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2.4 表面振動による異常検知技術
 本年度の機関の表面振動解析による機関内部の微小変化の検知対象項目は、以下の3項目である。
(1)動弁系摩耗
(2)主軸受メタル摩耗
(3)ピストン摩耗
 これらの項目は、従来から使用されている温度、圧力、流量等のセンサでは異常の検知が困難である項目であり、かつメンテナンスに機関停止など多大な工数が発生するものを基準として設定されている。
 
 本研究では機関1台を擬似故障試験用として用意した。下表に供試機関の仕様を示す。
 
表2.4.1-1 供試機関の仕様
機関形式 立形単動4サイクル直接噴射式過給機付き水冷ディーゼル機関
機関名称 6N165L-EN
定格出力/定格回転数 530kW(720PS)/1200min-1(rpm)
気筒数 6(直列)
シリンダ径/ストローク 165mm/232mm
正味平均有効圧 1.780MPa(18.14kgf/cm2)
平均ピストン速度 9.28m/s
筒内燃焼最高圧力 14.7MPa(150kgf/cm2)
過負荷 10%過負荷:60分(12時間毎)
回転方向 反時計方向(左)(ハズミ車側から機関をみて)
着火順序 1-4-2-6-3-5-1(着火間隔:120°)
 
始動・停止方式 ・機側発停、故障停止(手動始動、手動及び自動停止)
・始動方式:セルモーターによる電気始動
・自動停止方式:電磁ソレノイド(DC24V、30A)
使用燃料油 A重油(JIS.K-2205 1種2号)
 機関入口での動粘度は3.6〜14cStのこと
使用潤滑油及び潤滑方式 ・機関システム油
 ・潤滑油サンプ方式:共通台床組込サンプ
 ・機付ポンプによる強制潤滑方式
 ・潤滑油の種類:A.P.I.サービス区分CD級
           粘度:SAE No.40、T.B.N.: 9〜15
・過給機油:機関システム油からの分岐注油
・弁腕油:機関システム油からの分岐注油
・ガバナ作動油:機関システム油と同一油種
冷却方式 ・強制冷却方式
 シリンダ及びシリンダヘッド :清水
 潤滑油クーラ、空気冷却器及び清水冷却器 :海水
 ピストン :潤滑油
ターニング方式 ターニングバー
 
 本研究では、上記(1)〜(3)の項目について、機関の表面振動で異常を検知するため、最終的に以下の計測位置での計測を試みた。
1)ライナ中心横ブロック表面(以降,*気筒横ブロックと表示) ・・・図2.4.2-2,-3参照
2)ヘッド表面(以降,ヘッドと表示) ・・・図2.4.2-4参照
3)主軸受横のブロック表面(以降,*主軸受横ブロックと表示) ・・・図2.4.2-5参照
 
図2.4.2-1 振動計測位置
 
 
図2.4.2-2 第2気筒横ブロック
 
 
図2.4.2-3 第5気筒横ブロック
 
 
図2.4.2-4 第2気筒ヘッド
 
 
図2.4.2-5第4主軸受横ブロック
 
 
図2.4.2-6 第2気筒ライナ
 
 一方、詳細は後述するが、現在稼動させている従来形センサで構成された監視診断システムにおいて、各計測項目の正常値は、機関が正常かつ現地で稼動させる状態(舶用の場合は海上公試以後)で、機関出力との相関を一度計測、算出する。
 そこで得られた関係式から、常時機関出力を監視することで、各計測項目の正常値をリアルタイムで求めている。
 
 したがって今後、機関表面振動解析のアルゴリズムを従来形センサで構成された監視診断システムに統合させることを考えると、各々の振動値は機関の出力との相関で正常値を設定してリアルタイムで表示させる必要がある。
 
 各計測位置での負荷による変化を調査した結果、次ページ以降に示すとおり、いずれの計測位置においても負荷の増加に伴って、振動が増加することが確認できた。







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