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4.4 実現上の問題点
 新マイクロ波標識として遅延合成方式レーダービーコンを実現する場合の問題点等について検討した結果を示す。
 
(1)送受回り込み
 
 遅延合成方式のレーダービーコンにおいて、周波数アジャイル型等、従来レーダービーコンに相当する有効距離を確保する場合は、およそ-66dB程度の利得を持たせる必要があることを述べた。しかしながら、この場合に図4-17に示すような送信アンテナから受信アンテナへの回り込みが生じる。このため、送受アンテナ間のアイソレーションが十分でない場合は、自己発振等の異常動作を引き起こす可能性がある。また、レーダービーコン単体でアンテナ間アイソレーションが十分確保できていても、図4-18のように極近傍に大きな反射物等が存在すると、見かけ上のアイソレーションが悪化する場合も考えられる。このため、灯台等陸上施設への設置ではアンテナ間の距離を十分確保する配慮で所望のアイソレーションを得ることができる可能性も考えられるが、装備スペースの制約があり、なおかつ近傍を大型船舶が行き交う灯浮標設置型のレーダービーコンでは、何らかの対処が必要となる。
 回り込み防止の方策として、スイッチングによって送信と受信のタイミングを細かく切り換えることが考えられるが、この場合、応答波形が崩れたり、不要なスプリアスが発生するなど、設計理念に反した問題が発生するため、望ましくない。参考に、遅延合成方式にスイッチング動作を設けた場合の、パルス圧縮レーダー波に対する応答波形の例を図4-19に示す。同図から、スイッチングしない場合に比較して、応答波形が歪んでいる様子が解る。また、この場合の周波数スペクトラムを図4-20に示す。スイッチングしない場合に比較して、大きなスプリアスが発生している様子が解る。
 以上のことより、スイッチングによらずに回り込みに対処する手段、および回り込みが発生しずらいシステム設計について、今後さらに検討する必要がある。
 
図4-17 送受アンテナ間の回り込み
 
図4-18 反射物による影響の概念
 
図4-19 スイッチングによる応答波形への影響
(a)スイッチングしない場合
 
(b)スイッチングした場合
 
図4-20 スイッチングによるスプリアスへの影響
(a)スイッチングしない場合
 
(b)スイッチングした場合







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