【佐藤氏】
大船渡市ヨット協会の佐藤でございます。ヨット協会の活動を、まずはご紹介したいと思います。会員数40数名ぐらいおります。その会員数と実働部隊となると、かけ離れた状態であります。
ヨット教室を開いたり、釜石大船渡間、気仙沼大船渡間のヨットレースをしたり、元旦には初日の出クルージングをしたり、体験学習として大洋学園の子どもを毎年乗せたりとか、そういうものをやっております。以前は、家族でヨットを楽しんでもらおうということで、1泊2日で隣の陸前高田までヨットで行き、キャンプファイヤーをしたりして楽しんでおりました。
我々の一番の大きな課題は、クルーが育たないということであります。あまり海が近いと、皆さん日曜とか祭日は陸のほうに行ってしまうのです。そして、内陸の人が逆に海を求めて来る。そういう現実があります。
昨日、気仙沼から「日本ぐるっと一周・海交流」の旗を持って、気仙沼市長代理から大船渡市長に渡したわけですけれども、海で遊ぶのは、決して高価なものではない。ひとつの船があれば、動力は全部風です。自然で走るというわけです。安ければ300万円で小さなヨットを買えます。油代が1000円か2000円あれば、一年間楽に動きます。そういう経済的な効果がある。
漁協の方も来ていると思うんですけど、ヨットマンというのは、決して、海を汚したり、海で波を立てたりしない、ということを話しておきたいと思います。ヨットというのは時間をかけて、本当に海と一緒に戯れるんだと、先ほど講演で今給黎さんが言っていたけれども、自然の中で色々なことを教えてくれるのがヨットではないかなと思って、一生懸命頑張っています。
【米村氏】
ありがとうございます。白幡さんには、大船渡の方々があまりご存じないようなことを気仙沼のほうでやっておられるので、そのあたりのご紹介をしていただきたいと思います。
【白幡氏】
気仙沼から来ました、大島汽船の白幡です。今、米村さんからお話がありましたけれども、大島、気仙沼では体験旅行について、非常に盛んに取り組みを行っております。その中でも、私が住んでおります大島地区が気仙沼地区の中でも比較的、先進的に体験学習を行っているところであります。
体験旅行を行い始めたきっかけは観光客の落ち込みというのが、一番の原因でした。というのは、17、18年前までにあった、離島ブームの頃は大体、大島を訪れる観光客が年間45万人ぐらいおりました。それが近年になると35万人ぐらいに激減し、大体20%ぐらい落ち込んでいます。
それと、観光客のニーズが変化しているということです。従来の「物見遊山的観光」から、地域の文化とか自然に触れる体験をしたいという嗜好に変わりつつあります。
それで、島内で何かできないかということで、観光業者が話し合いをしました。幸い、大島には国民休暇村があります。ちょうどそこで、体験学習を年に数校ぐらい受入れていたんですね。もっと何とか大規模にできないものかという風な話があったときに、ちょうどJR東日本の仙台支社の観光開発グループの担当者から、「大島に体験学習の予約センターを立ち上げてみてはどうか」という話が持ち上がりました。
その頃、総合的な学習の時間で体験学習を取り入れる学校が、ものすごく増えてきたんですね。さっそく体験メニューの検討、インストラクターの養成ということで、海を活用したメニューを何とか作り上げることはできないかという風に考えてきました。
島の学校というパンフレットの中に、大島でできる体験のメニューがあるんですけれども、大体18個ぐらいあります。海を使った体験もあります。当初は、体験メニューは6つのメニューでスタートしたのですが、色々と海に親しんでもらうためにはどういったメニューがいいのかな、と検討しました。
幸い、大島には無人島があります。大前見島、小前見島という無人島がございまして、そこで「何か無人島体験を作り出してやろうじゃないか」とか、あるいはまた「養殖いかやカキ、ホヤ、ホタテ、ワカメなどを観察させる体験はどうか」と侃々諤々いたしました。そうして18のメニューを作り上げました。
それと同時に問題になったのが、指導者です。指導者といっても例えば直接海の産業に従事している人が指導者になることが、最も重要だということで、その方々を対象にした研修を何回か開催し、「にわかインストラクター」を作りました。
