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第2節 国籍別検挙人員
 次にいわゆる重要窃盗犯の国籍別検挙人員をみてみよう。平成14年中の数字は以下のとおり、総数921、種別でみると侵入盗658、自動車盗136、ひったくり43、すり84となっている。中国(総数508)は侵入盗456、自動車盗15、ひったくり9、すり28となっている。以下同様の順でいうと、ブラジル(159)57、767、21、4、韓国、朝鮮(46)18、3、23、ベトナム(18)15、1、2、0となっており、以下ロシア、フィリピン、スリランカ等が多い。
 
第3節 地域別検挙件数
 来日外国人による刑法犯、特別法犯の平成14年の検挙件数を国内の地域別にみてみよう。
 東京が単独で突出していて総数9217であるが、神奈川県が2163、愛知8710、大阪1433、広島248、福岡244、茨城406、富山583、岐阜534、群馬741、埼玉1415、千葉969、長野743、静岡905、札幌178、宮城189、福井476、三重965、兵庫665、高知154、大分122等を挙げてみることができる。地域拡散化、広域化、首都圏大都市周辺部の増加、等が数字の上からも顕著にみてとれる。牧歌的な時代ははるか昔といわねばならない。
 
第4節 平成15年1月から8月までの状況
 次に最も新しい統計資料から数字をみてみよう。
 まず重要犯罪を国籍別にみてみる。総数946、殺人49、強盗213、放火13、強姦23、略取誘拐3、強制わいせつ25、となっている。内訳は中国総数529、韓国・朝鮮52、ブラジル147、ロシア18、フィリピン11、イラン10、ベトナム15、アフリカ11が主なものである。内容について中国を例にとると、殺人20、強盗123いずれも前年平成14年の数字を大きく上回っている。由々しき事態といえよう。
 重要窃盗犯についても同様で、中国の侵入盗341、自動車盗7、ひったくり5、すり17となっている。前年比を超えるもの、同数のものが全てで、依然数値は高止まりないしは増加の傾向を示している。
 ちなみに地域別に多い方を主として北から順に挙げると札幌9114、宮城198、東京7595、埼玉984、神奈川1766、岐阜632、愛知4578、大阪851、兵庫385、広島203、愛媛72、福岡309等である。全国各地に拡がったといってよい。政府が治安対策をマニフェストに挙げたことは時宜に即したというべきであろうけれども、国内治安状況についての認識の不十分さの故に、むしろ遅きに過ぎた感の有ることは否めないところでもある。後手に回ってはなるまい。
 犯罪多発国の治安当局との提携の緊密化、情報交換、連携プレイ、警察組織の再編・強化、入管、関税、海上保安庁等治安担当組織のこれらに必要な急速な立法、治安担当者の権限強化、職員の治安の悪い街への重点配置、地域社会とのスクラム化、情報収集の徹底、必要な人員増、従来の捜査手法の改善等なすべきことは多々あるといわねばなるまい。
 これらの状況、問題についての東京の状況を一瞥してみよう。平成14年中都内における来日外国人刑法犯の検挙状況を挙げると次のとおりである。
 国籍別に多い順にみると、中国、韓国・朝鮮、コロンビア、フィリピン、アメリカ、その他で検挙人員の総数は2027名である。そのうち中国1265名構成比62.4%、韓国・朝鮮202名10%、コロンビア50名2.5%、フィリピン49名2.4%アメリカ49名2.4%となっている。
 これを在留資格別に分類すると合法滞在者の就学、留学生732人(約36%)不法残留をしていた全就学、留学生58人(2.9%)の計790人(39%)が犯罪、非行を行っておりこれが全体の約40%を占めている。合法滞在者のうちでも短期滞在者の犯罪も少なくなく(180名、8.9%)不法滞在者のうちで短期滞在後のオーバーステイ中の犯罪が150名、7.4%、密入国、不法上陸が215名10.6%となっている。
 就学、留学生が目的を達して無事帰国されるのを望むが、これらの者の在日中のフォローアップはしかし大切であろう。現実にこれを把握するのは至難とはいえ、これを怠ってはなるまい。例えば日本語学院、大学等からのしっかりしたレポートの提出を求めるというのも一方法と思われる。
 統計は総数で22万1402名、うち留学生は3万566名であるが、これを母数として同年中の刑法犯の犯罪行為率を算定すると、就学生2.47%、留学生0.86%となっている。都内の治安状況を示す指標の一つとして資料を掲げたところである。
 ちなみに、全国における不法残留者の国籍、在留資格を多い順に並べると、韓国、フィリピン、中国、タイ、マレーシア、その他となっており総数22万552名に達する。在留資格でいうと、短期滞在、興行、就学、留学、研修、その他の順である。数字の詳細は省略するが、恐らく暗数を含めると更に多くに昇るのであろう。
 人類学的に日本人と識別し難いところのある東南アジアの者達が多いだけに、問題の解決を一層困難にしたものといえよう。不法滞在者の発見、確保、送還、検挙、裁判といったことは焦眉の急といってよかろう。
 
