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はじめに
 
 本報告書は、競艇益金による日本財団の助成事業として、社団法人日本舶用工業会が平成14年度〜15年度の2ヵ年にわたり実施した「内航船用機関遠隔診断システムの実用化に関する開発研究」事業の成果をとりまとめたものである。
 
 国の策定した次世代内航海運ビジョン(平成14年4月)及び、内航海運の活性化による海上物流システムの高度化についての答申(平成15年12月11日)では、環境対策等の社会的な課題に対応し、かつ、我が国経済の活性化と産業競争力の向上を図るためには、内航海運の活性化を図り、高度かつ全体効率的な物流システムを構築することが重要である旨の基本的方向性が示され、また、新技術の開発・普及や社会的規制の見直しが重要である旨指摘されており、その具体的な方策の一つとして高度船舶安全管理システムの構築・普及が位置付けられている。
 
 高度船舶安全管理システムは、船舶の運航管理の高度化による安全性の向上と効率化を目指すものであるが、その普及にあたっては、船舶検査や船員乗組体制の社会的規制の見直し等環境整備の必要性についても指摘されている。
 
 国土交通省海事局において平成13年度〜平成16年度にかけて実施している「高度船舶安全管理システムの構築」事業では、IT技術を活用して内航船主及びメーカーによる自主的管理体制(船上におけるトラブルへの対応を含む。)を確立するとともに、機関の状態診断技術・システムを導入して、従来の検査等による安全性確保と同等の効力を確保し、もって船主負担の軽減を図っていくことを主たる目的としている。その内容は、
(1)機関の状態や保守管理状況に関するデータの管理システムの検討、
(2)通信技術を活用した船上トラブルサポートの検討、
(3)既存の機関モニタリング・診断システムを評価し、その信頼性や開放検査項目との対照関係を検証する
などであり、いわば一定の技術的要件を備えた船舶の安全性について技術面からの裏づけを得るものである。
 
 一方、業界としては、これまで各社それぞれ機関診断技術を研究してきたが、内航船業界の置かれた環境も相侯って、内航船用機関向けの実用に耐えうるものは開発できていなかった。
 
 今回、国自らが一定の技術的要件を備えた船舶に対する規制の見直しへ動き出したことは業界にとって千載一遇の機会であることから、関係各社のこれまで蓄積されたノウハウを結集し、当会が平成11〜13年度にかけて実施したITを活用した舶用機器のアフターサービスの充実に関する調査研究、並びにS&O財団における関連の調査研究成果等を活用して、今般内航船向けの低価格で実用性のある新規センサーを用いたモニタリングシステム、機関状態診断プログラム、陸上支援システム等、内航船用機関遠隔診断システムを構成する要素を平成14年度より2か年かけて開発し、これにより、規制の一層の合理化を促し、もって内航船舶の近代化と舶用工業界のブレークスルーを目指すものである。
 
 本事業の実施に当っては、内航船用機関遠隔診断システム研究委員会を組織し、委員長に古川親雄氏(日本海事協会機関部)を選出して、実施計画の検討・確認、並びに成果のとりまとめを行った。
 
 貴重な開発資金を助成いただいた日本財団、ならびに本事業の推進にご指導ご助言いただいた国土交通省海事局へ感謝申し上げるとともに、多忙な中で貴重な時間を割いてご協力いただいた研究委員会委員ならびに船主を始めとする関係者の皆様にはひたすら感謝にたえない。この機会を借りて御礼申し上げる次第である。
 
 平成16年3月
 
(社)日本舶用工業会
 
内航船用機関遠隔診断システム研究委員会
委員名簿
(敬称略・順不同)
 
氏 名
所属・役職
委員長
古川親雄
財団法人日本海事協会・機関部ISM主任審査員
委 員
濱田 哲
鉄道建設・運輸施設整備支援機構・技術支援部次長
 
(前任:木村信孝)
 
松本 弘
阪神内燃機工業株式会社・常務取締役
 
佐藤政治
ヤンマー株式会社・特販営業部専任部長
 
佐藤 浩
株式会社赤阪鐵工所・技術営業担当部長
 
佐々木正敏
渦潮電機株式会社・技術開発副部長
 
小林幸一
古野電気株式会社・企画課長
 
籠宮茂樹
明陽電機株式会社・技術部技師長
アドバイザー
 
蔵本由紀夫
吉祥海運株式会社
 
沼野正義
独立行政法人海上技術安全研究所
 
西尾澄人
関係者
 
大谷正樹
阪神内燃機工業株式会社
 
大島宗紀
 
岡田博之
 
佐藤直樹
ヤンマー株式会社
 
高野洋一
株式会社赤阪鐵工所
 
渡瀬 守
 
矢野浩二
渦潮電機株式会社
オブザーバー
 
松月 正
国土交通省海事局総括船舶検査官
 
小柳康一
国土交通省海事局検査測度課
 
大谷雅実
国土交通省海事局舶用工業課
 
黒澤 茂
 
(前任:竹内智仁)
 
森吉直樹
 
(前任:村上 崇)
事務局
 
吉田英次
社団法人日本舶用工業会
 
村上 直
 
神内邦夫







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