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3-3. 実験関係者による感想
(隠岐)
・外部の人には比較的反応は良かった。住民にははじめての試みであったが、地域づくりに熱心な方と連携することが出来て、「次につながるかな」という感触を得た。
・地域づくりに熱心な方たちとは、今後も、「何かできることからしよう」と、ホタルの時期に、ガイドをしようと相談している。
・地元の観光資源の掘り起こしには効果があったと思う。今後も、眠っている地域資源を探して、「具体的に活動していこう」と相談している。
・地元の方が一緒になって動いてくれるのがうれしかった。特に、地元の女性の力で地域づくりをしていこうとするのが良いと思う。
・利用者からは、「海・島の駅とは何か」という問い合わせもあったが、解説したチラシをもらっていたので理解してもらえた。また、「道の駅」の海版というと、すぐに理解してくれたようだ。
・情報パンフレットや情報シートに載っている情報は新鮮な発見があった。しかし、利用者にとっては、ありきたりの観光地の情報ではなく、観光ルートに乗っていないところの情報なので足が不便であること、それに、(当施設は)目的的な施設であり、お客さんはダイビングに来ているので、実際に、パンフレットやシートに掲載されているところに足を運んだ人は少ないのではないかと思う。しかし、今回訪れた人が、リピーターとして次回、隠岐を訪れてくれたときに「行ってみたい」となるかもしれず、時間がかかる取り組みであると思う。
・世間には島好きの人は多いようで、隠岐のパンフレットのみならず、対馬と種子島のパンフレットも一式、手にとって持っていく人が多かった。
・対馬と種子島の「海・島の駅」と連絡を密にとることができなかったのが心残りである。
・実験に参加してみて面白かった。機会があれば、また取り組んでみたい。
・この取り組みは「これから」である。
 
(対馬)
・情報パンフレットや情報シートを見て、住民からも「面白い」「ためになる」という声が聞けた。
・設置場所が、上県郡の旅客ターミナルだけであったので、「下県郡のまちにも置くところが欲しい」という意見が聞けた。
・提供する情報について、「こういうのでいいのか」「こういうのがいいのか」との発見があった。
・島の中の人材情報がわかってよかった。狭いようでも、人材の情報はなかなか聞こえてこないものである。人材情報は新鮮だった。
・情報としては、通り一遍のものではなく、深く島を知るための情報を発掘できたことで、自分たちの足元が見えてきた。
・自分たちがたいしたことは無いと考えている情報に価値があることがわかった。
・地元の人が地元の良さに気づいていないことがわかった。
・せっかく、良い情報パンフレットや情報シートを作成したのに、印刷部数が少なくて、あちこちに置くことが出来なかったのは残念だった。
・対馬は島が広いので、役所の支所に置くなど設置箇所を増やさないともったいない。
・一番人口がある厳原に「海・島の駅」がなく、情報パンフレットや情報シートを置くことが出来ず残念だった。
・今後、「海・島の駅」を続けていくときは、設置場所や部数に配慮することが必要と思う。
・島が広いため、なかなか、関係者が一堂に集まることが出来ずに、情報パンフレットや情報シートの印刷物の作成で終わってしまったという面もある。
 
