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1. 社会福祉の歴史
 日本語で「福祉」は喜び、幸福、幸という意味。英語ではwelfareを指す。元来は、宗教的な目標とされたが、やがて社会救済、慈善事業として受け継がれ、近代国家の設立とともに人間の権利としてうたわれるようになった。
 日本では、戦前から宗教家、社会慈善運動家など理想を掲げた人々が様々に運動を展開してきたが、戦後、日本国憲法の発布によって明文化された。
※第25条 すべての国民は、健康で文化的な最低限の生活を営む権利を有する。
 (2)国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。(努力規定)
 
 この具体化のために福祉三法といわれる生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法が成立し(昭和20年代)、(1)無差別平等の原則(2)公私分利の原則(3)救済の国家責任(4)必要な救済は制限しないという「四原則」も明示された。
 又1960年代の高度成長期に入ると、精神薄弱者福祉法、老人福祉法、母子福祉法も加わり(昭和30年代)、福祉六法が確立する。
 これらが求めているものは、人間が健康で豊かに暮らしていくためのギリギリの国家保障であるが、一面上から与えられた傾向が強く、社会運動として勝ちとったという側面は弱い。この点が社会福祉について、市民意識が低い要因かもしれない。
 
 富国強兵が国家スローガンであった明治期以来、第二次世界大戦まで、日本の国家目標は強い国づくりと産業振興だった。このため個人の幸福や障害者福祉などは、慈善事業の範囲だったが、敗戦後の民主化、個人主義尊重の政策によって、やっとその基盤が整った。各種の法整備もなされたが、1970年に入ると高度成長期に代表される、爆発的な発展期も一段落し、社会構造の変化も顕著になってきた。核家族化が進み、過疎化、過密化、高齢者の増加など、古い家族制度の崩壊と共に、新しい社会問題も提起されてきた。近年ではこれに少子化や、国家財政の悪化などの要因も加わり、社会福祉も新しい局面を迎えている。
 こうした中で、1973年は社会保障関係予算が伸びたことから「福祉元年」と呼ばれた。先進諸国の福祉基準に比較すると、日本の社会保障関係費の割合が、アメリカやスウェーデン、西ドイツなどで約30%になっているのに対し、日本14%と低いことから低福祉が認識されたからともいえる。しかしその直後、日本は石油ショックに襲われ、福祉元年から一転して福祉抑制、福祉見直しの時代に入ってしまう。1979年政府は「新経済7ヵ年計画」を発表し、その中で日本の目指す「社会福祉」は個人の自助努力、家族、近隣との相互扶助連帯を重視した「日本型福祉」を提案する。
 1980年には国家予算のゼロシーリングもあって、財政再建優先の「福祉見直し」策が台頭。女性の平均寿命が80歳を超える世界一の長寿国となる「人生80年時代」に突入すると、高齢者福祉への関心も高まってくる。
 1981年は「国際障害者年」にあたり、「完全参加と平等」をテーマに、様々な行動計画が立案されたが、日本の障害者法定雇用率は、先進国に比較し低位のままであった。
 1989年、今後の社会福祉の在り方について意見具申がなされ、その中で市町村の役割重視、在宅福祉の充実、民間福祉サービスの育成などが提言され、政府も消費税導入の主旨を踏まえて「高齢者保健福祉推進10ヵ年戦略」(平成11年度までの目標:ゴールドプラン)を策定。それを円滑に推進するための基盤整備を意図して、戦後最大級ともいわれる福祉関係の法改正(老人福祉法等の一部を改正する法律)が1990年6月制定された。在宅福祉サービスと施設福祉サービスが一元的に提供される体制づくりが目指された。
 1995年、中央集権批判の高まりとともに、「地方分権推進法」が成立すると、社会福祉でも財源措置も含めて地方重視の方向が強まってくる。特に1995年から新ゴールドプラン、エンゼルプラン、障害者プランが次々と策定され、数値目標が示されると、対象者が居住する市町村が社会福祉実現の主役となってきた。
 又1998年6月「社会福祉基礎構造改革」が公表され、戦後社会福祉の根幹に関わる改革も含まれている。その最大の特徴は、これまでの措置制度を見直し、福祉サービスを選択、利用(契約)制度に転換するということである。さらに福祉サービス分野に適正な競争原理(市場原理)を導入し、企業など多様な事業体の参入を促進しようという考え方である。
 こうして2000年6月、これらの改革構造を踏まえて、1951年制定の社会福祉事業法は約50年ぶりに大改正され、名称も社会福祉法となった。この法律により、社会福祉制度が措置制度から利用者が主体的に選択する、契約制度に転換される時代が来たのである。
 