しかし、実際にやってみますと、平成12年度に大体7校しか来ませんでした。7校で大体1,000人ぐらいの参加者がありました。そして、平成13年度になりますと、仙台、盛岡、群馬から10校で1,700人ぐらいでした。それから、平成14年度になりますと、仙台、関東方面から20校で2,400人ぐらい。そして、今年度は、8月現在ですけれども、21校で2,500人ぐらいの子どもさんたちが体験学習に来ています。
子供さんたち以外にも、一般の体験なさるグループ、例えば、家族とかご婦人とか、そういう方々が年間大体1,000人以上体験をされています。実質的に、例えば35万人の観光客の数から見れば、少ないパーセンテージですけれども、まだまだ伸びる要素はだいぶあると考えております。
来年度は今まで、関西方面に行っていた修学旅行を取り止めて、気仙沼、大島に行って見ようじゃないかということで、もう3校予約が入っております。
今、全国の各地域で、地域起こしということでグリーンツーリズムに取り組むところが非常に多いんですね。気仙沼にも、アグリアスツーリズム協議会というのがあります。アグリアスツーリズムというのは、アグリっていうのは農業の、アグリカルチャーの略です。それから、リアスの文字をもじりまして、アグリアスという造語を作りまして、気仙沼版のグリーンツーリズムをどんどん広げて、体験の先進地にしようということで、取り組みを行っています。
気仙沼は海だけではなくて、山の体験もできる地域もあります。私は島に52年間住んでいるんですけど、売れる素材というのが結構あるんですね。ただ、素材をうまく活用しきれていません。我々が当たり前だと思っていることが都会から来る子どもたち、人たちにとっては当たり前ではないんですね。非常に斬新に写るわけですよ。
新月地区という山里があります。ここは山林とか農業とかをしているところなのですけど、そこに、私、実は山里体験をする仕掛けをちょっとしております。それで、海と山の体験ができれば、海のフィールドと山のフィールドができます。そうすると、一気に呼び込む人数も増えます。
一泊目は山の体験していただいて、次の日は海の体験をしていただく。あるいは、海の体験をしていただいて、次の日は山の体験をしていただくという風になると、入れ込み数はグッと増えてきます。気仙沼には、市内、大島、階上地区にも宿泊所はいっぱいあります。しかし、宿泊所は一杯あるのですが、体験フィールドが無いために、多くの学校を呼び込みできないというのが現状です。だから、体験できるフィールドを増やすことによって、まだまだ多くの学校を呼ぶことができるのではないか、と考えております。
今日、私は大船渡まで車で来たんですけど、湾が天然の良港という感じで、非常にいい条件が備わっているな、と感じました。養殖の施設もたくさんありますし、色々と利用できるところがあるのではないかと思います。これからの観光は、今まで、その地域に行って、見る・食べるというのではなくて、その地域の文化に触れるというのが非常に大事になってくるのではないかと思います。そのためには、やはり体験が非常に重要なポイントになってくるのかなと思います。以上でございます。
【米村氏】
どうもありがとうございました。白幡さん、ちょっと興味深いことおっしゃっられていますので、もう少しご説明していただきたいと思います。子どもが海でそういう体験をしようという時、本当は何日ぐらいあったらいいとお考えですか。修学旅行で体験するとなると、日帰りとか、一泊二日とか、というのが、多いと思うのですが、理想的にはどれくらいの日にちをかけてやった方がいいとお考えでしょうか。
【白幡氏】
実は、仙台からですとね、2泊3日で来られるんですね。関東の修学旅行も2泊3日が多いです。ただ、修学旅行というのはいろんなところを詰めて、時間、タイムスケジュールを組んで、1時間ごとに次の観光地、次の観光地という感じの回り方をするんですね。実質的には何も思い出に残っていないというのが実情なのですね。
東京から来るのであれば、3泊4日ぐらいで、例えば山の体験、それから海の体験をしていただきたいと思います。あるいは、仙台から来る場合も2泊3日で時間的な余裕がありますので、欲張らずに一つの目標を持って、じっくりと島内を見ていただきたいという風に考えております。
【米村氏】