第5節 平成15年版警察白書にみる実態
 更に発刊されたばかりの平成15年版警察白書に依って外国人犯罪の最も新しい実態についてみてみよう。
1. 同書によれば、わが国に流入した外国人がわが国内で犯罪グループを形成し、暴力団や国際犯罪組織と連携をとるものがあると、まずは犯罪の変質が指摘されている。
2. 平成14年中の来日外国人犯罪(刑法犯及び特別法犯)の検挙件数、人員は3万4746件(前年比6983件(25.2%増))、1万6212人(前年比1552人(10.6%増))でともに過去最多を記録した。過去10年間についてみると検挙件数、検挙人員ともに増加傾向にあり、平成14年は同5年と比べて総検挙件数、人員はそれぞれ1.8倍、1.3倍、刑法犯検挙人員はそれぞれ1.9倍、1.1倍、特別刑法犯検挙件数、人員はそれぞれ1.5倍、1.6倍となっている。
 とりわけ凶悪犯検挙状況をみると、強姦、放火、強盗殺人の検挙件数、人員にしたがうと、検挙件数、人員は323、前年比19件、4.9%増、353人、前年比50人、12.4%減となっている。特に凶悪犯の典型的なものとしてイメージされる強盗の検挙件数は平成14年において5年前と対比して2倍に増加し、凶悪犯検挙件数全体の大半(実に76.5%)を占めるに至っている。
 治安が悪くなったな、物騒な事件が増えたな、巻き込まれたくないな、気をつけねば、警察にはもっと頑張って貰わねば、不良外国人をどうやって抑え込んだらよいのかな、といった気持ちをいだかせるに十分な状況といってよい。強盗の手口がこれ又危険極まりない。つまり侵入強盗が顕著という点である。平成14年中だけでも157件、前年比60件、61.9%増である。日本人により惹起される強盗に比べ、その割合が甚だ高い。
 すなわち、来日外国人による侵入強盗は検挙状況だけでみても非侵入強盗36.4%に対し63.6%を占める。日本人のそれは侵入強盗35%に対し非侵入強盗65%であるが、これと比較して強盗一つとっても外国人犯罪の凶悪性が目立つのである。
 白書によれば、いろいろな事例が紹介されている。われわれの法廷経験からしてもこれを首肯しうるのであるが、りつ然暗然たる思いである。日本人が危害を加えられた割合は70%で、5年前と比べて1.2倍に増えていることに照合すると、この思いは見当はずれではなく、何と凶悪な奴輩かなといった実感が間違っていないことが明らかといえよう。
3. 次に窃盗犯の検挙状況をみてみよう。平成14年中の重要犯(侵入盗、自動車盗、ひったくり、すりを指す)の窃盗犯全体に示す割合は件数が10年前比で34.8%から41%に、人員が9.8%から21%にと、より悪質な重要窃盗犯の検挙が増加している傾向が窺われる。14年分を手口別にいうと、ピッキング用具使用による組織的な侵入盗、自動車盗の発生が著しく、一旦減少した自動販売機荒らしの検挙件数が再び増加していることなどが挙げられる。たまらんなというのが人々の思いであろう。
 尚、特筆すべきは、平成14年の共犯事件の増加、組織化の進捗である。共犯比率は前年に比べ5.6ポイント上昇した。平成8年以降の増勢が著しい。ということは、仲間による共同犯行つまり組織化が進んでいるということに他ならない。共犯事件は日本人のそれに比し外国人の比率をみると、日本人の実に3.3倍となっており、来日外国人は群をなして悪事を働くという傾向が強いことが明確となった。その原因を分析する必要があるが、必ずしも明らかでない。
 われわれの扱った事件の経験に即していえば、同国人が集まる、多勢で群れをなしていれば安心できる、荒稼ぎを考える、一人でやるより効率的に利得をえやすい、悪いことをやることについての反対動機の形成ができない連中が多い、犯罪に追いこまれる状況、つまり所持金に窮する、仕事がない、食べていけないといったことが多い。
 更に異国で犯罪を実行しても仲間がいれば心強いし、かくまってもくれる、いざといえば助けてもくれる、一体感を持ってる、離合集散をやりやすい、リーダーがいてその下にくっついていれば目立たなくてよい、自国へ帰っても自慢が出来る(例えば或る国から来た人々の話を直接、或いは通訳を通じて聞くと、仲間は同じ地域のとくにスラム街から来日したもので、日本での生活状況や、稼ぎ具合がその地域に知れ渡り易いため、Aはいくら稼いだ、Bは働きが悪いといった評価を受けるのをいやがる、仲間共に荒事をやるとそれが伝えられるといったナマナマしい話が出るのである。)といったことをさしあたり挙げることができる。これらの点も要因の一つとなるのであろう。
 白書によると、凶悪犯の中では特に強盗の共犯事件比率が高く、窃盗犯の組織形成の高まりと共に、侵入盗の居直り強盗への転化にみられるように犯罪の悪質化、凶悪化が一段とエスカレートしてくることへの懸念が表明されている。宜なるかなである。
 犯罪の地方拡散化、広域化については既に幾度か言及したところであるが、とりあえず全国への拡散状況をみてみよう。東京以外での地域では平成14年の検挙件数でみると、すべて約50%以上増加していることが明らかである。多い順に並べると東京都が断トツで4025、次いで中部地方で1万265、首都圏を含む関東地方で5793、近畿地方で2377、九州地方503、中国地方で461等々となっている。
 次に、国籍別、地域別の検挙状況を観察してみる。平成14年中でみると、中国(台湾、香港を除く)が検挙件数、人員共に突出して多く、1万2667件、36.5%、6487人、40%で平成5年と比べてそれぞれ、3.1倍、2.1倍と増加している。ブラジルがこれに次いで多くかつ増加傾向も著しいことは別の項で既述したとおりである。
 尚、不法滞在者による犯罪の割合を検討すると、平成14年中の総検挙件数、人員に占める割合は51.9%、凶悪犯の占める割合はほぼ40%となっている。特別法犯検挙人員中に占めるオーバーステイ者の割合は実に82.3%を占めている。最近では、旅券の偽造、変造、偽装結婚等、不法入国、滞在を助長、促進する犯罪も多発しておりこれらの非行についての手口も多様化、巧妙化しているほか、組織化、地方拡散化の傾向も強まっている。これに日本国籍の者が加わってくる、或いは外国人犯罪を助ける組織が出てきていることを窺わせる徴表も見え、一体どうなっていくのであろうわが国はと慨嘆せざるを得ない。
 何としてもこれらの社会事象に対する各般の方策が検討され、実現されねばならない。
 以下若干の提言を試みたい。以下の各章はこれらに対し若干の答えを具体的に用意したものである。識者の批判をまちたい。
 
