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平成15年度 新マイクロ波標識の開発に関する調査研究中間報告書

 事業名 新マイクロ波標識の開発に関する調査研究
 団体名 日本航路標識協会  


第5章 今後の課題と調査研究の進め方
 今年度の調査研究から明らかになった新マイクロ波標識の開発に関わる主要な課題を述べる。
 
5.1 国内外の法規制の動向調査と将来の船舶用レーダーの方式に関する課題
 スプリアス規制の強化に伴う新方式レーダーの動向を今後も注視してゆく必要がある。特に、レーダー方式がある程度限定されるのか、使用周波数が現行のパルスレーダーと異なることになるのか、また現行のパルスレーダー方式と新レーダー方式が共存することになるのか、等々は新マイクロ波標識を設計する方向性を左右する重要な事項となるため、国内外の動向の調査を今後も継続していかなければならない。
 現状においては、今後採用されるレーダーの方式を含め、これらの動向に不確定な要素が多いが、複数のレーダー方式が共存する場合へも配慮し、出来るだけあらゆる方式に対応できるレーダービーコン方式を早期に検討しておくことが望ましい。
 
5.2 今後の調査研究の進め方
 前項の課題を踏まえ、今後調査研究すべき事項を次に述べる。
 
(1)レーダービーコンの方式
 今年度の調査研究より、今後の船舶用レーダーの新しい方式として、パルス圧縮方式、FM-CW方式、符号化方式等が考えられ、これらの方式すべてに対応できる可能性があるマイクロ波標識の方式として、遅延合成方式を検討した。今後、この遅延合成方式のマイクロ波標識についてさらに検討を進め、机上検討では分らない問題点や性能の評価等を行わなければならない。
 また、SART(Search And Rescue Transponder)にも適用できるような簡便かつ安価に実現できる方式についても、さらなる検討を進めなければならない。
 
(2)遅延合成方式に対する主要な項目の調査検討
(1)送受信アンテナ間アイソレーションの確保
 
 新マイクロ波標識として、今回主に検討を行った遅延合成方式のレーダービーコンは、その実現にあたって送受信アンテナ間のアイソレーション確保が重要な問題となる。必要なアイソレーション値の定量的把握や、回り込み回避の手法を含めたシステム的な検討を進めることが必要である。
 
(2)識別符号の挿入方法
 
 遅延合成方式のレーダービーコンは識別符号を挿入できる事が特徴であるが、レーダーのパルス幅(あるいは圧縮処理後のパルス幅)に制約があることも明らかになった。今後さらに、識別符号の挿入方法については詳細な検討を進めていく。
 
(3)サイドローブ応答抑圧
 
 遅延合成方式のレーダービーコンは、その原理上サイドローブ応答抑圧機能を持たせることが難しい。今後さらに、この機能に関して運用上の必要性も含めて検討を進める。
 
(3)遅延合成方式実現性の検証及び評価
(1)アンテナ間アイソレーションの実験検証
 
 送受信アンテナ間の回り込みはシミュレーションのみによって定量的な把握を行うことが難しい。従って、実験等によって実現可能なアンテナ間のアイソレーション量を検証することによって、今後の設計に資するデータを取得し、システムの実現性、レーダービーコンの有効範囲に与える影響とその限界等について調査検討を進めることが極めて重要である。
 
(2)計算シミュレーションによる検証
 
 今年度に行った計算シミュレーションを引続き行い、以下の検討を進める必要がある。
 
・必要な送受信アンテナ間アイソレーションの詳細検討並びに実験により得られた、実現可能なアイソレーション量データに基づくビーコン有効範囲への影響度の把握。
・レーダーの処理後パルス幅と単位遅延量の不整合が識別符号に与える影響の検討並びに種々のレーダー方式に対するビーコンの応答特性に関するさらに詳細な検討。
・サイドローブ応答抑圧機能が無いことによる影響に関するさらに詳細な検討。
 
(3)試作評価
 
 遅延合成方式の主要ブロックを部分試作し、計算シミュレーションによって得られた結果の実現性検証並びに様々な条件下における特性の把握や問題点の抽出を行う必要がある。
 具体的には4.1項で述べた、遅延合成方式レーダービーコン(図4-6)において、次の図5-1に示すように、主要部分の遅延合成ブロックについてデジタル方式の試作・評価を行い、システム実現にあたっての課題等についてさらに詳細に検証しなければならない。
 