例えば、アメリカでは、サマースクールを長いところでは1ヶ月以上やっているところもあるのですが、大島で子どもが1ヶ月過ごせるような条件はあるだろうか。どうでしょう。
【白幡氏】
島内には国民休暇村がありまして、それから旅館が10件ぐらいあります。民宿が30件ぐらいあります。そうすると、大体1つの学校の生徒数は150人とか200人とか、大体100人以上なのですね。そうしますと、学校によっては最初から民宿にしてくれということで、グループ毎の宿泊になります。
そうすると、当然宿に入ると人数が少ないですから、宿の女将さん、それから従業員なんかもですね、子供の名前と顔を覚えちゃうんですね。そうしますと、子どもたちも慣れ親しんで、その中で、家族と一緒になって料理を作ったりとか布団上げしたりとか片づけしたりとか、お客さんになっていながら、また宿の人間としての作業等もしているということで、私は1週間、10日のスパンで滞在することっていうのは可能だと思います。
【米村氏】
どうもありがとうございました。ここまでのお話をふまえて、今給黎さんにお話をしていただきたいと思います。今給黎さんは「子どもがやりたい」と言うと、「親の許可を取れたら乗せてやる」ということなんですが、もし子どもに少し変わった体験をさせたいという風に思ったら、大体何日ぐらい必要だと思いますか。あるいは、何日というより、何回ということかもしれませんが。
【今給黎氏】
最低3日は必要かなと思います。人に慣れるというのもあるんでしょうけど、環境に慣れるというのが、まず、いろんなところで、3日必要だと思います。1日目、2日目っていうのは、子どもも自分を出せないんですね、照れたりとかして。ようやく楽しめて自分を出せるのが、2日目の終わりから3日目ぐらいなんで、それぐらいは必要だと思います。大人も一緒だと思うんですけれども。
【米村氏】
そうですね。私もしみじみ感じるのが、1週間ぐらいいるとなんとなく、その地域に行ったという感じになるかなという気がしています。今の体験学習であるとか、あるいは、グリーンツーリズムとかアグリアスツーリズムとかいいますけれども、そういうスパンだと実は本当の面白さにあんまり触れないで帰ってしまう。
今の日本人の旅行のスタイルは本当にそういうものが多いですから、地域に触れ合う面白さみたいなものを、子どもも体験しようみたいなことを、もうちょっとゆったり取り組んでみるのもいいのではないかなと感じます。多分、これからそうなると思います。
本当の意味での交流を進めていこうとすると、まだまだ日本人の行動が忙しすぎるという感じがしないでもない。これは、実際にはお勤めの関係、学校の授業の関係があるわけですけれども、例えば、夏休みはまとめて休みが取れるという風になっているわけですし、修学旅行なんかも、長い学校ですと1週間という単位でやってるわけですから、うまく活用するような仕掛けをやると、もう少し質が変わってくるんじゃないかという感じですね。その辺をぜひトライしてみてはという感じですね。
佐藤さんにもそれに関連してお伺いしますと、例えば、親戚の子どもを一週間お預かりすることになったときに、例えばイメージとして大船渡は一週間持ちこたえられるか、いかがでしょうか。
【佐藤氏】
今給黎さんが先ほど講演で言っていたように、海で遊ぶ、そして海で遊ぶものには泳ぐだけじゃなく、ヨットもあります。そして大人が率先してまず遊んで見せなさい、そういうことをやっていけば、一週間でも10日でももつと思います。
ヨーロッパの方へ行くと、ヨットハーバーというのがきちっとなっているんですよ。そして、ヨット、クルージングが大きな体験学習の1つであるということです。ヨットのキャビンの中で生活できるんですよ。家族で来て、週末にヨットハーバーでハイキングしたりして交流を深めるということです。そういう文化とか、体験が日本にも来るだろうと予測していたんです。バブル崩壊の関係でそれどころじゃなく、リストラなどで世の中が大きく変化しましたけどね。
まあ、いずれ海洋国日本と言われていきたいのですが、現在は「海で遊ぶ」ことが危険だ、危ない、危ないところには行くな、そういう時代に入っていて、おかしな状態に日本がいるんだなと思います。