(種子島)
・島外の「海・島の駅」「まちの駅」の関係者を集めて、フォーラムを開く計画を立てている。それを契機に、本格的に始動する。
・お客さんには好評だった。
・情報パンフレット、情報シートは、情報発信のツールとしてよかった。
・情報パンフレットや情報シートは、積極的に情報を発信するツールとなる。
・利用者からの問い合わせに対し、あらかじめ、作成してある情報シートを渡すことで、コミュニケーションのツールとなったり、説明する手間が省けたりした。
・効果的に情報の発信が出来たと考えている。
・今後は、提供する情報の種類を増やしたり、随時、更新していくことが必要である。
・情報の提供方法も、全国的にはWebを使い、尋ねてきた利用者には、情報シートを手渡すなど、組み合わせたらよい。
・観光客が、パンフレットを手に取り、持っていく。
・看板を見て、観光客や住民が「何ですか」と関心を示してくれた。
・観光客が、看板を見てふらっと立ち寄ったりして、訪れるようになった。
・さまざまな情報が観光客には役に立っている。
・提供している情報以外に、レンタカーのことなども聞かれるようになった。
・今後、利用者はもっと増えてくると思うので、「海・島の駅」に接する情報を増やしていかなければならないと考えている。
・「駅」という名称は、「道の駅」「まちの駅」で、一定の知名度があるので、観光客が施設に入りやすくなったようだ。
・訪れる人が増え、施設の知名度が向上した。
・島内に複数ある「海・島の駅」で連携して、共同の島興し事業をやろうという機運が出来た。
・種子島のパンフレットは、結構なくなった。
・自分の島を知る意味で、役に立っている。
・始まったばかりであり、これからである。
・今後は、行政との連携も考えて、設置施設も、島の玄関口である空港や旅客ターミナル、展示館などにおくことが出来ると効果が上がる。
 
(鹿児島「まちの駅」フォーラムより)
・「まちの駅(海・島の駅)」のテーマで、まずは種子島の58号線を繋げるまちづくりが出来ないかということを考えた。
・西之表でNPOの「ジュントス」というのがあり、「ジュントス会館」が西之表の街の拠点としてお年寄りの交流の場ということをやっている。南に行くと「門倉亭」という旅館があるが、ここには割と観光客が行ったり来たりしているので、そこを拠点にしていこうと考えた。
・西之表は割と街の中のお年寄りが集まる「ジュントス会館」、南種子は観光客、サーファーなどが多いので、そういう人達が出入りする拠点という活動をしている。
・種子島にはサーファーが大体500名位定住している。仕事が無くてサーファーをしているが、その人達にどういう仕事を与えればいいかということで米を作り「サーファー米」というブランドで「ジュントス会館」などで売っている。南種子ではサーファーに色々な情報を提供する活動をしている。
・「まちの駅(海・島の駅)」を立ち上げて、交流をしているが、昨年は鉄砲伝来450周年ということで、3つの街をつなぎ、子供達に鉄砲伝来の史実を伝達していこうというイベントを行った。
・8月24日に、南種子町の「まちの駅」を中心とした子供達を船に乗せて中種子まで行き、そこで中種子の子供を乗せて西之表まで行き、最後に西之表の子供達を乗せて「ジュントス会館」まで行った。そこで鉄砲伝来の祭りと合流した。そこで枕崎の人達が合流したり、笠沙町の人達が漁船で合流してくれた。
・種子島は昭和20年4月から戦争のため疎開をしているが、西之表市は大口市を中心に疎開して、中種子町は鶴田町とか薩摩町、宮之城あたりに疎開していた。
・西之表市は大口市とすでに交流が始まっていたが、「まちの駅(海・島の駅)」が立ち上がってから鶴田の町の方とも話をして、昨年「おたつ・めたつ」の利用者約40名を鶴田町に連れていった。そこで疎開していた方との交流を行い、何十年ぶりの再会を果たし、とても感動した。
・今年は鶴田町の子供達を逆疎開させようと、中種子町を中心にそういう交流を準備している。種子島で疎開した方は70歳前後だが、その家に泊まってその方たちの想い出話でも今の子供達に語ってあげるとか考えている。
・「まちの駅(海・島の駅)」でそういう交流が出来た。来年は疎開から60周年になるので、お互いに何かイベントが出来ないかと考えている。
・物産の交流を含めて人の交流を行う「まちの駅(海・島の駅)」構想を考えていきたい。
 
 アンケートの結果を見ると、「海・島の駅」利用者の9割が、「海・島の駅」が役に立ったと肯定的に評価しており、また、利用者の9割以上が、全国の海辺施設に「海・島の駅」を設置することに対して、「利用したい」と肯定的な評価を寄せている。
 利用者のほぼ全員が、今回、「海・島の駅」を利用し、他の島の情報を見た結果、「行ってみたい」と関心を持ったことをうかがわせている。
 
