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はじめに
[子供の居場所づくりと父親の社会参加]
 
お父さん達への10の提言
 子ども達が健全な社会人になるためには、子どものころから多様な大人とふれあうことが大切です。あなたの力を日本の未来を背負う子ども達のために注力しましょう。子ども達と接するには、次のような心がまえを持ってほしいと思います。
 
1. 主人公は子ども達。子ども達にあなたの気持ちを押しつけず、子ども達の気持ちをあなたが受け入れよう。
 
2. 子ども達が仲間どうしでぶつかりながら、自分達で考え、問題を解決していくのを、辛抱強く見守ろう。
 
そのために
3. 教えることは学校にまかせ、子ども達の能力を引き出すことに専念しよう
 
4. 子ども達が楽しむことを、自分たちも楽しもう
 
5. 子ども達の知恵や意欲を大いに取り込んで活動しよう
 
6. ほかのお父さん達とも友達になろう
 
7. 先生方も上手に誘い込もう
 
8. 活動をしていないお父さん達にも、参加の呼びかけをしよう
 
9. 出来ればお母さんも入り、家族ぐるみで活動しよう
 
10. 子ども達が好きなことをしていきいきとしてくれば、それがあなたの勲章になります
 
(財)さわやか福祉財団 理事長 堀田 力
 
=「おやじの会」立ち上げに向けたお父さん達と関係者の奮闘のものがたり=
まえがき
 学校完全週5日制の導入に伴い、今、休日の子どもの居場所づくりが、話題になっている。
 文部科学省は、平成16年度より、本目的のために、平日の放課後と休日のこどもの居場所づくりに関連して全国でコーディネーターの配置や協力者への費用負担を検討している。そこで、さわやか福祉財団では、この事業の重要性に鑑み、首都圏および、全国のいくつかの地区で父親の社会参加の典型例として広がりつつあるいわゆる「おやじの会」の実態および、子どもの居場所づくりにかかわることができるそれぞれの地区のNPO/ボランティア等団体を調査(プログラム調査)することにした。また、首都圏のいくつかの小学校では、当財団が、「おやじの会」の立ち上げ支援に積極的にかかわることで、より実践的な取り組みを行った。
 本報告書はそのまとめであり、これを参考に、より多くの地域で、父親が社会参加の第一歩を踏み出されんことを期待したい。
 
こどもの居場所づくりと父親の社会参加
 古来、子どもは父親の背中を見て育つといわれている。
 父親の日常とは違った姿を見て子どもが、社会性を身につけ、自立することが本事業の主たる狙いであるが、実は、この事業にはもうひとつの狙いがある。それは、父親の社会参加である。
 いまの、父親、特に、サラリーマンといわれる勤労者は、本当に仕事に忙しい。企業を取り巻く、経済的、社会的な環境が激変する中、仕事をこなすだけで精一杯、子どものことは、母親任せという家庭が多いのではないだろうか。
 このままでは、日本の家庭及び企業社会は何も変わらず、今までと同じであり、少子高齢化が避けられない21世紀の日本の将来はないといっても過言ではない。
 昨今、企業の社会的責任が、マスコミを騒がせているが、その意味でも勤労者の一人一人、特にこれからの企業社会を中心的に担っていく30才台、40才台の勤労者は、人生の複線化を視野に入れておくことが望ましい。
 ここでは、そのための社会参加の方法として、子どもの教育に父親がかかわることを提唱したい。
 
 当財団では、父親らが休日に、主として学校を拠点として子ども達と交わることを奨める観点から、小中学生の父親らが中心になり、休日に、子ども達に学校やPTAで出来ないような体験を企画実行するものを立ち上げ、または発展させたいと考える。
 最近のほとんどの「○○小学校おやじの会」はこれに該当する。
 因みに、おやじの会の実数であるが、全国で調査したものはないが、日経新聞によると全国で2,000位あるといわれている。このなかには、上記の当財団が奨める「おやじの会」とややニュアンスの異なる「おやじの会」、具体的には、地域の生涯学習講座を受講した男性メンバーが中心になって地域で活動しているものや、地域の男性が、趣味やボランティアを通して交流を図ることを主眼としているものや、幼稚園や保育園児の父親や卒園児の父母の交流や園行事のサポートをしているもの等も含まれている。
 これらも、父親の社会参加や教育参画にかなっているが、学校を拠点とすることで、より多くの父親らの参加や参画が期待でき、ひいては、多くのサラリーマンの社会参加に資すると考えるからである。
 
 日頃は一緒に遊ぶ機会が少ない父親と思い切り遊びを楽しめる。最初は、お客様扱いで楽しませてもらっているが、慣れてくると、お手伝いとか、協力者として関わることで子どもの中に地域の人間としての自覚が生まれてくる。また、年下の子どもと先輩として関わる機会が増え、責任感のようなものが芽生えてくる。家庭にいる時とは違う父親の顔や姿を見ることで、父親に対する尊敬の念みたいなものが生まれてくる。友達の父親の活躍する姿を見て、友達への親しみを感じる。専門知識を持ち、社会の第一線で活躍している父親が子ども達と関わることが、新鮮な刺激になって子どもの夢や希望が膨らむ。
 
 仕事一辺倒ではない地域社会にも軸足を置くバランスのとれた地域市民になれる。仕事のストレス解消、気分転換に繋がる。地域社会に新たな友人が出来たり、活動を通じて学校の先生方の苦労や大変さが理解できるようになる結果、自分自身の成長が体感でき、これが、地域での父親の居場所づくりに繋がる。家族のなかでの父親の存在感が増し、家族内での話題、特に母親との共通の話題が増える。
 
 先生方の大変さを自然のうちに理解して貰える。先生方に良い意味での緊張感のようなものが生まれると同時に、地域に支えられている、一所懸命にやっていれば、地域が支えてくれるといった安心感も出てくる。
 
 地域の人がこの活動を見ることで、子ども達のために地域をもっと良くしようとの気運が生まれてくる。地域に、学校が非常に重要な存在であるとの気運が芽生え、学校をまちづくりの拠点にしようとの意識が生まれてくる。







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