我々もヨット協会で金華山沖にクルージングやったりするんですけど、イルカが一緒になって、月明かりと星明りの中をシルエットになってヨットと一緒に30分ぐらい戯れるという貴重な体験をしたこともあります。そういうヨットを通じた遊びを今の子どもたちにも伝えていくのが、我々の務めではないかと思います。ヨットの元祖である気仙丸をせっかく作ったのに、飾り程度のお祭にしか出てない。やっぱりそれも、今後の方向性として検討していく価値があるんじゃないかなと考えております。
【米村氏】
ありがとうございました。大船渡にもいっぱい資源があって、それが活用されてないのではないか、ということですね。
特に海の場合、都会からつれて帰った子どもは最初の2、3日は大喜びで泳いだりするんですね。たぶんこれは親の責任もあるかも分からないけども、大体3日、4日たつと「つまんないから、帰ろう」という風な子どもが非常に多い。
田舎の子はどうかといいますと、ずっと遊んでいるかというと実はそうではなくて、逆に海で遊ぶっていうのは、まだガキだとか子どもっぽいという感じがあって、小学校高学年になってくるとあんまり遊ばない。中学校になるとほとんどもう遊ばない。島の中の子どももそういう感じですね。
高度経済成長に入ると「海で遊ぶな」というのが同時に出てきました。もう一回、海を楽しむという状況を取り戻すためには、子どもが海で自由に遊べるような環境とか条件をまず地域が作らなければ、どうも始まらないような気がするんです。例えば、大船渡には素晴らしい湾があるのですが、子どもが海で勝手に遊ぶような場所っていうのは、市内にちょっと離れないと無いような気がするんです。佐藤さんどういう風に見られますか。
【佐藤氏】
海が身近にあるので、あまり関心が無いというのが現状ですね。盛岡とか一関から来ている方たちが「やっぱりせっかくの休みだから海に行こう」ということで、2時間も3時間もかけて内陸の方から来るというのが現状です。自然はすべて危険で、登山にしたって何にしたって、危険率というのは同じだと思うし、やはりせっかく海のある町に生まれて、若い子たちが育っているのに、残念なのは、大船渡地区、気仙地区にヨット部が無いということですね。やっぱりこれも危険だと、教育上の管理上の問題、安全上の問題っていうのがありますけどね。せっかく恵まれたものがそばにありながら、それを最大限に利用できないものかなと、市民みんなでもう一度原点から考え直していっていい時期じゃないかなと思います。
宮古地区では解放区というのを設けて、そこの中で警察、海上保安部、漁協、市役所が協力して安全地域を設定しています。大船渡に合った、何かそういう発想をぜひ皆で考えていただきたいと思います。
【米村氏】
今給黎さんは、日本はもちろん海外でも港や地域の海の人たちと交流しているわけですけれども、こういうことを日本でももうちょっと考えたほうがいいんじゃないかと、思うことはありますか。
【今給黎氏】
日本人の癖なんですかね、何か自分のことを誇らないっていうか、自分の町のことも誇らない。「この町に何かありますかね。」と聞いても、「何も無いよ」というのがどこの町にもあります。
今、私がやっているのは、本当に小さな町、集落に入ったり、漁港にも入ったり、ということですが、そこで私がいいなと思うのは、私の年代とか女性だったら、みんなそうかもしれないですけど、本当に昔ながらの町並みとか、昔ながらの風習とか、文化とかを見た時に凄いなって思うのですね。
しかし、車でその町に行って、大体大きい道路行くとですね、町並みが一緒なんですね。「あっ、このチェーン店はここにもあるのか」ということがあって、何一つここだけの感動が無いんですよね。本当に人が住んでいるところ、本当に根付いて、住んでいるところ、郊外の新しい町ではなくて、古い所に行ったときに、その人たちがずっと築いてきたもの、守ってきたものを見た時に凄い感激するんですよね。それを自分の故郷と比べてみて、「あー、ここが違うんだ」って感動しています。
ファミリーレストランや大変すばらしい観光客が行くようなレストランではなくて、本当にそこで小さな食堂があったら、そこに行って食事をするというのがいいですね。白幡さんの島の学校っていうのを見て、「いいな、こういうことを自分はしたいな」と、ずっと思っていました。