 昭和25年、社会保障制度審議会から出された「社会制度に関する勧告」において、社会福祉は次のように定義されている。
 「社会福祉とは、国家扶助の適用を受けている者、身体障害者、児童その他援助を必要とする者が自立してその能力を発揮できるように、必要な生活指導、更正指導、その他の援護育成を行うこと」。
 この考えに沿って、福祉サービスを必要とする者に必要なサービスを提供する仕組みの大枠を作っているのが、生活保護法(昭和25年法律144号)、身体障害者福祉法(昭和24年法律283号)、児童福祉法(昭和22年法律164号)、知的障害者福祉法(昭和35年法律37号)、母子及び寡婦福祉法(昭和39年法律129号)、老人福祉法(昭和38年法律133号)の福祉六法で、これに社会福祉法と医療事業団法を加えて福祉八法と呼ばれる。
 
社会福祉法
 平成12年5月「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律」が成立。6月に公布され、社会福祉事業法については、目的や基本理念に利用者の利益の保護、地域福祉の推進、個人の尊厳の保持、利用者の自立支援、国や地方公共団体の責務といった内容が盛り込まれるとともに、利用者支援の仕組みが制度化されるなどの改正が行われた。このため目的・内容にふさわしい法律名が必要となり、社会福祉事業法は「社会福祉法」と改められた。
 主な規定は次の通り
(1)社会福祉事業の定義及び規制手続を定めること。
(2)福祉サービスの基本理念等を定めること。
(3)社会福祉に関する事項を審議する地方福祉審議会を置くこと。
(4)社会福祉事業が公明適正に行われることを確保するため、地方に社会福祉行政の現業機関として福祉事務所を設置し、その組織を規定すること。
(5)社会福祉行政の水準を高めるため、福祉事務所に専門技術員としての社会福祉主事を置くこと。
(6)民間社会福祉事業の特性を活かすとともに、公共性及び安定性を高めて、事業の適正かつ確実な経営を確保するため、社会福祉法人の制度を設けること。
(7)福祉サービスの適正な利用に関する事項を規定すること。
(8)社会福祉事業に従事する者の確保の促進及び福利厚生の増進を図ること。
(9)地域福祉の推進を図るため、市町村及び都道府県が地域福祉計画を定めることができること。
(10)地域福祉の推進を図るため、社会福祉事業の連絡調整等を行う、社会福祉協議会を設けること。
(11)地域福祉の推進を図るため、寄付金を募集し、民間社会福祉事業経営者に配分する共同募金に関する事項を規定すること。
 
 戦争直後に、生活困窮者の保護・救済を主なねらいとして整備された日本の社会福祉法制は、その後状況の変化に応じて改正されてきたが、近年の社会福祉に対する国民の需要の普遍化と多様化のなかで、根本的な見直しを迫られるようになった。厚生省内に設けられた社会福祉事業等のあり方に関する検討会は、1997年11月に改革の基本的方向をまとめたが、これを受け中央社会福祉審議会の社会福祉構造改革分科会は、98年6月に次の通りに、8項目の改革理念からなる「中間まとめ」を発表している。
(1)サービスの利用者と提供者の対等な関係の確立
(2)個人の多様な需要への地域での総合的な支援
(3)幅広い需要に応える多様な主体の参入促進、
(4)信頼と納得が得られるサービスの質と効率性の向上
(5)多様な供給主体の参加の確保、
(6)情報公開等による事業運営の透明性の確保、
(7)増大する費用の公平かつ公正な負担、
(8)住民の積極的な参加による福祉の文化の構造
の8つの改革理念を通して、「個人が人としての尊厳をもって、家庭や地域のなかで、その人らしい自立した生活が送れるように支える」社会福祉の構築を目指している。これまでの措置制度を中心とする社会的弱者のための行政指導の社会福祉から、契約に基づいて個人が選択して利用する社会福祉への転換が目指されている。
 
