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東京財団研究報告書2004-5 外国犯罪の動向とその対策-若干の提言-

 事業名 相互交流による国際ネットワークの形成及び政策課題研究等
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


第6節 わが国沿岸警備隊設立の必要事象
 このようにみてくると、この上の沿岸警備隊の設置を提唱することは屋上屋を重ねることになりはしないか、折角充実しレベルアップしている海上保安官の体制を非効率化し職員の志気を阻喪させる原因になりはしないかとの懸念も生じるのは確かである。しかしわれわれのみるところ、少ない人員、予算、装備で活躍している人々にはいかがとは思われるが、やはり、わが国海辺の守りを固め、国民の安全と安心を確保し、ひいては国益を保全するには、やはり、沿岸警備隊の設立の提言は下げるわけにはまいらぬ。
1. 海上保安庁が悪質化、凶悪化、巧妙化する海上犯罪に対処するにはなお完全なものといえるか、という点である。
2. 第二に、保安庁の守備範囲が広大すぎて、手も目も届かぬところがあるであろうとの懸念は払拭できない。
3. 第三に、先述のような保安庁の人員や装備等をみると、早晩これでは対処できぬ異常な事態が想定される。迅速に機動的に強力に違反事象に対応するには、尚これを上回る体制が必要と思われる。海上保安庁自体が既に沿岸警備隊の実体を持っているではないか。保安庁を充実させることによってその目的は達成できるという向きもあろう。或いは、保安庁内のタスクフォースとして位置付けられる強力な組織を編成することで足りるではないか、これらに対応しうる人を集め、訓練を施し、装備を高め緊急対応しうるには、もろもろの困難を伴い、第一練度を上げるのも大変だし、コストも多くかかるではないか。公務員の削減、合理化が叫ばれる中、むしろ保安庁の更なる充実、強化が焦眉の急であろうとする声もあろう。
 新機軸のものとして、全く第一歩から考えるか、従来の保安庁の組織と機能を充足していく方向で考えるか、手順手法の問題もあろう。
 われわれは、これらの議論を視野にいれ乍らも、やはり、犯罪に対する的確な対応のできる沿岸警備隊の設立とその活用を提言したい。
 その内容はすべからく、固まっているわけではないが、わが国の特に海岸部、臨海部の守りを固めるのには、高性能、重装備の船舶とくに航空力を駆使した、海上警備、人工衛星を使用した高度の情報収集をもとにした部隊の設置を考えることは、時宜に即しない、という非難を浴びることになるであろうか。海上保安庁は海難救助、船舶の交通安全、海洋汚染の防止、海洋上の環境保護、海路標識の管理等に重点を置くものとして、沿岸警備隊は犯罪に対するより実戦的なものとして編成するという方式はいかがであろうか。
 従来の保安庁の組織の改編ではないが、これまでの保安庁の組織人員や装備の有効活用を前提とした方法によれば無駄もなくなるというものではなかろうか。指揮権はどこが持つのか。海上自衛隊か。保安庁かはたまた国土交通省か、第三者の独立機関の長か、成熟した議論を求めたい。われわれは、最後者を選択したいが、縄張り根性、島国特有の狭い視野での主張はなしである。一つの提言としたい。
 とはいってもイメージとしてはっきりはすまい。われわれが具体的に考えていることは、要は、特に日本海、東支那海等に面した海辺に重点的に数多く基地を設け、隙間のない監視、検挙体制の基盤を作ること、小回りのきく高度の迅速性と情報収集、分析、伝達能力をもつ重装備の大小の艦船を用意すること、つまり機動性に秀でた部隊を持つこと、権限を洋上でおこなわれる麻薬取引等海上犯罪の予防検挙、集団密航等の検索検挙等に優先的に与えること、武器使用の要件緩和について配慮すること、共同摘発が可能な体制を準備しておくことを念頭においてのことである。どちらかというとタスクフォースの考え方に立つものといってよかろう。
 