よく漁村では磯釣り体験とか、養殖いかだ観察体験、塩作り体験、マグロ船漁師の体験とか、が書いてあるんですけど、きっと、これをやりましょうという時に、絶対地元の人は「こんなものに誰が来るの。」と言ったはずです。養殖いかを観察して、1人1時間1,000円と書いてあるんですけど、きっと地元の漁師さんは、これを提案された時に、「おー、そんなんで1,000円取っちゃ詐欺だろう」って言ったと思うんですよ。でも、子どもやお客さんたちがどんどん来れば、「こんなものがおもしろいのかな」ってなったと思うのです。
きっと皆さんでも、私もそうですけど、自分の田舎のことはよく気づいていないというのもあるし、あんまり当たり前すぎて、それをお金にしようとか、観光の目玉にしようとかいうのも、ちょっとまた変だなと思うけど、そういう魅力が普通にあるんだ、その普通さを凄いだろって言えるようになることが一番必要だと思うんです。
自分たちがこれは誇りなんだ、これは素晴らしいんだと思うためには、その人の意見を聞くのも必要だし、今度は自分がよそに行って、「あー、ここの古い町並みはいいな」と感動したものを自分のところで、自分たちの生活の中に探すというのが、一番大切だと思います。東京とか大阪とか、あんな町になんないほうが私はずっといいと思うんですよ。土があり、水があり、川があり、海があり、その音が聞こえてという環境、これほど賢沢なことはないし、その中で特有の文化、風習、家の形とか、墓の形とか、地元の方が地元の良さを気づくことが一番大切だなと思います。それから発展していくことは大いにあると思います。
【米村氏】
今、今給黎さんがおっしゃられたように、それぞれの地域が本当は素晴らしいものを持っているけれども、地元の人が案外評価してないんですね。
実は昨日、5回ぐらい大船渡に通って、ようやく私の望みを達成できたことが1つあるんですね。実はですね、サンマの刺身なんですよ。マグロの刺身とかそういうものは、いくらでも刺身定食という風にあるんですけど、サンマの刺身なんてのは、普通の家庭で食べるものだから無いよって言われて。それに近いような現象が日本の津々浦々にあります。
地域の食文化みたいなもの、地元の人にとって、これは貧しい時代に食べたものだし、お客さんに出すっていうのはちょっと気が引けるとかですね、そういうものが逆に外から訪ねた人にとって「こっちはこんな食べ方するのか」みたいな話がしょっちゅうあるんですね。そういうことをもう少し丁寧にやるためには、食べるっていうようなことも含めて交流会をやるっていうのも1つのいいチャンスではないかなと思います。
私の経験では、村が違うと食文化が違うっていうのはいくらでもあるんですね。もちろん日本海とか太平洋みたいなのは大違いということもありますが、ちょっと離れてるとこの魚はこういう料理方法では食べない、そういうのがいっぱいあるんですね。白幡さん、そういう経験はありますか。
【白幡氏】
地元の人はあんまり地元を評価しないというのは、その通りだと思います。気仙沼でもこういう話がありまして、観光客の方が気仙沼に行ってきた。それで、タクシーに乗ったらしいんですね。それで「運転手さん、どこか行くところ無いですか」って聞いたら、「ここに来ても、何にもねぇ」っていう風なことを言われて、観光客の方が「なんだ、せっかく来たのに」と、観光協会に苦情の電話を入れたんですね。
「これではまずいよ」ということで、気仙沼のタクシー運転手を集め、観光客がおいでになるんだから、そういうことを言わないで、気仙沼はいいところですよ、おいしい魚もいっぱいありますよ、という風におもてなしをしましょうという講習会を開いたんです。
食べ物についてですけど、気仙沼、大島でもそうなんですけど、意外とマグロの刺身とかカニとか海老とか定番が出てくるんですね、地元で取れるアイナメとかカレイとかヒラメとか、小魚をふんだんに出してやったら、喜ばれるのになと思います。せっかく東京から来たお客さんにマグロはないだろうと思います。地元の食材をもっと大事にして、お客さんに提供するのも1つのおもてなしだなと感じますね。
【米村氏】
どうもありがとうございます。佐藤さん、何かご意見ありますか。
【佐藤氏】
やっぱり、いっぱい楽しい遊びをしたら、次に期待するものは食べ物ですよね。やっぱりうまいものを食べたいと、タクシーで気仙沼まで行って、イワシ三昧、イワシフルコース食べてきたことあるんですけどね、やっぱりそういう身近で取れるもの、身近な土産土法というのか、地産地消というのか、そういうことをやっていくべきだと思いますね。