(平成12年6月7日 障第451号・社援第1351号・児発第574号・各都道府県知事・各指定都市市長・各中核市市長宛 厚生省大臣官房障害保健福祉部長・社会・援護・児童家庭局長連名通知)
 
 平成12年6月7日付けで公布された「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律(平成12年法律第111号)」については同日付けでその一部が施行されたところである。
 今般、前記法律において、福祉サービスに関する情報の提供、利用の援助及び苦情の解決に関する規定を整備し、福祉サービスの利用者の利益の保護を図るとともに、身体障害者、知的障害者、障害児に係る相談支援事業等について、新たに社会福祉事業に追加する等の関係規定が施行された。これを受け、社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令(平成12年政令第334号。以下「整備政令」という)及び社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部改正する等の法律の施行に伴う厚生省関係省令の整備等に関する省令(平成12年厚生省令第100号。以下「整備省令」という)が同日公布、施行され、関係政令及び厚生省関係省令について所要の規定の整備を行ったところである。
 今回の改正の趣旨及び内容について、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言として、下記の通り通知するので、管内市町村、関係団体、関係機関等に周知徹底をお願いしたい。
 なお、社会福祉事業の事業規模要件の緩和に係る部分(平成12年6月7日施行)、身体障害者福祉法の盲導犬訓練施設等に係る部分、児童福祉法の助産施設及び母子生活支援施設の入所方式に係る部分及び社会福祉施設職員等退職手当共済法(昭和36年法律155号)の一部改正に係る部分(平成13年4月1日施行)並びに社会福祉法の地域福祉計画に係る部分及び身体障害者福祉法等の障害者福祉サービスに係る支援費支給方式に係る部分(平成15年4月1日施行)については、別途通知するものとする。
 
第一 法改正の趣旨等
1 法改正の趣旨
 現在の社会福祉制度は、戦後の復興期に貧困者、身体障害者、戦災孤児等が急増する中で、こうした生活困窮者を緊急に保護・救済するために旧社会福祉事業法を中心に、行政主導で措置の対象者及び内容を判断し、保護・救済を行う仕組み(措置制度)として制度化され、一定の成果を上げてきた。
 しかしながら、生活水準の向上、少子・高齢化の進展、家庭機能の変化等の社会環境の変化に伴い、今日の社会福祉制度には、従来のような限られた者に対する保護・救済に留まらず、児童の育成や高齢者の介護等、国民が自立した生活を営む上で生じる多様な問題に対して、社会連帯に基づいた支援を行うことが求められるようになった。こうした変化を踏まえ、利用者と事業者が対等な関係に立って、福祉サービスを自ら選択できる仕組みを基本とする利用者本位の社会福祉制度の確立を図り、障害者等のノーマライゼーションと自己決定の実現を目指すため、今般の法改正を行うこととしたものである。
 具体的には障害者福祉サービスについて、利用者の申請に基づき支援費を支給する方式(以下「支援費支給方式」という)を導入するとともに、福祉サービスの利用者の利益の保護について、福祉サービスに関する情報の提供、利用の援助及び苦情の解決に関する規定を整備することとしたところである。また、地域福祉の推進を図るための規定を整備する等の所要の措置を講じることとした。さらに、これらの改正と併せ、民生委員法についても社会情勢の変化に対応し、民生委員の機能強化を図る等の改正を行ったところである。
 
2 政令及び省令改正の趣旨
 今回の整備政令及び整備省令においては、社会福祉事業法施行令を改正し社会福祉法施行令とするほか、改正法により必要となる福祉各法の政省令について規定整備を行うものである。







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