FM-CW方式は、送信電力が低く、電波の発射を敵から察知されにくいという理由で、海軍艦艇やコーストガードの船艇用として近年急速に実用化が進んでいる。図1-16はオランダ海軍のカレル・ドールマン(Karel Doorman)級に搭載されている水上捜索・航海レーダー「スカウト(Scout)」の例であり、FM-CW方式を採用している。また、図1-17はポーランド軍の艦艇搭載用水上捜索・航海レーダー「CMR-200」の例であり、FM-CW方式である。このいずれも、敵から発見されにくいLPIレーダー(Low Probability of Intercept Radar: 低被探知レーダー)と位置づけられており、出力は1W以下である。この他の主要諸元の比較を表1-5に示す。
以上のように、諸外国の動向を調査した結果、パルス圧縮方式、FM-CW方式とも技術的には実用可能な段階にあることがわかった。
図1-16 SCOUT レーダー
図1-17 CMR-200レーダー
これらの新方式レーダーは、現段階では軍用等の限られた用途に使用されているため生産台数も多くなく、民間用として使用するにはまだ高価である。また、ITU、IMO等の規制もまだ整備段階にあり、民間船舶用としてどのようなレーダー方式、さらにはどのような送信波の変調形態がとられるかは、現時点では予測することが難しい。しかしながら、近い将来にはスプリアス規制に関わる法規制の整備も進むと考えられ、コスト面でも技術進歩に伴う飛躍的な低価格化が進む可能性も考えられることから、国際的技術動向を注視していく必要がある。
表1-5 FM-CWレーダーの主要諸元
製品名 |
Scout |
CRM-200 |
製造者 |
MSSC |
PIT |
国名 |
米国・オランダ |
ポーランド |
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送信出力 |
1W |
1W |
周波数 |
Xバンド 2CH |
9.3〜9.5GHz 10CH |
周波数偏位 |
最大54MHz |
最大54MHz |
変調周期 |
1ms |
1ms |
中間周波帯域幅 |
512kHz |
500kHz |
受信機NF |
3.5dB |
3dB |
レンジセル数 |
512 |
約500 *1 |
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|
空中線利得 |
30dBi |
? |
水平ビーム幅 |
1.4° |
1.2° |
垂直ビーム幅 |
20° |
25° |
回転速度 |
24rpm |
30±3rpm |
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