【米村氏】
ヨットで海のほうからアプローチしていったときにですね、こういう情報を取る場所は、日本にはありますかね。
【今給黎氏】
海では女性が少ないから、私は大切にされるのです。いつも思うのが、何で女の人は海沿いにいないのかなぁということです。マリンスポーツの方もそうなんですけど、海に関わる人、興味のある人に女性少ないなぁと思っています。海はもう男性社会。だから、私がちやほやされると思うんです。でも、もっともっと女性の意見を、食べ物にしても、港作りにしても、町づくりにしても、もっともっと聞いた方がいいと思います。
よくマリンスポーツの方とか、漁師さんとか、船の仕事をされている方たち、遊びと仕事がついていないということで、反目しているように思われているのですが、それも地域によって本当全部違うんですよね。
普通、都会であれば「お前何しに来た」みたいな感じで言われたりもするんですけど、地方だとすごく少ないですね。地方ではちゃんと人として向き合えるからだと思うんですよ。やっぱり、地元だと「お前、どっから来たんだ」「いやいや、何町だよ」とかそういう話で、遊びも仕事も越えて話せる部分があります。
私は鹿児島出身で、その地域は漁師さん多いです。いつも自分が唯一努力してることが、すれ違うときは頭を下げるか、手を振るかっていう挨拶をするっていうことです。今でもずっと全国来てしつこく私は漁船に向かって、挨拶したりしているんですけど、シャイなのかわかんないけど、フンって無視していくところもあるんですよね。だから、お互いがお互いを知ろうっていうのが、やっぱり必要で、海の世界は狭い世界ですから、反目しあうのではなくて、みんな仲良くして、「あー、海から大船渡変えようよ」と、みんなが手を組んでやればすごく面白いんではないかなと思います。
【米村氏】
佐藤さん、海をこういう風にしたい、海をもうちょっと楽しく使おうっていうことで、よそとかかわりを持つということを考え時に、現状はどんな感じで、どんなことがあったらいいなという風に思っておられますか。
【佐藤氏】
まず、ヨットマンとして感じるのが、海はみんなのものですよ、という意識を作って欲しいと思います。その中で、また海で生活している人を邪魔しちゃならないと、これが基本であると思います。やっぱり海の上、海で生活している人は大変な作業をやっていて、横で白い布張って優雅に走っているというのは頭に本当にくるでしょうしね。
お互いにそこは理解していただくことがこれからも大切だろうし、そのためにもやっぱり今日のフォーラムが一過性のもので終わっては、何にもならないのではないか、と思います。せっかく蒔いてもらった種をどう育てるか、どういった方向に大船渡を持っていくか、海を利用した遊びとか、観光とか水産に結び付けていくかというのを、これからみんなで議論して、方向性を見つけていくことが大切なのではないかなと思います。
大船渡には交流する場所が無いのではないか、そういう施設を作ってもらえれば、お互いに交流ができるんじゃないかなと思います、
7、8年前に大きなクルーザーが来たようです。森重久弥さんが乗っていたようですけどね、ヨットでもクルーザーでも日本を回っている船はいっぱいあるんですよ。その船が、「大船渡に来たが、どこに止めればいいのか」という時のための施設を作れば、利用する人は必ずいると思うんですよね。
【米村氏】
どうもありがとうございます。白幡さんからもご提示とかご意見みたいなのがありましたら、ぜひお聞かせ願いたいと思います。
【白幡氏】
気仙沼の場合は、9割ぐらいが漁港施設です。あと商業港がございまして、県の土木事務所管轄で、漁港だと県の漁港部なんですね、それ以外には特定目的岸壁っていうのがありまして、これだと旅客船とかいろんな船が泊められるわけです。
しかし、そういう場所は少ない。年に何回か大型ヨットやっぱり入ってきます。ところが、係船する場所が無いために、結局はまたどっか戻ってしまうというケースがあります、例えば、佐藤さんがさっきおっしゃいましたように、いつでもヨットが来た時に、「ここは使用可能ですよ」というような、そういうスペースがあれば、まだまだ海のレジャーを楽しむ方が増えると思います。
道の駅の場合、無料駐車場がいっぱいありますけど、海の駅の場合は、「無料駐車場」というような容易に船をつけられる場所がないのが現実だと思いますね。