第7節 米国沿岸警備隊の理念、設置目的
 ここでアメリカの沿岸警備隊の理念、設置目的、戦略を更に知るには少し古いが、1989年5月の同隊学校の卒業式での先代ブッシュ大統領の演説に耳を傾けるのが適当と思われる。その骨子は次のとおり。
 「沿岸警備隊の卒業生が私とともにアメリカの力は民主主義と自由という永遠なる理念に奉仕されるものであることを確認するよう求めたい。世界は不幸な事実として、武装反乱勢力、テロリスト、沿岸警備隊として周知の麻薬の秘密交易者、ある地域ではこれら三者の恐るべき結合による脅威に直面している、沿岸警備隊は、第一に、効果的な抑止策としてアメリカの力と決意することである。
 第二に、極力低い軍備レベルで安定を強化するための軍事力削減へのたゆみない取組みが必要である。第三に、無尽蔵の資金と強力な武器を持つ麻薬組織に戦いを挑むのは大変なことである」としている。端的で明確な方向づけと認識を示したものといえよう。
 江畑氏によれば、麻薬対処についての問題点と現状は以下のとおりとされる。すなわち、アメリカ社会で最も問題となっているコカインとマリファナは殆どが海と空のルートで運ばれる。メキシコから陸路運ばれることもあるが、運搬効率が悪いのと発見される可能性が大きいためかそう多い量ではない。その他東南アジアのいわゆる黄金の三角地帯からアヘンが運ばれてくるが、これらも海、空路である。ただ、東南アジア方面からは距離が長いため直接本土に入るより一旦マリアナで積み替え、取締りの目を逃れる方法がとられている。マリアナ諸島から米国領に入れば後はフリーパス同然となる。
 したがって、麻薬密輸阻止作戦の主力はカリブ海を中心とした地域におかれることになる。コカインは主力原産地コロンビアから一気にアメリカ本国に運ばれるケースもあれば、中米諸国で積み替えてからアメリカ本土を狙うこともある。いずれの場合も運搬の主力である小型機を発見するのは極めて難しい。機は低空で、レーダー監視の目をくぐって侵入し、人里離れた草地、砂漠、時には沼地に着陸して積荷を降ろすこともあるからである。
 そこで麻薬取締りの二大責任機関であるアメリカ税関と沿岸警備隊は海軍から中古のE2Cホークアイ早期警式機を借りて空中レーダーで、密輸機の監視を1987年から開始した。税関、警備隊ともに2機ずつE2Cを運用し、機上のレーダー操作員にはベテランの海軍操作員を移籍させて乗組ませている。洋上の小型機をレーダースコープ上で識別するのは熟練が必要だからである。早期警式機で発見した不審機を沿岸警備隊はファルコン50(HU25C)と共に、元はビジネスジェットであった機体で追跡する。空中から低空で飛ぶ密輸機を発見できるよう、機首にF16戦闘機と同じレーダーを装備する特殊機である。さらに沿岸警備隊の機体には、赤外線監視装置まで備えている。E2Cが飛ぶときにはファルコンも同時に飛び、空中で待機する。「戦闘空中哨戒」と呼ぶやり方である。
 P3AEWの実用化に伴って、2機のE2Cは今年10月から沿岸警備隊に移管され、4機態勢で運用されることになった。沿岸警備隊はメキシコ湾沿岸6カ所に、E2Cと同じレーダーを装備する気球も展開している。また密輸船取締能力を強化するため、アイランド級という20ミリ機関砲を備えた高速巡視艇16隻を建造した。
 税関の取締り権限は、米本土と12カイリの米領海内だけであり、公海上と他国領海線までは沿岸警備隊が担当せねばならない。実はこの権限の分割、オーバーラップが、米国の麻薬取締り作戦を不効率にしている要因ともなっている。また麻薬組織も利口で、空中監視レーダーの捕捉が難しい海岸線上を飛ぶとか、監視機の動きを知って、そのレーダー監視圏外を飛んだりしている。まさに“空中戦”である。
 しかし、4機くらいの空中監視機を投入したところで、麻薬流入阻止の完璧を期すにはあまりに微力である。なにしろ一年間に米国の国境を出入りする人間の数は2億人、これに33万隻の船が400万人の人間を運び込み、42万1000機の民間機が3000万人の人間を米国内の空港に降ろしているのである。
 なお、肝心の沿岸警備の日常的な活動、艦船、武器、装備等の詳細は検索しても資料が見当たらず、その現状の詳細は詳かではない。
 
第8節 わが国の入国管理体制
 ここで入国管理体制についても一べつする必要があるであろう。円滑な人的な国際交流の促進は今日の社会、経済、政治の各分野において必要不可欠であることは論をまたない。
 他方、わが国の治安維持の上で、周辺海域での麻薬犯罪や密航等の犯罪者を捕捉ないし排除することも、重要視されねばならぬことも明らかである。そのために出入国管理行政をはじめとする各般の体制が確立されている必要がある。例えば、現行の在留資格による就労目的の外国人をどう受け入れるか、その他適正な在留活動の確保、単純労働者の受入問題、研修生の適正な受入拡大をどうする、そしていずれは大きな問題となりうる難民をどうするといったことについて、対策を樹立することが大切で、現に逐次実施されているようであるが、不法就労外国人への対応、これらを包摂した入国管理、在留管理の充実、強化、関係機関との協力関係の強化等への強力な施策が実施されることが望ましい。
 数字を逐一示すことは他の分野においてすでに詳細に明らかにしているので、繁さな事を重ねるのを避けるが、僅かの入国審査官、入国警備官では、十全の態勢がとれず、又その権限において捜査機関等の他の力を借りねば有効な対策を講じられないようなことでは心もとない。この方面に視野を重点的に拡げた検討が早急になされ、有効な方策が樹立されることが望ましい。







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