能力が不足している
・休息や睡眠不足が続いている
・不安や孤独感で気分が乗らない
・病状について明確でないことによる考え方の歪み
・療養者が抱えるストレス
・身体的な抑制がある
 
促進因子
・自分自身を表現し自分の動きを作り出すことができる(セルフケア)
・自己決定することができる
・生活のリズムを整えることができる
・自己エネルギーレベルを認識できる
・他の人との交流で自己認識できる
・病状を理解でき心の奥にあるかけがえのないものを発見できる
心の在り様に向き合うことができる
・身体を動かすことで自己効力感が高まる
 
コンプレメンタリーセラピープロセス
 
 癒しを目指すセラピーは、意識を集中させ関係性のなかで技を実践し、全体の調和と癒しの効果を図る。
 
1. 看護面接をする(本人の希望を最優先する)
2. 療養者のエネルギーレベルを査定する
3. 療養者に適切な情報を提示する
4. 療養者の選択を尊重する
5. パートナーシップを図る







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