 関係者の感想からは、情報パンフレットや情報シートに掲載する情報を探す過程で、地域資源の価値に気づいた、という意見や、作成したパンフレットやシートが、情報発信のツールとして効果的であったという意見が聞けた。
 また、「海・島の駅」の看板を見て、施設に訪れる客が増えた、という意見もあった。
 さらに、「海・島の駅」を設置しているまち相互の交流事業が立ち上がったり、「海・島の駅」が地域の核となったり、何かに取り組むきっかけになったという意見が聞かれた。
 このほか、この試みを通じて、地域づくりをしている人たちと一緒に活動することができ、うれしかったという意見もあった。
 
 実験期間は、1ヶ月と短い期間ではあったが、海や島の情報を発信する拠点としての機能の有効性が認められ、利用者のニーズが存在することがわかった。
 「海・島の駅」に取り組むことで、取り組み主体にとっては、相互の交流が芽生えるきっかけとなったり、地域づくりの拠点になったりする効果もあったということができる。
 
 以上のことから、「海・島の駅」の有用性は認められたと考えることができる。
 
 課題としては、「海・島の駅」の取り組みが始まったばかりであり、取り組み施設が少ないとの意見が聞かれたことから、今後、いかにしてその数を広げていくか。そして知名度を挙げていくか、が挙げられる。
 提供する情報としては、「海・島の駅」ならではのニーズとして、「体験できる海のレジャー(ヨットやスキューバ、釣り等)の情報(海のレジャー情報)」「島の特産品情報」「島の海の見所に関する情報」「潮の干満の時間についての情報」「気象情報(日の出、日の入りの時間)」「周辺にどのような施設があるかの情報」などが挙げられており、情報シートの種類を増やしていくことが求められる。
 さらに、「海・島の駅」の機能について、「各地の見所などビデオ等の映像で紹介してくれる」「島でのレジャーの拠点として島内のアクティビティについて紹介、斡旋をしてくれる」「海産物の販売」「道の駅のように、駐車場で安心して車中泊ができ、食料品を販売している」「24時間利用できる」「コンビニエンスストアの併設」が挙げられており、多機能を複合させた施設についても考えていく必要があろう。
 
 提供した情報についても、従来の観光ルートに乗らないような、いわば「マニア向け」の情報があり、この試みを拡大させ、地域を商品としていくか、も重要な課題である。
 さらに、相互の「海・島の駅」間で、具体的な活動取り組みとして共通のイベントを開催したり、相互の活動を調整し、仲を取り持つコーディネーター機能をいかにして確保していくか、といったことが挙げられよう。
 
 体験者・受益者が当初の想定では、3島合計で約10,000人としていたが、実際には、パンフレットの持ち去り具合、設置施設の利用者当から推測すると、隠岐で1,000人程度、対馬で数百人程度、種子島で600人程度の、計2,000人前後にとどまったと見られる。
 
 要因としては、実験時期に設定した夏が異常な冷夏で、観光客が大幅に減少したと見られること。ならびに今回の実験は、3島で初めて取り組んだものであり、知名度が今ひとつであったこと。「海・島の駅」設置箇所が少なかったこと。それにともない、情報パンフレットや情報シートの配布箇所が少なかったこと、などが挙げられよう。
 また、「海・島の駅」の施設担当者が、本業の業務多忙のため、十分に「海・島の駅」に手をかけられなかったことも、あるようである。
 それと同様に、「海・島の駅」を盛り立てて、自分たちで育てていこうとする応援団づくりも必要である。設置施設の担当者のみでは、本業が多忙な際は、本業重視となり、人手が不足するからである。
 
 対応策としては、実験の継続による知名度の向上、「海・島の駅」の設置箇所の拡大、「海・島の駅」施設の機能やサービスの充実、それなりに費用をかけ、情報パンフレットやシートの配布数を増やす、選任の「案内人」を置くなどの、ソフト・ハード両面からの取り組みが必要である。
 また、「海・島の駅」の取り組みを自分たちのものとして捉え、積極的に関与していこうという応援団を、いかにして確保していくか。住民の理解と同意を得る丹念な努力が求められる。







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