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ISEWAN
伊勢湾海上交通センター開局
 平成15年7月1日、全国で7番目の海上交通センターとして愛知県渥美半島の先端、伊良湖岬に建設された「伊勢湾海上交通センター」が、正式に運用を開始しました。
 伊勢湾周辺は海の難所といわれ、プレジャーボートの運航にも、十二分の注意が必要です。会員の皆様も航行安全確保のため、予め交通センターの情報を確認し、万一の海難事故防止に心がけてください。
 
 
伊良湖水道は海の難所
 伊良湖水道は、伊勢湾・三河湾の玄関口にあたる伊良湖岬と神島との間にあります。朝日礁、コズカミ礁といった浅瀬が点在し、航路の幅が一二〇〇メートル、長さが三九〇〇メートルしか無い大変狭い航路となっています。また、伊勢湾の出入り口であるため、漁船などの小型船から喫水の深い超大型タンカーまで、多種の船舶が混在し、一日約七三〇隻が通航するなど、船舶交通が極めて輻そうする海域となっています。
 この海域では、過去五年間で二十隻の船舶が海難を起こしています。その内訳として、原因別では、乗揚げ三隻、衝突八隻、転覆二隻、機関故障三隻、その他四隻となっており、船種別では、タンカー一隻、貨物船三隻、プレジャーボート四隻、漁船七隻、その他五隻となっています。
 このように、伊良湖水道は危険度の高い海上交通の難所であるとともに、わが国有数の経済圏である中部圏を支える海上物流ルートとして、日本各地や世界の港とつなぐ要衝となっています。
 このため、伊良湖水道及びその周辺海域における船舶の安全かつ能率的な運航を確保するため、高性能レーダー等により海上交通の状況を常時把握・分析し、船舶の動静、気象、海象の現況等、得られた情報の提供と、海上交通安全法に基づく航行管制を一元的に実施する組織として伊勢湾海上交通センターが設置され七月一日から正式に運用が開始されました。
 これにより、航路及び周辺海域の海上交通状況をリアルタイムできめ細やかに把握することが可能となり、船舶交通の安全確保と船舶の効率的な運航(時間短縮)が図られ、海上物流の発展に寄与することが期待されています。
 運用開始で
1. 伊良湖水道航路で大型船の行き会いを行わせないための管制が発光信号(赤と緑のライトの点滅方式)から庁舎塔屋部に設置された7m×7mの電光表示方式に変更されたことにより、視認性が格段に向上しています。
 
レーダー運用卓
 
2. 船舶の動静がリアルタイムで把握できるようになったことから、管制計画をこれまでより効率的に設定できるようになるとともに、船舶航行の安全に必要な各種情報を無線電話や電光表示板で提供できるようになり、より安全で経済性の高い船舶運航が可能となりました。
 
 東 一之所長以下四四名の職員で運用しています。整備課、情報課、運用管制課の三課体制により運用しています。
(各課の業務内容)
整備課・・・機器、施設の保守、整備に関すること等
情報課・・・海上交通情報の収集・提供に関すること等
運用管制課・・・
航路入航船舶の管制に関すること
危険回避のための情報提供に関すること等
 伊勢湾海上交通センターは、全国で七番目の海上交通センターです。各地のセンターで培ったノウハウを生かした、通航船舶の動静を把握するためのレーダー・高性能TVカメラ等の最新機器が整備されています。特に、レーダー運用卓のグラフィックディスプレイでは、レーダーから入手した船舶映像がコンピューターで図形化処理され、地図データ等と合成して、針路・速力等刻々と変化する最新の状況が表示されます。
 管制官は、これらの様々な情報を基に、船舶とVHF無線電話等で連絡をとり、必要な情報提供を行い、二四時間体制で伊良湖水道及びその周辺海域における通航船舶の安全確保に努めています。
 ちなみに、当センターのグラフィックディスプレイに表示される内容は、次の通りです。
 
○船舶の識別符号、大きさ、針路、速力
・識別符号:識別のため予め付与した符号
・大きさ:大・中・小円
・針路、速力:ベクトル表示
 数値表示を選択した船舶は、指示部に針路、速力が数値表示される。
 
 
○延長ベクトル
・選択した船舶の任意の時間後の船位
○特定地点からの方位・距離
・指示部に数値表示
○衝突関係となる船舶
・選択した船舶は□印の大きさ表示となり、この船舶と衝突関係となる船舶は点滅表示される。
・指示部には、最接近時間と最接近距離が数値表示される。
○海岸線、航路、危険水域
 
建設裏話
 伊勢湾海上交通センターの整備箇所は三河湾国定公園内にある風光明媚な場所で、年間を通して多くの観光客が訪れております。また、同地は松尾芭蕉の句(鷹一つ見つけてうれし伊良湖崎)にも詠われている渡り烏「サシバ(鷹の一種)」の通過地として有名であったことなどから、県、地元渥美町、自然保護団体等との度重なる交渉が必要でした。その結果、海上交通センターの必要牲について深い理解と多大なご協力をいただき、当初の計画どおり工事を完遂することができました。
 
開所式の状況
 
 平成十年度にシステム設計を開始し、平成十二年度から敷地購入や局舎建設等の本格的な建設工事に着手しました。平成十四年度の機器設置をもって建設工事は完了し、総事業費は約十九億円でした。
 
一口メモ
・レーダー塔の標高は?
 伊勢湾海上交通センターの建設場所は標高50mで、鉄塔の地上高は41mであることから、レーダー塔の高さは、標高91mとなります。
・高性能TV力メラの性能は?
 倍率350倍の力メラです。







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