図5-1 遅延合成方式の系統図と試作・評価部分
 
参考文献
・鈴木 務:「IT革命時代にむけた船舶無線工事(その8)」他,
「船舶 むせんこうじ」, Vol. 484他, (2003)
 
・吉田 孝 監修:「改訂レーダ技術」, 電子情報通信学会(1996)
 
・近藤倫正 他:「計測・センサにおけるディジタル信号処理」, 昭晃堂(1993)
 
・J. A. Scheer and J.L. Kurtz ed. : "Coherent Radar Performance Estimation", Artech House (1993)
 
"Scout-Low Probability of Intercept Surveillance System",  DRS社 Web Site
 
"QUIET NAVAL RADAR CRM-200",
ポーランドTelecommunications Research Institute Web Site
 
・「世界の大型水上戦闘艦」, 世界の艦船増刊第58集, No.589, 海人社(2001)
 
・R. Sharpe ed. : "Jane's Fighting Ships 1999-2000", Jane's Information Group LTD.,(1999)
 
・M. Streetly ed. : "Jane's Radar and Electronic Warfare Systems 1999-2000", Jane's Information Group LTD.,(1999)
 
"Naval 3D Multi-Function Search Radar Sea GIRAFFE AMB", ERICSSON社 Web Site
 
"ASR-23SS Series L-Band Solid-State Primary Surveillance Radar", Raytheon社 Web Site
 
・「改訂 電波標識」, 日本航路標識協会(1998)
 
あとがき
 近年、レーダーや通信機などの電波機器の普及に伴い電波干渉問題が重要となり国際的に従来より厳しい規制が制定されつつある。レーダーが発射する不要電波発射(スプリアス)については他の無線機器への妨害が大きいとしてスプリアスレベルを従来の100分の1以下に低減すること、および規制する周波数範囲を大幅に拡大することなどの厳しい国際規格が適用されつつあり、特にマグネトロンを使用する現在の船舶レーダーは大きいスプリアスを発生するのでフイルターを挿入するなどの対策を講じているが2006年に制定が見込まれるさらに厳しい国際電気通信連合(ITU)の規制値には適合が困難と予想されている。
 このため関係国でスプリアスが少ない半導体を用いた新しい船舶レーダーの開発が検討されており、船舶レーダーの大きな世界市場を確保しているわが国にとって重要な問題となっている。
 一方、船舶レーダーに応答するマイクロ波標識局は船舶の航行安全に大きな貢献をしているが従来の単一パルス方式の船舶レーダーにしか対応できない規格になっているので、今後の新しい船舶レーダーにも利用できる新マイクロ波標識の開発が必要となってきた。
 新しい船舶レーダーとしては、FM-CWレーダー、パルス圧縮レーダー(FMチャープ)、符号化レーダーなどが検討されているがまだ最終的な規格は決定されていないので、現用の単一パルスレーダーも含めてどのような方式のレーダーにも対応できる新マイクロ波標識局の実現が必要となった。
 本委員会ではこのような要件を満足できる「遅延合成レーダービーコン」が委員長により提案され、主としてこの方式について委員および関係者により調査検討を行った。その結果新しい船舶レーダーに適合できる基本的な可能性を確認する成果が得られた。
 然し、新標識局を実用化するために更に検討をすべき課題も明らかになった。それらは、
1. 送信用と受信用アンテナ間の信号の回りこみの分離問題
2. 複数の船舶レーダーの呼びかけに対する応答問題
3. 近接した大きな反射体からの干渉除去問題
4. アンテナサイドローブによる誤応答低減問題
5. 新マイクロ波標識局の仕様と整合が取れない船舶レーダーへの適合応答問題
6. 新マイクロ波標識局から発射されるスプリアスの評価問題
7. 新マイクロ波標識局の仕様書の作成問題
8. 必要となる費用などの製作問題
 などがある。
 次年度では、これらの課題について、計算機シミューレーション、部分試作および基礎実験評価などによりさらに検討を行う必要がある。
 終わりに、本調査研究にあたりご指導いただいた関係官庁各位およびご協力いただいた委員各位にお礼申し上げます。また、日本財団からの助成事業によりこの調査研究が行われて報告書に記載された成果が得られたことに感謝申し上げます。
平成16年3月
新マイクロ波標識の開発に関する調査研究委員会
委員長 鈴木 務







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