第6節 犯罪統計資料速報値
 尚、最新の犯罪統計資料をホームページにアクセスして得たところによれば、その実態は以下のとおりである。まず平成14年中のそれである。いわば速報値で概数となるのであろう。
1. 刑法犯特別法犯についてみる。特別法の主要なものはここでは、外国人登録法、入管法、売春防止法、青少年保護育成条例、貸金業規制法、関税法、商標法、外為法、銃刀法、火薬取締法、麻薬等取締法、毒物及び劇物取締法、廃棄物処理法、労基法、風営適正化法、児童福祉法等をいう。
 特に来日外国人による重要犯罪、重要窃盗犯の国籍別検挙人員である。ここでいう罪名は、殺人、強盗、放火、強姦、略取誘拐、強制わいせつを指す。多い例を列挙すると殺人についていえば中国14、韓国朝鮮6、ブラジル8、タイ、フィリピン各3、パキスタン2、である。
 強盗についてみると、中国126(香港、台湾を含む)と突出しており、次いで韓国朝鮮20、イラン7、ベトナム11、ロシア3、ブラジル74、マレーシア6、フィリピン等がまず目につく。強姦は総数で25、放火は7、略取誘拐が18、強制わいせつが30と数えられる。
2. 次に重要窃盗犯をみてみる。侵入盗、自動車盗、ひったくり、すり、である。侵入盗を多い順にあげると中国が456、ブラジル57、韓国朝鮮18、ロシア5、ベトナム15、フィリピン7、等が目立つ。自動車盗でみるとブラジル77、中国15、スリランカ7、マレーシア6、韓国朝鮮3、等である。ひったくりでみるとブラジル21、中国9、ベトナム、韓国朝鮮が各2である。すりはどうか。やはり多いのは中国28、韓国朝鮮23、ブラジル4、フィリピン3、といったところである。
3. 今度は地域別に来日外国人の犯罪の趨勢をみてみよう。刑法犯、特別法犯の検挙件数、検挙人員で数える。顕著な地域を挙げるにとどめるが、件数でいうと北から札幌178、宮城189、福島174、東京9217、茨城406、埼玉1416、神奈川2163、千葉969、福山583、岐阜534、愛知8710、大阪1433、兵庫665、広島248、山口285、高知254、福岡244、大分122、沖縄54等である。
 増減率でみると、前年比マイナスの地域も少なくないが、プラスになっているところで目につくものを指摘すると、釧路19.5%、青森62.5%、東京11%、神奈川33.8%、山梨34.9%、富山254%、福井371.1%、愛知231.6%、和歌山44.4%、鳥取138.9%、高知227.7%、大分130.2%、沖縄68.8%となっている。地方への拡散が著しく進んでいる表れの一つといえよう。







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