【米村氏】
どうもありがとうございました。今給黎さんも最後に一言、お願いします。
【今給黎氏】
「海の仲間はみんな仲良く」ということを言いたいですね。今日のこの「日本ぐるっと一周・海交流」、私も一昨年ぐらいからかかわっているのですが、日本をぐるっと一周、船でしようよ、ということが最終的な目的ではなく、やはり海をもっと元気にさせようよ、海の町ってもっとすごい素敵だ、ということを地元の人がみんな分かって、もっともっと海をアピールしよう、海の町をアピールしようっていうことを目指していると思うんです。
今は、海の人たちがあまりにも細分化されていて、出会う場所がありません。海で出会っているんですけど、話をする場所が無いんですね。
昨日も子どもと一緒にヨットに乗らせていただいたのですが、赤い建物を見ました。一番、大船渡で目立つものでした。「海から見て目立つ建物だなぁ。あれ、何ですか、何ですか、交流センターか何かですか。何かの施設ですか。」と聞いたら、地元の方が「パチンコ屋だ」「すばらしい目印ですね」と言ったんですけど、海からしか分からないこと、そういうものが一杯あると思うんですよ。
大船渡は逆に岩手県内の人にも、また全国の人にも、逆にそういう発想でものを言える場所だと思うんですね。港湾が立派だ、こんな施設があるという、それもすごくアピールできることだとは思いますが、「大船渡の海の人間たちを見てみろよ、こんなすごいんだぞ。そして今からこんなことやっていくんだぞ。」ということが、私は一番大切なものではないかなと思っています。
そのようなことのための海交流だと思っていますし、また、これをきっかけにどんどん広がっていけばいいと思っています。
【米村氏】
どうもありがとうございました。実は、今、今給黎さんがおっしゃった通りで、当初、私たちが「港を何とかしたい」と思った時に、スタッフが海のことを知らない人間が大部分なものですから、ヨットで一周したらいいんじゃないかと話をしました。そして、何と日経新聞の見出しにも「ヨットでぐるっと一周」と、掲載されてしまったんです。実際にやってみると、ヨットのスピードや交流を丁寧にやるとかいう事を考えると、とてもじゃないけど、ぐるっと、そして、さっさと一周という感じではないんですね。
結果として、大幅な軌道修正として、まず隣同士ぐらいで、それすらお互いに海に関しては行き来があんまり無いじゃないか、町づくりみたいなレベルまで含めて、じゃあ、ヨットの人たちが交流しているかというと、実はそこまでいってないなということが言えます。ちょっと隣に行くと、ほとんど付き合いが無いんですね。それで、まず、そういうことをやろうじゃないかということが発想としてありました。
様々な世の中の情勢が、漁業も物流も、どんどん、量よりも質という感じになってきていますから、港の容量はどちらかというと、余ってきている状況です。そういう余裕のできた港をもうちょっと市民の生活の質を上げるために使おうじゃないか、ということをやるといいんじゃないかなと思います。
ですから、とりあえずは昨年からスタートしたばっかりでですね、まずはお互いに港同士で呼応しあって交流しましょうという、メッセージを渡すということから始まったわけです。
今年は2年目で、来年は3年目ですが、これぐらいになると、もう少し踏み込んだ交流をやりたいですね。場合によっては、お互いに相手の町を探検して、感想を残していくとか、実際に子どもたちも1日じっくりその町に滞在して、海だけではなくて町も見るとか、そんなこともできたら素晴らしいと思っております。
現にそういうことに近いことをやり始めている地域もあります。全国で、今年100近い地域の交流が実際にはあったということになるんです。来年は300ぐらいを予定しております。そうすると全国の自治体の10分の1ぐらいが、海で交流するのはいいねぇという意思表示をするということになります。そうすると、1つの動きになってくるだろうという風に私たちも期待しております。
皆さんと一緒に来年もぜひ進めていきたいと思っております。時間が大幅にオーバーしました。どうも、皆さんご清聴どうもありがとうございました。
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