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2001/11/05 毎日新聞夕刊
熊本・川辺川ダム問題 民間研究会「ダム不要」報告書−−関係者に大きな波紋
◇「反対主張の根拠に」/「推進の姿勢崩さぬ」
 国が計画を進める熊本県の川辺川ダムを「不要」と結論づけた民間研究グループ「川辺川研究会」の報告書は5日、関係者に大きな波紋を広げた。球磨川の大洪水は、部分的な堤防かさ上げなどで防げるというのが報告書の内容だ。地元のダム反対派は「我々の主張の根拠になる」と建設阻止に期待をかける。一方、推進派は「ダム建設が最善」という姿勢を依然として崩していない。
 「すごい報告書だ。我々が直感していたことが裏付けられた」。球磨川漁協のダム反対派、毛利正二・八代川漁師組合長は声を弾ませた。ダム本体着工の最終関門となる球磨川漁協総会は目前。「すべての組合員に報告書を読んでもらい、ダム建設阻止に持ち込みたい」と期待を込めた。
 同じく反対派の塚本昭司・元理事も「我々が数字的なものを出すのは知識や技術的に難しいが、これで体験として主張してきたことが数字的に裏付けられた。重く受け止めている。ぜひともこの方向でやってもらえるよう国交省に検討してほしい」と語った。
 臨時総会での漁業補償案可決をめざす球磨川漁協の木下東也組合長は「このような報告書が出ても国は絶対に基本計画は変えないだろう。なるべく早く臨時総会を開きたい」と、方針に変更のないことを強調した。ただ「水害防止のために漁業権の消滅・制限を認めるのであり、漁業のためにはダムはないのが最良。国が『計画を見直す』と明言すれば当然それには従う」と複雑な胸の内も明かした。
 また流域19市町村でつくる「川辺川ダム建設促進協議会」会長の福永浩介・人吉市長は、市長室で「川辺川、球磨川は河川改修では不十分で、きちんとしたダムを造ることが最善だ」と語り、報告書について「これを受けてすぐに再検討することはない。三十数年前に結論は出ている。その後、河川改修が進んだと言っても、川幅が広くなったわけではない」と冷ややかな反応を見せた。
 国土交通省九州地方整備局の客観性検討委員会で委員長を務めた小松利光・九州大大学院工学研究院教授は「報告書を慎重に検討してみなければ何とも言い難い」と前置きした上で「費用対効果を中心に論じているような気がして、河川全体の安全策を本当に念頭に置いているのか疑問に感じる。洪水被害が起きれば結局は行政の責任が厳しく問われる。検討委としては中立、妥当な結論を出した」と話した。
◇工事事務所長「技術的可能」−−菅直人・民主党幹事長に
 民主党の菅直人幹事長ら同党川辺川問題調査団は5日、人吉市の国土交通省川辺川工事事務所を訪れた。菅幹事長が「堤防のかさ上げで十分だとする報告書の新聞記事が出ているがどうか」とただすと、塚原健一所長は「環境・社会・経済(への影響)すべてを無視すれば、技術的には可能だ」と答えた。
 菅幹事長が「それならいいじゃないか」と言うと、塚原所長は「堤防のかさ上げでダムより有利だという意見は、間違っていると言わざるを得ない」と答えた。
 
 
 
 
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